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サラム賛歌<24>伝統的韓服の美を追求
ヌビ作家 尹炳玉さん

 飾り気のない笑顔。小さなことなど気にもしない性格。およそ針仕事にいそしむ女性のイメージとは、かけ離れている。それがヌビ作家、尹炳玉さん(67)の魅力でもある。

 若いころは、韓国銀行に勤めていた、というキャリアの持ち主。働きながら、趣味で書道や生け花を習ったり、登山に夢中になったりした。「なんでも、のめり込んでしまうタイプ」と言う。

 ソウルの職場を辞して、地方に住む年老いた両親を看取った。その後、人から勧められるままに、韓服の縫い方を学び始めた。韓国語でこれを、「針線」と言う。30代後半のころだった。そして、のめり込んだ。

 1997年に再び上京し、景福宮の伝統工芸工房で、本格的に修行を始めた。無形文化財「針線匠」鄭貞婉さんの弟子である具恵子先生(後に、無形文化財を継承)から、手ほどきを受けた。そのときの体験が、尹さんの土台となっている。

 「丸1年間、日がな一日、工房で過ごしながら、鄭先生の昔語りを聞いたり、針仕事を手伝ったりしました。

 厳しい儒教の戒律のため、女性が男性の体のサイズを測ることは許されない時代、遠目で見ただけで、ぴったりの韓服を縫いあげたという鄭先生の話。伝統の色の豊かさや、閨房の手仕事、食事の作法や料理の話まで、たっぷりと学びました」

 韓服を作りながら、ヌビと出会った。ヌビとは、二枚の布の間に綿を挟み、一定の間隔で縫い合わせる技法。古くから、防寒着として重宝されてきた。僧侶の着る冬服として知られるヌビは、木綿を素材としてどっしり感があるが、明紬という伝統の絹地でしつらえたものは、驚くほど軽くて温かく、なめらかな手触りだ。

 尹さんは、無形文化財ヌビ匠の金海子先生から手ほどきを受けた。そしてソウルの三清洞に工房を開いた。

 8年前、亡父の故郷に近い安東に居を移したのは、儒教の故郷である安東で、伝統的な韓服の再現に取り組もうと考えたからだ。

 好奇心旺盛な尹さんは、染色や刺繍など、他の工芸も次々と学んだが、ヌビと出会ったとき、「これが針仕事の最後に行きつく場所だ」と、悟ったと言う。

 まっすぐの線をチクチクと縫い続ける作業は、まるで修行のよう。「私はだれなのか」「自分はどこから来て、どこへ行くのか」という禅問答を繰り返すように、無心に針を運ぶ。精根こめたその先に出来上がる、究極の衣。ヌビの魅力は、その深さにある。

 しかし現代人は、面倒な手仕事に興味を持とうとしないことが、尹さんの不満だ。しかも、若い世代が好む韓服が、伝統の形からかけ離れていく現状にも、心安らかではない。伝統の線が持つ、美しさと調和。その良さを失ってはいけないと、尹さんは思う。

 尹さんは以前、大阪でヌビのワークショップを催したことがある。日本人や在日コリアンたちが、熱心にヌビを習う姿を見て、もしかしたらヌビの後継者は、日本にいるのかもしれない、と思い始めた。継承していく人を育てたい。そんな思いで、今後は日本での展示に力を注ぎたいと考えている。

戸田郁子(作家)

(2017.1.25 民団新聞)
 
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