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21世紀委員会
 

「第1回未来フォーラム」での各部会の中間報告内容

 

−基盤づくり部会−

1.基盤づくり部会


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委員一覧

姓名  部会役  所属・役職

李起昇 部会長     公認会計士
沈徹 委員     愛知大学経済学部助教授
裴光雄 委員     大阪教育大学教育学部助教
姜誠 委員     ジャーナリスト
陳賢徳 委員     青年商工人連合会元会長
金一雄 委員     韓国商工会議所副会長



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提言要旨・レポート中間報告

□「信用組合の銀行化に関する提言」要旨

商銀が果たした最も重要な機能は、在日韓国人社会のネットワークを維持してきたと言う事である。商銀が日掛け月掛けという形で戸別訪問を続けてくれたお陰で、われわれはネットワークを維持することができた。

 商銀の崩壊は、在日韓国人の情報網の喪失を意味し、民団社会が消滅してしまうことにつながりかねない。

 また、一世が作り上げたものを我々二世がみすみす潰してしまったのでは、後世に対して面目が立たない。

 民族のプライドを守るため、商銀の銀行化は成功させなければならない。

 商銀を銀行化するにしても、厳しい経済的状況の中で、するのであるから、それなりの独自性ある銀行を目指さなければならない。

 21世紀は、在日という狭い枠に留まるのではなく、海外のコリアンとのネットワークを築き、それによって、経済的重要性を増していく必要がある。その為には、人材育成投資を惜しむべきではない。

 これからの銀行は、ベンチャー企業を発見し、それを育成し、公開まで指導していけるくらいの実力がなければならない。そのためには、商銀の人材を鍛えることは勿論であるが、外部の人材の有効利用を図るために、今以上の情報ネットワークインフラを作り上げる必要がある。

 そのような銀行を作るために民団は一丸となって、資本金獲得運動をするのである。よって、銀行が、民族金融機関であることから変質しないように監督する必要がある。そのためには、民団自らが株主となったり、外部の専門家に委託して、社外取締役や、監査役になって貰う必要がある。

 21世紀の在外コリアンの発展のために、民団は、商銀の銀行化を成功させなければならない。

レポート中間報告

1.ポストビッグバンへの備え

◆はじめに

 1996年に始まった日本版金融ビッグバンは、疲弊した日本の金融システムを2001年までに再生することを目的としていた。その期日はすでに過ぎようとしているが、5年前には予想もしなかったような事態が次々と金融界を襲っている。10数行を数えた大手銀行も統合が進み4つの金融グループに集約され、昨年から今年にかけては生命保険会社の破綻が相次いだ。また、この4月からは保険や証券会社の破綻に関する特例的な措置が撤廃され、来年4月には銀行預金に対するペイオフも解禁されるはこびとなっている。

 このような金融環境の変化に加え在日同胞社会においては、数多くの商銀が破綻してしまったという事実を踏まえ、民族系の金融機関として「新銀行」をどのように立ち上げるかが喫緊の課題となっている。

 しかし問題は、新銀行の立ち上げだけにとどまらない。在日同胞中小企業の多くが、今では日本の金融機関と取引関係を持っているという事実を考慮すれば、金融環境の大きな変化に対して、在日同胞中小企業経営者の備えは万全をあらためて問うておきたい。

◆金融機関の課題と中小企業への影響(略)◆貸し渋りへの対策(略)

◆まとめ

 金融ビッグバンの理念は、フリー(自由で)、フェア(公平で)、グローバル(世界に通用する)という三つのキーワードにより明らかであるが、ここで更に「自己責任」と「結果の平等ではなく機会の平等」の二つを付け加えておきたい。

 銀行が企業を選別する時代から、企業が銀行を選別する時代になったのである。したがって、企業は自社の信用力を的確に相手(金融機関)に伝える技量を身につけなければならない。ここ数年の日本では金融不安の深刻化と景気の低迷が同時に存在しているため、「保証協会」を用いた公的援助が緊急避難的に行われてきたが、「貸し渋り」危機から得られた教訓を最大限活かし、中小企業は経営体制の整備を急がねばならない。金融ビッグバンの終了年になっても銀行の体力低下傾向には未だ歯止めがかかっておらず、銀行の事情により資金供給が突如途絶えるという危険性はむしろ強まっている。したがって、経営体制の整備を行い、自社の信用力を外部に発信する手だてを講じておくことは、ポストビッグバンの世界で生き残っていくための当然の備えであろう。 

2.IT革命と中小企業の可能性
 −同胞経済社会への提言−

1)はじめに −IT革命の定義と特徴−

 現代日本社会において、ITという言葉は既に市民権を得た。今日、インターネットの普及率は20%を超えているという。パソコン及び携帯電話の端末を使って、情報が発信され、各経済主体(生産者、流通業者、消費者)がその情報を元に、市場での取引を展開している。

    (中略)

 このように、いずれにせよ現代日本社会の最も特徴的な一つがIT革命なり、IT化社会と呼ばれる現象である。「改革断行内閣」として自らを性格規定した小泉新政権も、先の森政権と同様、ITを重視しており、IT戦略本部を設置している。同政権の経済政策の基本的理念は、郵政事業の改革からも窺えるように民間主導型に他ならない。だが、ITにどのように取り組むかは、国家的な戦略として位置づけるべきであると捉えている。従来の産業政策の一環として、IT産業の育成を図って行こうと位置づけているのである。

 韓国においてもIT化は、政府レベルで日本以上に推進されており、教育現場での取り組みはその典型例である。企業・個人レベルのIT化も大いに進展している。最近では朝鮮民主主義共和国でもソフトウエア開発・商品化という次元でIT化は推進されており、いわゆる国家戦略的産業として、国力を傾注している。

本稿の課題は同胞経済社会がIT革命ないしIT化社会とどのように向き合うべきか、提言を行うことにある。以下では日本におけるIT産業の成長とビジネス社会の変容、中小企業におけるITの導入・活用を考察し、同胞経済社会へのアドバイスを導き出したい。

2)日本におけるIT産業の成長とビジネス社会の変容(略)

