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サラム賛歌<27>再会して実感 血肉の情
高校の社会科教師
朴来新さん


 全羅北道益山市の高校で社会科を教える朴来新さん(56)は、中国黒竜江省尚志市のことを、まるで自分の故郷のように語る。

 尚志は省都ハルビンから、車で2時間ほど。朴さんが初めて訪れた10年前は、道路事情が悪くて4時間余りかかった。

 朴さんは勤務先の女子高と、尚志にある朝鮮族学校との交流プログラムで、2カ月間、韓国の学生を連れて滞在したのだ。

 「ここは観光地ではないが、朝鮮族の暮らしや歴史を知ることのできる場所。韓国の学生にとっても、良い経験になる」

 尚志朝鮮族学校は、黒竜江における朝鮮族の教育基地として、70年の歴史を誇っている。

 学校同士の交流は、すでに2001年から始まっていた。尚志から益山にやって来る朝鮮族の先生方を、朴さんはいつも歓待した。そして初めて訪れた尚志で、朴さんは熱烈な歓迎を受けた。

 それから10年。この冬、私が朴さんと共に尚志を訪れると、大勢の先生方が手ぐすね引いて待っていた。

 宴会席で度数の強い中国の白酒がコップに注がれ、乾杯、乾杯の連続。朝鮮族学校の校長先生まで、年上の朴さんのことを「兄さん」と呼んで慕っている。朴さんはとても嬉しそうに、夜更けまで皆と、酒を酌み交わしていた。

 実は、朴さんが中国朝鮮族に格別の親しみを感じるのには、わけがある。

 写真を見ていただきたい。後ろは、益山生まれの朴さん。前は、中国延辺朝鮮族自治州延吉市生まれの李愛淑さん(62)。遠く離れて生まれ育ったが、二人はとてもよく似ている。四寸(いとこ)同士なのだ。

 朴さんは母から、終戦前に母の兄が学徒兵として引っ張られたと聞いていた。朝鮮戦争のときには、その兄がなぜか、中国人民軍の軍服を着て故郷に現れたと聞いた。しかしその後、消息は途絶えた。

 1988年のソウルオリンピックのころ、郡庁から朴さんの母の元に、問い合わせがあった。中国で肉親を探している人がいるという。延吉に住む李愛淑さんの父、李祥昊氏が手紙を書いたのだ。

 韓中国交正常化前だが、朝鮮族の親戚訪問が始まっていた時期だった。40年近い断絶を経て、朴さんの母は兄と再会した。

 翌年、伯父は延吉の家族を引き連れて、益山にやって来た。当時、新婚の朴さんは、母と同居していた。そこに5人の見知らぬ親戚が現れて、一カ月余りを共に暮らした。血肉の情を実感する日々だった。

 伯父は娘にも、なぜ故郷に戻らず延辺に住んだかを、決して語らなかったという。日本軍に引っ張られ、その後、共産軍に入った人だ。文化大革命で大きな傷を受け、政治的な迫害を恐れたのだろうと、私は想像する。

 朴さんの母も、兄を探せなかった。韓国は反共国家で、「パルゲンイ(アカ)」と接触することは許されなかったのだ。

 つらい離散を経て、嬉しい再会があったことは、大きな幸いだった。朴さんは朝鮮族との縁を大切にして、新しい出会いを楽しんでいるのだ。

 この冬中国で、朴さんと李愛淑さんは久しぶりに再会した。二人のふくよかな手もまた、不思議なほどそっくりだった。

戸田郁子(作家)

(2017.3.8 民団新聞)
 
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