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望月かずさんを語る…韓国戦争の孤児133人を育てあげた日本人
作家・江宮隆之さん
江宮さんの『母ちゃん(オンマ)』
支える韓国の人たちがいた

 存命なら、8月には90歳を迎えているはずだった望月かずさん(1927〜83年)。韓国戦争で親を失った孤児133人を韓国で育て上げた日本人女性だ。35歳のときに理髪師の資格を取得してから「愛の理髪師」と呼ばれた。この2月にはソウルの大学路で、かずさんを描いた演劇「オンマ」が劇団美演によって上演された。かずさんの生涯をたどった小説『母ちゃん(オンマ)』(河出書房新社、07年刊)の著者、作家の江宮隆之さんは「人間の価値を我々に教えてくれる人」だと話す。

良好な両国関係こそ
志を生かす道


 望月かずさんの歩んだ人生は、我々の想像を絶するものだ。

 東京杉並区の高円寺で生まれた。父の記憶はなく、4歳で母と共に満州へ渡り、6歳の時に母を亡くして孤児となった。母の使用人たちに財産を全て奪われ、12歳まで満州で奴婢として転売されながら生きた。1950年に勃発した韓国戦争にソウルで巻き込まれ、銃弾に倒れた母親の胸から赤ん坊を助けたことが、その後の人生を決めた。

 露天の理髪店、軍手の製造、ときには売血までして孤児たちを育てるが生活は困窮した。その状況を見かねた人たちから、支援をするから孤児院にするよう勧められても、拒否し続けた。

 「彼女が言い続けたことは、子どもには家族が必要だ」。幼くして家族を失った自分と同じ思いを体験した孤児たちを見捨てなかった。さらに学校に行けなかったという自身の思いから、どんな苦労をしても、学校に行きたい子には学問を続けさせた。

 江宮さんはこれまで、浅川巧や沙也可、植民地時代の韓国で、一千人以上の孤児を救済した曽田嘉伊智など、韓国の土になった日本人の半生を綴った著書を刊行している。みな、韓国にそれぞれの貢献をして亡くなっている。

 山梨県で生まれ育った江宮さんは、差別意識を持たない漆塗り職人だった父親と祖父に育てられた。小学校の在日の同級生とも分け隔てなく付き合ってきたと言う。

 最初に浅川巧を書く時も「僕は韓国に対して偏見は持っていないから、自分を重ねながら書いていけた」。その後、何人だからと差別感情を持たず、韓国併合時代や韓国戦争の際にも人間として生きた日本人を捜し出したなかに望月かずさんがいた。

 かずさんの場合は「もう一歩突っ込んで、子どもたちの母親になり、自分の命を預けて生きた。彼女は韓国人であろうが日本人であろうが関係ない。人としての一番大事な部分を持ち続けた人です。人間美以外はないでしょう」。

 「僕はいつも日本の人に言うんですけれども、日本人も捨てたもんじゃないんだという捉え方ではなくて、韓国でそういうことができたのは、日本人を支えた韓国の人がいたから。浅川巧の場合も一緒で、浅川巧を受け入れてくれた韓国の人がいたからできた。相互関係があるんです」

 江宮さんは時々招かれる講演で必ず、かずさんの話をする。以前、講演した私立高校での感想文に「こんな生き方は私たちには出来ないけれども、この人の生き方を私たちは見習うことは出来る」と書かれていた。

 「かずさんは、人としてどう生きたかっていう人間の価値を我々に教えてくれる人。それは日本人だからじゃない、人間としてです」

 韓国政府は67年の光復節に「光復章」を、71年に朴正煕大統領が国民勲章冬柏章を授与した。「かずさんのところに立って言えば日韓友好をちゃんとやるべきなんです。日本人が韓国人を大事にして韓国人が日本人を大事に思えばいいこと」。江宮さんはそう語る。

 「過去に学ぶ」なかには、浅川巧や曽田嘉伊智、田内千鶴子、かずさん以外にもたくさんの人がいる。「そういう人たちの志を持って、その志を活かすのは何かと言ったらこれからより良い日韓関係を作っていくことじゃないかなと思う。彼女や彼らはそういうことを願って韓国に行って、韓国の土になったんです」

 『母ちゃん(オンマ)』

 定価1700円+税。 河出書房新社編集(03・3404・8611)。

(2017.4.12 民団新聞)
 
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