3)中小企業におけるITの導入・活用

(1)情報機器の導入状況(略) (2)IT活用の具体的事例

 @インターネットの活用で米国書籍小売業界に大きな変化をもたらしたA社(略)
 Aインターネット販売で売上げが拡大した花の通信販売L社(略)
 B売れ筋商品(プライベート・ブランド商品)を独自に開発したO社(略)

4)同胞経済社会へのアドバイス

 それでは同胞経済社会においてITをどのように活用していけばよいのか。そもそも同胞経済社会においてITは必要なのであろうか。前に見たように、今日中小企業における情報機器の導入状況はパソコンで5割強とそれほど高くないのが現状である。この数字はイコール必要性を示しているのではなく、むしろITを導入できていない基本的な問題点を示している。

 同胞経済社会においてはIT産業そのものよりも、商売・企業経営においてITをどのように活用すべきかが問われている。このような視点から捉えるならば、商売・企業経営におけるITのメリットを再確認する必要があるので、ここでもう一度簡単に整理したい。

 まずはインターネットを利用してのホームページ掲載による広告・宣伝であり、電子メールによる情報交換・商取引である。メディア(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌等)を通じての広告・宣伝はいうまでもなく、多大な経費を要する。しかしながら、インターネットを利用してホームページを掲載すれば基本的に費用は無料である。しかも、今後ITインフラの基盤整備が更に進んでいき、インターネットの利用者が拡大していくならば、在日企業・商店のホームページ開設は最低限の取り組みとして位置づけられるべきである。その際、「既にホームページは無数に存在しており、単にホームページを作成し商品カタログを提示しただけでは、情報発信としては不十分である」と『中小企業白書』も指摘しているように、今後のホームページ開設には付加価値や工夫が求められる。

 個々の在日企業・商店が個別にホームページを開設するだけでなく、在日企業・商店を総合的に統括し、検索的機能を持った全国レベルの総合ホームページを民団及び商工会で作成すべきである。この総合ホームページにアクセスすれば、地域別に業種別にあらゆる在日企業・商店の広告・宣伝・情報が知ることができるとすべきである。また、総合ホームページは在日商工人がさまざまな意見交換を行えるマダンとしての機能や経営コンサルティング的なアドバイスを果たせることが望まれよう。

 次にアプリケーションソフトの活用による経営効率及び経費削減のメリットがある。電卓から表計算ソフトへ、そして経理・人事管理専門ソフトを利用することによって、人件費を削減し、効率的な経営を行っていくことが求められる。民団とりわけ商工会ではそのための講習会・研究会・人的交流の場を設けることが必要であろう。

 最後にそもそも在日同胞企業・商店におけるIT導入・活用に関するアンケート実態調査を行わなければならない。在日商工人のIT導入・活用に関する実態が把握されて始めて、対策・政策が可能となる。彼らのITに関するニースがいかにあるのか、ITをどのように考えているのか、等々。

 在日商工人に対する実態調査はなにもITに関わることだけでなく、全般的な面でも実施されなければならない。実態を把握できていないなかでの政策などはあり得ないからである。

3.在日コリアンとパチンコ産業

1)はじめに

 パチンコは世界有数の規模を誇るアミューズメント産業であると同時に、在日コリアンにとっては最大の民族基幹産業である。在日コリアンの日々の生活を支えるだけでなく、民族社会の金融・経済、文化、教育、さらには同胞組織を支えてきた。

 しかし、パチンコ業は風適法の下で営まれる営業であること、法的・社会的に認知されていない換金行為を伴うことなどから、警察行政や世論の動向によって経営環境がしばしば激変し、中・長期的な経営戦略を策定することが難しくなっている。その一方で、業界内の競争は激しくなっており、大手と中小の2極化の進行が著しい。はっきり言って、パチンコ産業はいま、大きな変革の渦中にある。こうした経営環境において、民族産業としてのパチンコをどう守り、発展させて行くべきか。以下の論点から考える。

2)行政動向とその影響

@規制緩和とパチンコ(略)A地方分権とパチンコ(略)B換金合法化とパチンコ(略)C適正業者の選別と業界再編(略)

3)予想される経営面の変化

@異業種参入と高コスト経営(略)AITとパチンコ(略)Bローコスト経営とチェーンストア理論(略)C玉利重視の営業政策(略)D2極化とブランド化(略)

4)民族産業としてのパチンコをどう守るか

@2極化が進む中で、大手は独自の経営努力で生き残ることができるだろう。とくに換金合法化によって株式の上場が可能になれば、大手は多額の資金を株式マーケットから調達することができ、その経営力はさらに強化される。しかし、在日コリアン経営者もたくさん含まれる中小営業者の生き残りは厳しい。

 中小営業者が生き残るためには、弱者連合を形成する以外にない。共同仕入れ、共同キャンペーン、営業政策の情報交換・共有などを目指すチェーンカンパニー、さらに1歩進んで経営の提携、合併・統合などが必要となるだろう。

Aその際、民団には民族産業としてのパチンコが存続できるよう、中小の営業者を下支えすることが望まれる。民団は弱者連合を実現するためのコーディネート役を果たさなくてならない。そのために、専門家や有識者からなる「パチンコ経営近代化部会」(仮称)の設置を提言したい。また、換金の合法化やそれにともなう第3者機関の設置、さらには不正防止のためにセキュリティシステム作りなどには一定の政治力が不可欠となる。そうしたロビーイングの手助けを民団は積極的に行うべきである。

4.「信用組合の銀行化に関する提言」

1.初めに

韓国系の12の信用組合が既に経営破綻をし、大手の複数の信用組合についても自己資本比率が4%を切ったと新聞で報じられ、我々の信用組合は、いま、まさに危機的状況にある。

 銀行化の構想は以前から韓信協にあったが、1999年12月1日には「韓日銀行」構想が提起された。

 その後韓信協が、2000年4月17日に、韓信協を一本化して銀行化しようという構想を打ち出した。

 2000年10月3日には、東京商銀が「韓日銀行」と提携することを発表し、2000年併し、その後に残りの商銀を合併統合するという「韓信銀行」案を示した。

 銀行化という大事業が、二つに別れて進み、しかもそれぞれが迷走化の様相を見せ、多くの団員は心を痛めて見守っていた。時間切れに合い、どちらもできないという、最悪の事態を皆が思い浮かべるようになった2000年12月8日、朝日新聞に韓国政府が銀行化を支援する、という記事が載った。

