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<寄稿>地域住民として生きて…呉文子
「異文化」認め合う共生…調布市に根ざしてこそ築けた
女性史を学び同胞の苦闘知る


 東京の西寄りに位置している人口23万弱の調布市に移り住んで40年になる。ここには関東では浅草寺に次いで二番目に古い深大寺があり、寺の縁起には、高麗の青年と村の長の娘が結ばれ二人の間に生まれた子(後の満功上人)が733年に開基したとあり、古代から朝鮮半島とは所縁の深い土地柄である。

 移り住んだ当初、二分化された在日の社会状況の中、私は社会主義の勝利は歴史発展の法則と信じていた体制から離れ、居場所を失った喪失感から孤独で空虚な日々を送っていた。私に少しずつ変化の兆しが見え始めたのは、市が主催する講座などに参加することによって、地域に根差して生きることの意味を考え始めるようになってからである。

 特に地域女性史を学ぶ中で、聞きとり調査にも参加し、長い歴史の中で形成された性別役割分担意識が社会や家庭、職場など生活のあらゆる場に残っていることを直に知ることになる。

 また戦前に多摩川流域で砂利採りを生計とした同胞女性たちが、生活苦に喘ぎながらもたくましく生き抜いた歩みも知ることとなった。民族差別や男尊女卑の儒教風土のなかで、二重の苦しみに耐えながらも女の恨(ハン)を発酵させてしまうバイタリティーに感動さえ覚えたものだ。

 この聞き取り調査を通して、「在日」の私が一市民として街づくりにどのように関わっていくべきか、という課題も見えてきた。

 市民意識が芽生え始めた1994年ごろから調布市の女性問題広報紙『新しい風』の編集委員に加えていただき、「隣の国の女性たち」というコラムを9年間連載した。母国の女性たちの儒教思想による性差別との闘いや「在日」女性たちの民族差別と性差別の二重構造の中での苦しい生活状況などを紹介した。

 当時に比べれば女性問題は大きく変貌を遂げ、民法が改正され戸主制も廃止された。『新しい風』に関わることで、わたしにも新しい風が吹き、住民意識が確立するターニングポイントになったのかもしれない。

 このようなかかわりの中で、1998年から調布市の「まちづくり市民会議」の諮問委員に選出され、2期歴任することになった。諮問委員との新たなネットワークが広がる中で、特に市議会で在日外国人無年金高齢者及び無年金障害者に対する特別給付金の支給が満場一致で採択されたことは自信につながった。このことを通して、自分たちの住む街を拠点に地道に交流を続けることの大切さを学んだ。

 2000年には母の入院体験を「朝日新聞」の論壇に投稿し「配慮ある福祉を在日高齢者に」が掲載されたことが直接の契機となり、翌年「異文化を愉しむ会」を発足させ16年目を迎える。

 この時の発足趣旨文が市報にも掲載され、かなりな反響を呼び新たな出会いが生まれface to faceの交流は続いている。この交流を通して在日コリアンの実情を理解し、異なる文化を尊重し認め合い、愉しむことのできる会へと成長している。

 昨年、市制60周年を記念して、「市民がたどる調布の女性史『凛として』」が発行された。法政大学総長の田中優子先生の記念講演「歴史は今を考え、未来を見つめる手がかり」があり、古代から問題解決に向けて果敢に実行する知性は女性の方が勝っていたことなど、女性史発行記念のお話としてはぴったりの内容に拍手喝采だった。

 講演が終わって2部は「車座トーク」となり、『凛として』に収録された数人が選ばれ、私も短いスピーチをすることとなった。この街に移り住んで40年、在日コリアンの私が、調布市民としてデビューした年月をしみじみと振り返りながら、共生を実感した車座トークだった。

 日本社会は多くの国籍をもつ地域住民で構成されている。住みよい地域社会にするためには、国籍を超えて地域社会の一員という共通の立場から、地域住民のひとりとしてどう街づくりに参画し共生関係を築くために発信していくべきかが、今問われているのではないだろうか。

■□
プロフィール

 呉文子 (オ・ムンジャ)エッセイスト・「異文化を愉しむ会」主宰。『鳳仙花』20号まで代表。在日女性文学誌『地に舟をこげ』終刊まで編集委員。調布市女性問題広報紙「あたらしい風」編集委員(「隣の国の女たち」コラム連載)などを経て現在「東洋経済日報」に随筆連載中。

 著書『パンソリに思いを秘めるとき』(学生社)、共編『女たちの在日』(新幹社)、『季論21』29号『在日社会の分断の中で」(本の泉社)他。

(2016.12.21 民団新聞)
 
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