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Home>> MINDAN 文化賞 2007年度受賞作品集
 

中学生・高校生の部 『優秀賞』

「親孝行」 (金碩鴻/男/金剛学園中1年/大阪府)

 テーマのような自分の親の姿や、言葉、親孝行に合う経験が思い当たりませんでした。これらのテーマの底にある、苦労して頑張って自分を育ててくれたと言う強い思いを今のぼくは正直いってあまり持っていません。もっと大きくなったら、いろいろなことがわかったり、感じたりするかもしれませんが、今のぼくにはそうしたことが思い浮かびません。

 そのため、このテーマを親に相談してみたところ、最近母がよく読んでいて 何かにつけ話題にのぼる本があり、その中からテーマに近いもを書いてみることにします。それは宮本常一という民俗学者の自伝です。この人は、一生を貧しいながら民俗学の発展につくした人です。母が言うには、この人は人生折々に父親の教えを思い出し、自分の迷いに答えを出したと思われます。けれども、何一つ親孝行らしいことをせずに終わったであろうということです。この作文のテーマ「親孝行」ということをこの人の本に沿って考えてみます。

 常一は瀬戸内海で 3 番目に大きい周防大島という所で生まれ、海に親しみ、自宅すぐ近の小高い山に登って、四方に中国地方、九州、四国地方を見渡たせる素晴らしい景色をながめながら育ちました。戦前の、ましてや島の貧しい生活でしたが、幼少期に祖父に可愛がられ、祖父の語る様々な話や共に小旅行をするといった経験の中で、日々の貧しい暮らしの中だけ埋没することのない広い視野と物事に対する深い洞寮力の基礎を身に付けていきました。

 小学校の学業が優秀であったにも関わらず、貧しさの為に進学できなかった常一でしたが、一年後に親せきのおじの力によって大阪に出る機会を得ます。出発にあたり父親が常一に送った 10 ヵ条とう手紙があり、その一つ一つが常一の自伝の中で大きく扱われています。その中に親孝行しなくてよいというのがあります。理由は次の様なものです。

 これからの時代は子供が親の為に自分を犠牲にするような時代ではない。むしろ、親が子の為に何ができるか、何をしなくてはいけないかを考える時代である。そうしなければこれからの日本は発展していかないだろう。

 戦前、親孝行という言葉が大変重く扱われた時代に、地方の一漁師であった常一の父親がこのように新しい考えを持っていたとはすごい事だと思います。

 アジアの中で、貧しい国から日本に働きに来ている人たちは安い給料でも祖国の親に送金しています。経済的に豊かであるか貧しいかということと親孝行はどこかでつながる問題でもあります。単に心の問題だけではありません。

 常一の貧しい一生は、物質的にはこの上なく、親不孝だったかも知れません。しかし、父親が見通した次の時代への見識を自らの一生をかけて人々に伝え、その生活を実際的に変えていった常一の人生を親不孝とは言えないと思います。

 ぼくは彼の行動を見習って、今後の人生に役立てたいと思います。

 
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