 これにより、事態は収束に向かうであろうし、また、民団主導で一日も早く収束をさせなければならない状況になった。

 この様な状況下で、民団は、如何に小異を廃し、団員の利益のために動くべきかを以下に提言するものである。

2.何が問題だったのか

 まず、銀行化そのものについて議論をすべき余地はあるが、その事はここでは論じない。 その理由は、次の通りである。

 受け皿を作らなければならないことは誰もが認識していた。受け皿を作らなければ、韓国系信用組合は消滅するのであるから、当然である。どのような形にすべきかは、今までには諸説があった。しかし韓国政府が民団を中心とした銀行化を支援するというのであるから、方向は定まってしまった。よって諸説を論ずる必要が無くなった。

 では、なぜ今まで諸説が紛糾し、まとまりを欠いたのであろうか?その点について、説明をする。

 銀行化をなすには、次の3点をクリアする必要があった。これは非公式的に漏れ聞こえてくる金融庁の考え方である。

@二次破綻がないこと。A在日韓国人の総意に基づくものであること。これは具体的には、民団のバックアップがあると言う事を意味する。B韓国政府が認知していること。

 このうち、最大の難関が@の二次破綻のない銀行を作る、という事であった。二次破綻のない銀行化案を作ることができれば、当然に民団は支持するし、民団の支持があれば、韓国政府も認める、という流れであった。

 それ故二次破綻のない銀行化案をどうやって作るかが、これまでの最難関の問題点であった。この点において現状は、韓信協の「韓信銀行」案と「韓日銀行」案とに割れていた。

 二次破綻のない銀行を作るには、次の条件を満たす必要がある。

 1)不良債権を引き継がない 2)充分な資本金がある 3)銀行業務を支えるだけの人材が居る

 1)の不良債権を引き継がないというのは、全的に金融庁の職務であるし、我々としてもそれを信頼してよい部分である。

 受け皿銀行を作ることができれば、その後に金融庁が破綻信用組合を指定し、新銀行はそこの優良債権だけを引き継ぐというのが手続きの流れである。だから受け皿銀行を作ることができれば、それは当然に不良債権を引き継がないことを前提としている。

 3)の銀行業務を支えるだけの人材が居るか?という問題は、「韓日銀行」にとっては実体が無く問題であった。「韓信銀行」側は、都市銀行より優秀な指導者を何人かスカウトしてくれば解決できる程度に人材を備えていた。

 一番大きな問題は、2)の充分な資本金を集められるのかという事であった。これができなかったのは、二次破綻のおそれを明確に否定できなかったからである。それは信用組合の正確な情報開示のないままに銀行化が論じられてきたからである。このため真実が分からず、二次破綻の疑いを抱いた団員は、容易に出資の意思表示をしなかった。ために「韓日銀行」の70億円の出資予約(注1)がせいぜいだったのである。

 「韓信銀行」も「韓日銀行」も、在日韓国人の総意を得られず、また、それが故に韓国政府の認知も得られなかった。

 この三つの条件をクリアしない限りは、日本の金融当局は銀行業の許可を出さないのは至極当然な事であるのに、いままでは、ただ一つの条件もクリアできなかった。

 それが、韓国政府の支援がある、という事で状況は一変した。三つの条件のうちの一つが初めてクリアされたからである。後は民団が、二次破綻のない銀行を後押しすれば、三つの条件の総てを満足させられることになる。

 ならば、民団はどのような役割を果たすべきなのか、それを論ずる前に、何故に民族金融機関が必要なのかを再確認しておこう。

3.民族金融機関の必要性

@ネットワーク、インフラの崩壊

 商銀(民族金融機関の意味で用いる。以下同じ)設立当初は、商銀は、日本の金融機関から資金を借りられない同胞商工人を助けるために、無くてはならない存在であった。

 しかしながら1987年の統計データ(注2)によると、民族金融機関だけと取り引きしているのは11.2%であり、民族系金融機関を主とし、日本の銀行を従としているのが、27.1%である。約58%が、日本の銀行だけ、あるいは民族金融機関を従とした付き合いをしている。

 このことから、13年前、民族金融機関を主とする者とそうでない者との利用割合は、4対6であったと言える。現在はどうであろうか?大手銀行の中小企業への進出、継続的な帰化、という状況を考えれば、4対6の比率を維持できていれば、上出来、という状況ではないだろうか?

 勿論マイナス要因ばかりではない。民族金融機関との付き合いがあれば、それを交渉のネタとして、日本の銀行から有利な条件を引き出すのに使ったりもできる。実際、先の統計でも、何らかの形で民族金融機関と付き合いのある比率は、72.3%にのぼる。案外こういう使われ方が実体かも知れない。

 以上より、商銀は、草創期のような切実な資金需要を満たすためではなく、日本の銀行との棲み分けの中で、効果的に利用されるようになってきている、と言えるだろう。

 今一歩突っ込んだ言い方をするならば、経済的な存在の必然性は、草創期ほど強くはなくなってきているということである。

 ところで、商銀とは、経済的な側面からだけの存在だったのだろうか?商銀が果たした機能の中で、最も大きいのが、民団のネットワークを維持し続けてきたという点である。民団は草創期にあっては、各団員の家を戸別訪問し、団費を徴収した。その過程に於いて、各人の抱える色んな問題を把握し、相談に当たってきた。

 しかしながら、いま現在定期的に団員の家を戸別訪問している民団が一体どれだけあるだろうか? 

 しかしながら商銀は、日掛け、月掛けという預金獲得活動を通じ、毎日団員の家を戸別訪問してきた。民団が相当早い時期に機能を失った、団員間のネットワークを維持し続けてきたのが、商銀であった。

 このネットワークがあったお陰で、団員同士は、どこに誰が居るか、という事を知ることができた。

 仮にこのネットワークが崩壊した場合を考えてみよう。団員の多くは、通名を使って生活をし日本社会に埋もれている。外見からだけでは、誰が在日か分からないのは、日本人も我々自身も同じである。 ネットワークが無くなったならば、多くの者は、そのまま日本社会に埋もれるだけになってしまうだろう。

 すなわち、商銀ネットワークの崩壊は、民団社会の崩壊を意味し、民団そのものの構成員がどこに居るか分からなくなってしまうことを意味する。

 その後に、日本国籍を取得してしまえば、団員は完全に日本人であり、しかも民団を必要としない日本人であるから、その時に民団の綱領を変えても、変更された綱領の対象となる者の存在が分からなくなっている、という可能性が高い。

 なすべきは、商銀ネットワークの崩壊を防ぐことである。ネットワークの崩壊は、民団社会の崩壊を加速するだろう。

 これは経済的効果とは比較できないくらいに強烈なインパクトを持つ。

A成功体験

 我々が金融機関を失った場合、それは著しくプライドを傷つけられることである。そのような感情を突き詰めると、一世が築き上げたものを、その積極的な理由もなく、次の世代に伝えられなかった己をふがいなく思う気持ちに行き当たる。

 我々は在日の歴史を次世代に伝え、在日の財産を次世代に引き渡す、重大な責務を負っている。それを何の努力もせず、ここでみすみす失ってしまうのでは、己の良心に恥じるばかりである。

 民族教育は、学校だけでするものではない。現実に生きている姿そのものが民族教育となるのである。 一世が信用組合を作った成功体験。それは我々に経済基盤を与えると同時に、民族としてのプライドも与えたのである。

 我々世代も危機に直面している民族金融機関を救ったという成功体験を、次世代に示さなければならない。これこそが生きた民族教育である。

 小論、異論を廃し、危機からの脱出を見事にやり通したならば、日本人からの尊敬も勝ち取ることができ、在日の存在意義はますます高まるであろう。

 何年経っても在日が日本から消えないだけの経済基盤を、我々は維持しなければならないのである。 我々は困難に立ち向かい、成功する必要がある。この感情は、ぜに金ではない。我々が、我々であると言うためには、商銀を潰す訳にはいかないのである。 われわれは、在日の存在証明として、これを維持し、発展させるべき責務を負っている。


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4.民団主導の銀行化

@行動の時

 三つの条件のうちの一つが初めてクリアされた今こそ、民団が動くときである。今なすべきは、

 1)民団が中心となって資本金を集める 2)優良信用組合を銀行化する 3)その他の信用組合が破綻しているか否かについては、金融庁の判断を尊重し、優良債権を速やかに受け皿銀行に引き継ぐ 4)資本金が足りない場合は、韓国政府より最大400億円を支援して貰う

 こうすることによって、在日韓国人の総意に基づく銀行という形を作れるし、二次破綻のない銀行を作ることが可能である。 以下、何をどうすべきかについて具体的に見ていく。

A資本金の規模

 2000年3月末の信用組合全体の預金高は、約2兆1200億円である(注3)。これの8%は約1700億円である。4%だと約850億円になる。この数字の意味は、こうである。850億円以下の資本金では、自己資本比率が少なすぎ、業務改善命令を出されてしまう。簡単にいうと、破綻である。1700億円であれば、海外に支店を置いての業務も可能なレベルになる。

 以上より、現在の預金をそのまま引き継ぐとなると、少なくとも1000億円の資本金は必要になる。韓国政府が400億の支援を言ってくれているから、我々は600億円だけ準備すればいいと考えるのは妥当ではない。これは我々の問題である。今回の政府の発言で、民団が動くべききっかけを与えてくれたことだけに感謝し、資本金は、我々が独力で集める、という気概を見せるべきである。更に厳密な計算をしてみよう。

 受け皿となる商銀の出資金は資本金になるから、その部分は1000億から減る。また、銀行化に賛同しない商銀もあるので、その部分の預金を考える必要はなく、更には、破綻した商銀の整理の段階で、債権と相殺される預金も相当の金額に上ると予想されることから、その部分の預金も減少することになる。

 かりにそうして集計した預金が1兆円規模となったとすると、必要最低資本金は400億円となる。自己資本比率8%を維持するためならば、800億円である。400億円というのは韓国政府のいう支援金額と同じである。よって最悪でも、二次破綻のない銀行はできる状況にあると言える。

 しかし既に述べたように、この問題は我々自身の問題であるから、我々自身で資本金を獲得すべきである。

 目標設定額をいくらにするかは難しい問題である。仮に1000億だとすると、2000年3月末の団員の総世帯数が120,944世帯であるから、一世帯当たり82万7千円という金額になる。これはとんでもない金額である。更にまた、発想を変えて検討してみると、同胞経済人は1億出せる会社を、1000社持っているだろうか?という疑問にぶつかる。これもまた、とんでもない数字である。

 勿論、対象を民団員のみに限る必要はなく、総連系同胞にも、帰化同胞にも、出資を呼びかけるべきである。しかしそれにしても、1000億というのは莫大な金額である。

 だが、確実に二次破綻のない銀行を作ろうとするならば、このくらいの目標を掲げなければならないだろう。具体的な金額は戦略的判断を含むので、民団で策定すべきである。目標を高く定めるならば1000億円、低く定めるならば、400億円、と言ったところである。この範囲のどこに落とすかは、民団の判断による。

B発起人集会

 民団中央の団長を発起人代表として、発起人集会を持ち、出資の予約を集めると同時に、その趣旨を日本の金融庁に説明すべきである。すなわち、1)二次破綻がないだけの資金を集める 2)それは民団が中心となってやる 3)当然韓国政府は認知するという事柄である。よって、銀行設立の内認可を速やかに出していただきたいという事である。その後は、破綻した信用組合の優良な債権のみを引き継ぐ。

 この発起人集会には、「韓信銀行」「韓日銀行」のメンバーにも賛同して貰わなければならない。彼らは、それぞれに銀行設立の可能性が高いと思う方法を模索してきただけであり、我々の利益に反する行動を取ってきたわけではない。それぞれがその時に最善と思う方法を取ってきただけである。

 しかしながら、銀行設立を制約していた条件に決定的な変化が訪れた今となっては、民団の下に大同団結すべき時である。

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5.検討しておくべき事

@ゴーイングコンサーン(企業の継続性)

 豊富な資本金を集めれば、短期的な二次破綻はない。

 二次破綻とは、不良債権を引き継いだために、それを処理できず、新設銀行が破綻に追い込まれることを指している。新設銀行は金融庁の監督の下、優良債権のみを引き継ぐのであるから、二次破綻とは無縁である。もちろん引き継いだときには優良債権でも、その後に不良債権となることは、あり得ることである。しかしそれは人知の及ぶところではない。ここでの二次破綻がないというのは、人知の及ぶ範囲内での、意図的な不良債権引継による、連鎖的な破綻はないという事である。

 しかしこれとは別に、銀行業が不振で、長期的に経営が傾き、破綻をするという可能性は、別個に存在する。この危険は、総ての経済主体について存在しているものである。

 現在は、既存の銀行ですら、合併をし、規模の拡大を計って生き抜こうとしている時代である。それゆえ信用組合を銀行にするだけで生き残れると楽観することはできない。また、いくら優秀な人材が居たとしても、信用組合の経験しかないのであるから、銀行業務に慣れるには、それ相応の時間を要するだろう。さらには、破綻した信用組合からの優良債権の引継という業務も加わる。混乱は複数年続くと見るのが妥当であろう。

 しかしながらそれを理由にして、いつまでも銀行業務を積極的に行えないようでは困るのである。混乱を理由として赤字を出すことを容認できないのである。よって銀行設立当初より、混乱収束後をにらんで、継続的に収益を上げられる企画なり、形を作っておく必要がある。

 たとえば、2002年の韓日のワールドカップ共同開催を睨み、サッカーくじを独占販売させてもらえないか、政府と交渉すべきである。日本側は難しいとしても、韓国サイドの分を日本で売る場合は、我々の銀行でのみ買える、というようにできたなら、大きな利益を得られるだろう。

 金融自由化の時代であるから、我々の銀行のみを特別扱いして貰うのは難しいが、何らかの条件を満たせば、当初の何年間かはハンディをつけてもらえるようなものがあるはずである。それらを徹底的に研究すべきである。

 また、ペイオフを睨んだ場合、積極的な情報開示無しには、客の信頼をつなぎ止めることはできないということを肝に銘じるべきである。今回の「韓信銀行」案、「韓日銀行」案が、独自にうまく機能しなかったのは、詰まるところは適切な情報開示ができなかったことに起因していると言える。

 新設銀行は、客の信頼をつなぎ止めるためには、どのような情報をどのような形で提供するのがベストなのかを研究し、実行すべきである。

A上場はすべきでない

 ここでは、複数の信組が一つの銀行となった場合の経済効果について検討してみたい。 最も憂慮されるのは、新銀行は、民族金融機関でなくなるのではないか?という事である。

 通常、合併をすることの意味は、固定費の削減にある。すなわち、100の売上で80の経費がかかっている二つの会社があるとしよう。合併すると、200の売上で160の経費がかかり、利益は40である。しかしながら、同じ業種であるのだから、会社が一つになれば、コンピューターを管理している人間は重複して雇っておく必要はないし、コンピューターも一台で良いという事になる。つまり、たくさん売っても、少なく売っても、常に発生する経費を、合併により節約できるのである。そして、その節約できた経費は、そのまま利益になる。事例の場合で、50の経費の節約ができたとしたなら、合併後の会社は、90の利益を上げることができるのである。合併前の二つの会社の利益の単純な合計は40だが、合併するとそれを90にできるというのが、合併の効果である。

 ところで信用組合の場合、重複しているのは大阪商銀と関西興銀くらいのもので、他は、それぞれの地域に一信用組合である。

 この様な状況で合併しても、単に預金量が増えるというだけで、固定費の削減には何の効果も発揮しない。即ち我々の信用組合の場合は、合併をしても合併効果が望めないのである。こうした状況で固定費の削減を目指すならば、効率の悪い店舗を閉鎖するしかなくなる。

 これは即ち、収益効率の悪い地方の切り捨てである。また、預金が減少傾向にあるならば、都市の顧客に金を貸し、地方の顧客に貸す金がなくなるという事態を招来する恐れもある。

 つまり銀行化による合併は、一つ間違うと地方の犠牲の上に、都市部の企業を生かすだけのものとなってしまう危険をはらんでいるのである。

 さらに銀行の株式を仮に上場したとしてみよう。上場をするという事は、株式民主主義、すなわち、一票の差でも多数が少数者に勝つ、という構造を容認することを意味する。こうなると経営陣にいくら民族金融機関としての使命を全うしようという気持ちがあっても、過半数をアメリカやヨーロッパあるいは日本の銀行に買い占められれば、彼らのいう事を聞かざるを得なくなる。

 上場は、民族金融機関の理念に反しているのではないだろうか?民族金融機関としての理念とは、赤字を出してまではつきあえないけれども、少々効率が悪いくらいなら、同じ同胞を助けましょう、という事であるはずだからである。

 上場をすると、その銀行は株主の銀行であって、民族の銀行ではなくなる。民族と株主が一致している限りは問題ないが、一致しなくなった途端に、民族主義的経営は、株主代表訴訟の対象に成りかねないのである。即ち株主の利益増大に貢献しないような経営は、株式会社の営利社団法人性に反するからである。

 よって株式の上場には反対すべきである。むしろ株式の譲渡には、制限を設けるくらい(商法204条)がのぞましい。


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6.いかなる銀行を作るか

@短期的視点から

1)経営陣

日本の銀行自体が、合併やリストラをしなければ生き残れないような厳しい経済環境に置かれているのだから、新銀行も、その競争の中で生き残れるような規模を持ち、人材を擁していなければならない。

 民族金融機関という旗印を掲げることは、効率化を無視しても、同胞のための金融需要をまかなう事がある、という事を意味する。一方で、営利社団法人は効率的な経営により、利益の極大化を目指す使命を帯びている。両者は相反する命題である。

 矛盾する二つの使命を果たすためには、新銀行の役職員には次の資質が必要である。

 先ずは、使命感が高くなければならない。第二に、儲けられるところでは、しっかり儲ける経営センスが必要である。それは銀行経営のプロであるという事を意味する。

 こうなると、信用組合時代のように、頭取が一方で事業をしながら、片手間に銀行経営をする、という事は許されなくなる。それは、頭取を支える取締役陣についても言えることである。

 初代頭取については、銀行経験者でなければならないという事、韓国から多額の支援をしてもらうという事から、韓国から受け入れるのが妥当であろう。もっとも日本で事業活動を行うのであるから、日本の金融界にも明るい人を推薦して貰うべきである。

 これに合わせて銀行実務を指導して貰うために、相当数の銀行マンの出向を韓国の銀行や日本の銀行にお願いしなければならないだろう。

 この様にして既存職員を鍛え、短期間の内に韓国から支援して貰った最大400億の資金を返済しなければならない。

2)雇用の問題

 枠作りは、きちんとした情報公開と、しっかりした理念があれば、できることである。しかしながら、枠の中に入る中身の方は簡単には行かない。外部から銀行経営のプロフェッショナルである、優秀な人間を迎えるのは勿論のことであるが、信用組合内部の、優秀な人間が外部に流出しないような努力をする必要もある。

 2000年3月現在の役職員は、2,541人(注3)である。一世帯平均4人として、約1万人の生活が、信用組合にかかっている。この者たちの生活を守るという観点は当然に必要である。さらにはこれに加えて、人材確保という点も、重視しなければならない。

 信用組合が破綻した場合、理事、監事は道義上、当然、全員退任すべきである。しかしながら、常勤理事の中には、優秀な人が多くいると聞いている。

 バブルという未曾有の異常事態を考えれば、一個人に責任を問うのは辛い側面がある。もちろんそういう異常事態ではあっても、理事長の場合は、組織の最高責任者であるから、これは退任していただくしかないだろう。しかし常勤理事については、優秀な人は、嘱託などの形で、新銀行で働いて貰う道を模索すべきではないだろうか? 限られた人材を有効に活用するには、何らかの工夫が働いてしかるべきである。

 破綻組合の幹部全員を一律に切り捨てるような政策は、妥当ではない。

A長期的視点から

先に商銀の果たした最大の役割は、ネットワークインフラの提供であったと述べた。将来に於いても、この重要性はいささかも変わるところがない。

いままでは、無意識に、結果としてネットワークインフラを提供していた、という事ができる。しかしながらこれからは、意識的にネットワークインフラを提供すべく、新たに構築することに力を入れて行かなければならない。

先ず、21世紀の望ましい在日像について考えてみる。

21世紀に於いては、在日という定義自体が古くさいものになるだろう。いま現在もインターネットの普及により、地球が一つの生命体として機能している状況である。そのようなときに、在日というくくり方は、如何にも狭苦しく、旧時代的である。

ビジネスが世界化しているいま、我々のネットワークもまた、世界化する必要がある。21世紀の我々にとって必要なのは、在日のネットワーク、プラス、在外コリアンのネットワークである。

ビジネスがアメリカや、中国や、ロシアと行われるとき、そこに信頼できるコリアン事業家が居るならば、その人と取り引きできる情報を提供できるようでなければならない。

その為にはどうすべきか、以下に必要なことを掲げていく。

1)情報専門組織を作る

銀行傘下に、経済研究所を作る必要がある。ここで収集する情報は、各国の投資環境に関する情報。各国にいるコリアン経済人の情報などである。

このほかに、在日同胞経済人育成のための情報が必要である。すなわち、ベンチャービジネス立ち上げから公開に至るまでの、情報を提供できなければならない。また、財務戦略、公開戦略に必要な情報の提供や、指導が行えなければならない。

この他に在日が係わっている主立った業種の統計データも必要である。こうした情報は、日本を初め、各国で必要とされるくらいのレベルにまで高め、売ることができるようにする必要がある。また、必要とされるような情報でない限り、意味がないものである、ともいえる。

2)人材育成

在外コリアンネットワークを作るには、その中で働く人間のレベルが上がらない限りできないし、また仮に作れたとしても、ネットワークを機能させることはできない。

最低限、日本語、韓国語はできなければならない。このほかに英語、中国語、ロシア語などができる人材を多数養成する必要がある。すなわち、三カ国語を自由に操れる人間が多数必要、という事である。また、年間5人程度、MBA(経営学修士)に送り出すくらいのことをしなければならない。

部長職以上に就くには、三カ国語ができること、また、役員以上になるには、MBAを取得していること、等の条件を付し、人材育成に資金を投下しなければならない。

人材育成については、やる気があるものには等しくチャンスが与えられるシステムを構築する必要がある。出身大学や学歴に関係なく、やる気があり、必要とされる結果を出すものには、更に上を目指すチャンスが与えられなければならない。

最終目標は、彼らが作り出すネットワークから得られる情報や、彼らが加工した情報が、コリアンネットワーク以外のものに高く売れるようにすることである。

これができなければ、21世紀の在日は存在し得ないと考えるべきである。在日という、狭い日本に閉じこもる発想でいては、消滅するだけである。

韓国と日本は地理的にも近いので、ビジネスをしようと思えば、在日に頼ることなく、直ぐにビジネスをすることができる。

また、インターネットの発展により、アメリカと韓国であっても、ビジネス情報のやりとりはできる。そうした情報は、在日ならずとも、誰でもネットにアクセスすれば、直ぐに入手できる状況である。

この様なとき必要なのは、情報加工の技術であり、人的な繋がりである。これこそがネットワークの本質をなすものである。

一世の時代は、学校に行かなくても、文字を知らないものでも、口コミでそれをすることができた。しかし現代にあっては、意識しない限り、そのようなネットワークを作れない状況になっている。

銀行は、正しくそのようなことを意識して行う、情報インフラの中心に位置しなければならない。

我々はこの様なことをするために、儲けるのである。世間一般の会社のように、株主に高配当を出すためや、株主純資産を高めるためだけに、経済活動をするのではないのである。

我々の銀行は、先ず、理念ありきの経済主体でなければならない。そして理念を実現させるために優秀な人材を獲得し、育て上げなければならない。

3)コンサルティングファーム化

1の)組織と2)の人材を活用して、日本国内でなすべきは、企業の活性化、端的にいうと、コンサルティングである。

コンサルティング会社が、貸し付けるべき資金まで持っている、という形にしないと、銀行としても生き残れないし、顧客も維持できず、ひいてはネットワークの構築もできないことになってしまう。

いままでは、パチンコと焼き肉が在日の基幹産業であった。しかし今後は、この産業の比率、比重は相対的に低下するものと予想される。

その他の産業、例えば、情報関係、ネットワーク関係、物流、環境問題特に産廃産業などの重要性が増してくるだろう。

そういう多方面の産業に対し、適切なコンサルティングを展開して行くという事は、それぞれの専門分野の人材育成を計らなければならない事を意味する。

このため、外回りや、貸付関係には、フィナンシャルプランナーや、税理士、中小企業診断士、と言った資格を持った者のみが当たれるようにする必要がある。そのくらいの知識がないと、客の疑問や質問に答えられないどころか、問題点が何なのか、という事すら把握できないだろう。

単に機械的に日掛けを集金するだけのことならば、それは黒猫ヤマトなどにアウトソーシングすればいいのである。

人がわざわざ出向いて預金を集めるからには、単に預金を集めることよりも、人と顔を合わせるという事の方に重きが置かれなければならない。

こうした観点からすれば、情報処理能力のないものを店舗外に出すわけには行かない。外に出るものほど、高い能力が要求されるのである。

しかし現在は、これが逆転している。新米が日掛けの集金に回っているが、これは愚である。

新米は三年間は、店内でみっちり勉強しなければならない。知っておかなければならないことは山ほどある。それらをマスターし、資格の一つも取ってから、外に出て、初めてお客と対等の話し合いができるのである。

銀行には、まず、こうしたことが求められる。


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7.民団との関わりで検討すべき事

 韓信協が2000年11月9日に発表した、「新銀行設立の今後の進め方について(案)」によると、銀行は執行役員制を取り、取締役会の下に経営諮問委員会を置くことになっている。経営諮問委員会とは、「組織図補足説明」によると、次のようなものである。全文を引用する。

 「取締役会の諮問機関として経営諮問委員会を設置する。原則として4半期に一回開催する。当委員会は、銀行の経営姿勢が、地域密着型民族金融機関としての当行の創業理念や社会的な公共性との乖離が生じていないかを審議し、取締役会に対し必要な助言・勧告を行う。有識者、同胞組合功労者等により構成される経営諮問委員がメンバーとなる。」

 また、銀行の定款第2条の目的には、次のように書かれている。

 第2条(目的) 当銀行は、主として、日本に居住する韓国人の経済活動を促進し、かつ、その経済的地位の向上を図ることを目的として次の業務を営む。

以下省略。

 以上から分かるとおり、韓信協の考えている銀行は、民族金融機関としての使命を自覚し、その実効性を保つために取締役会の諮問機関として、有識者、同胞組合功労者等により、創業理念や社会的な公共性との乖離が生じていないかを審議するようにしている。これは非常に好ましいことであるし、かくあるべき事でもある。

 しかし果たしてこれだけで充分であろうか? 以下に検討を試みる。

@民族金融機関であり続けるための方策

 信用組合は、地域住民の助け合いのための非営利組織であった(中小企業協同組合法第1条、5条)。しかしながら銀行は、営利を追求する、社団法人(商法52条)である。その存在意義は根本的に異なる。

 それゆえ信用組合の議決は、出資金の多寡に係わらず、一人一票である(中小企業協同組合法第5条)。これに対し、株式会社では、多くの資金を出したものが、多くの票を持つ(商法241条)。このため多数の株式を支配する株主は、自分たちの意見を合法的に押し通すことが可能になる。

それゆえ銀行は、利益のみを欲する株主に支配されたなら、民族を無視した金融機関に変貌する可能性がある。

 信用組合は非営利組織だったから、理念に於いて民団と共通しており、歯止めを考慮する必要はなかった。しかしながら、銀行となると、歯止めを考えておく必要がある。

 「韓信銀行」では、その歯止めとして経営諮問委員会の設置を考えている。しかしこれでは、真に実効性を確保することはできない。なぜならば経営諮問委員会は任意の組織であり、その決議に強制力はないからである。

 また、取締役会の下部組織であり、諮問機関であるから、取締役会でその答申を無視すると、それまでとなる。

 通常、執行役員制を取る会社は、社外取締役制を同時に取る例が多い。これは外部の有識者から取締役を招き、会社の基本理念に沿った経営が行われているかどうかを、チェックするためである。

 取締役会は商法の定める会社の機関であり(260条)、そこでの決議は強制力を持つ。「韓信銀行」が真に理念を守ることに配慮するのであるならば、経営諮問委員会の設置ではなく、社外取締役制度を採用すべきであった。我々の新設銀行は、「韓信銀行」案とは違う方向を目指すべきである。

以下に代案を掲げる。より具体的には、民団及び新しく設立されるであろう銀行との間で、検討をしていただきたい。

 株式会社に歯止めを掛ける方策で最も強力なものの一つに、株の過半数確保がある。

 会社の取締役は、三分の一以上の株主が出席して、その過半数の賛成で決まる(商法239、254条、256条ノ2)。通常は、過半数の株主が出席して、過半数の決議で決まる。

 このことから、株主総会の出席率が100%であったとしても、仮に民団が株式の過半数を有していれば、自分の望む取締役を選任できるから、既存の経営陣の過度な利益追求、過度な効率性の追求というものを押さえることができる。

 銀行が団員の意向と外れた方向に向いたときには、この権利を行使することによって、軌道修正が可能になる。

 もっとも、民団は、金融や経営に関しては素人であるから、通常は経営陣と対立するような議決権行使の仕方をすることはない。もしそういうことがあるとするならば、それは異常な事態の時だと言える。

 このことから、団長の銀行に対する議決権の行使は、執行部の決議に基づいてのみ行えるといった規定を、新たに設けるべきである。また執行部の決議が総会の三分の二以上に反対された場合は、不信任決議がされたのと同じ効果を持たせるべきである。

 これは、団長個人の暴走を押さえるのと、執行部の暴走を押さえるための手だてである。この様な仕組みを作っておいて、それでもなお銀行の役員を解任すべき理由がある場合は、団員の総意として、解任するのである。

 ここでの民団というのは、民団中央を想定している。中央団長に議決権の行使を委ねるのは、最終的な意見をまとめるためである。各地方団長に議決権を委ねた場合には、統一的な意思表示ができなくなるおそれがある。議決権行使に当たっての議論はされても、最終的意思決定権者を一人にしておけば、混乱を回避し、また収拾できるからである。

 ここでの問題は、地方の民団が独自に取得した株式に対する議決権を制約できるか?という事である。中央が強制できるのかどうかという疑問が残る。この点は法律論議になるので法律の専門家の意見を仰ぎ、事前に混乱のない運用方法を確立しておくべきである。

 再言するが、この権利は、常識的には行使されることのない、ものである。ただ、万が一の事態に備え、その権利を留保しておこうとするものである。

 なお、取締役を任期の途中で解任するには、過半数の株主が出席し、出席した株主の三分の二の議決が必要である(商法257条)。

 さて、それではどのようにして民団が株の過半数の議決権を有することができるのであろうか? 以下に検討を試みる。

A現時点での選択可能な方策

1)民団が株主になる。

 新銀行設立に当たり、民団独自の財源で、あるいは団員が民団に寄付をして、民団が株を買うという方法が考えられる。配当金は、民団の財源となるので、民団の財源安定のためにも望ましい。

 この方法には以下のような問題点がある。

a.民団員の寄付に関する、課税の問題

 法人の場合、一定限度を超える寄付は課税対象である(法人税法37条)。個人の場合は、全額否認される(所得税法78条)。これを非課税とするには、本国政府と日本政府を通じた政治的解決しかない。オリンピックの時の寄付などとは性質が異なるので、実現可能性は低いだろう。

b.株式の名義の問題

 不動産と同じく、民団の名義にできない可能性がある。しかし、この点は民団と銀行側とで覚書を交わしておけば問題ないであろう。また、株券は証券会社に保管預かりをして貰い、執行部全員の同意書なりがなければ引き出せないような手だてを講じておけば、管理上も問題ないだろう。

 このほかには、特定の会社に資金を提供し、その名義で株を買って貰うことが考えられる。もちろん、その会社と民団との間で、真の所有者は民団であり、会社は名義を貸しているだけであるという覚書を交わしておく必要がある。この覚書は、公証を得ておけば、より強力だろう。

 各級の民団傘下に適当な法人があれば、それを使っての投資という方法も実現可能性の高いものである。

いずれにしても、民団が直接株主になる場合には、各級の民団の総てが、財産の適正な保管運用をするように、統一された管理方法を策定し、それが適切に運用されるようにしなければならない。

2)団長を代理人とする

 議決権の行使にあっては、代理人を指定できる(商法239条2項)。この指定は、総会の度にしなければならない(同条3項)。

 本人が出席できない場合には、代理人を指名して、葉書を銀行に送り返すのが普通である。この葉書に、あらかじめ民団中央団長誰それという文字を書いておき、〇をつけられるようにしておくべきである。他には銀行の代表取締役も印字しておく。このほかに、第三の選択肢もあり得るから、具体的な名前を書ける空欄も用意する。

 このようにして、民団の議決権の割合を高める仕組みを作る。株式と配当金は株主が受け取り、議決権のみ、団長に委任するのであるから団員の理解も得やすいだろう。

 この方法では、民団が過半数を常に得られるという保障はないが、それでもお目付役、という抑止力には成るであろう。

3)社外取締役及び監査役を置く

株主総会というのは、通常は一年に一回であり、迅速さに欠ける。民団の団長が過半数を留保しようというのは、銀行が民族金融機関性を失っていくのを監視するためであるから、一年に一回、株主総会に出て報告を受けるだけでは、その目的を充分に達成することはできない。加えて団長は、金融のプロではないのが普通である。

そこで、民団中央団長の指名する者を一名、できれば二名、社外取締役とする事を、銀行の定款に明記する様に提案する。二名というのは、どちらかが事故や病気で出席できない場合に備えてのことである。この他に監査役を置くことも検討すべきである。

株式会社は、最低三ヶ月に一度は取締役会を開かなければならない(商法260条)。その時に民団側の取締役が参加すれば、団員にとって不利な経営をしてないか? 民族金融機関としての理念は守られているのか?ということを監視することができる。また、監査役を置けば、常時業務を監視することができる。監査役には、いつでも取締役や従業員に対し、営業の報告を求める権限があるし、業務や財産状況を調査できる権限があるからである(商法274条2項)。

 この社外取締役及び監査役は、形式だけのものであってはならない。外部の金融の専門家、あるいはそれに準ずるくらいの能力のある人に委託して、取締役会に出席して貰ったり、業務の監視をして貰う必要がある。

 信用組合が、銀行という、性格の違う組織に変容するのに合わせ、民団は以上のような対応をしておくべきである。

B民団が将来、財団化あるいはNPO(特定非営利活動法人)化することを睨んだ方策

 現時点に於いて民団が株主になることも一つの方法であるが、将来に於いての手だても、銀行設立の際に打っておくべきである。

 そこで、将来民団が財団やNPOになるときには、株式を寄付するという、条件付きの贈与契約書を株主と締結しておくことを提案したい。財団に対する寄付は、一定の条件を満たせば、税の問題を発生させない(法人税法37条、相続税法66条)。NPOの場合、税の問題は解決していないが、いずれは財団に準じた取り扱いを受けられるようになると見られている。現時点で寄付を受けて民団が株式を購入するよりは、こちらの方がいいだろう。

 勿論、贈与契約を結ぶことは、団員の義務ではない。自発的にそうしていただける団員に限り、そうして貰うのである。銀行の株式を財団やNPOの財産とできれば、そこからの配当金は、「財団法人民団」あるいは「NPO民団」の大変有力な資金源となるだろう。且つまた、そうした契約書の存在により、民団が潜在的な議決権を有していることを示せるから、銀行が民族金融機関性を維持するための抑止力にも成る。


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8.結び

 @速やかに、民団が中心となって発起人集会を開くべきである。

 A資本金獲得運動を民団の運動として展開すべきである。

注1:2000年10月4日付け日本経済新聞

注2:在日本大韓民国居留民団(名称当時)「'87在日韓国人実体及び意識調査」

注3:韓信協、第47回通常総会、議案(2000年7月28日)

参考文献

「金融再生の仕組み」 重松政男著 日本実業出版社

「金融監督庁の1年」平成11事務年度版


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