地方本部 HP 記事検索
特集 | 社会・地域 | 同胞生活 | 本国関係 | スポーツ | 韓国エンタメ | 文化・芸能 | 生活相談Q&A | 本部・支部
Home > ニュース > コラム
訪ねてみたい韓国の駅<10>長項線 青所
駅舎は登録文化財305号。駐車場ではブドウを栽培している
タイムスリップできる駅
80年代そのままのような青所の街並み


 ソウルの電鉄区間はここ10年で地方へ大きく拡大した。議政府〜ソウル〜水原間約68キロだった1号線は、今や160キロを超える長大系統となり、忠清南道の長項線新昌駅まで延びている。スクリーンドアが完備されたソウルの駅では、モニターにソン・ガンホ主演の最新映画「タクシー運転手」の予告編が流れていた。

 一方、新昌駅から先の長項線は、徐々に懐かしい汽車旅の香りを帯びてくる。機関車が牽引する豪華特急「セマウル」が今も運行されている路線はここだけ。新城駅からは単線となり、速度を落としてガタゴト走り始めた。新昌駅から40分、列車がタイムスリップしたかのようだ。

4本だけが停車

 その先に、青所(チョンソ)駅がある。1日15往復のうち、4本しか停車しない、小さな簡易駅だ。朝8時過ぎ、下り一番列車である「ムグンファ号」で訪れた。

 列車が去ると、狭いホームの向こうに、青く彩られたレンガ造りの駅舎があった。ほんの数年前まで、韓国のあちこちで見られた光景だ。

 風通しの良い待合室には、数人の男性が座っていた。聞けば、線路の雑草刈りをする作業員だという。

 駅事務室から出てきた職員が、「お茶が入りましたよ」と男性たちを促す。青所駅唯一の駅員だ。作業員たちは、まず駅員から1杯のお茶を振る舞われてから、1日の仕事に取りかかるのだ。

 駅正面にまわってみた。切妻屋根を組み合わせ、玄関の上に庇を設けた20世紀初頭の典型的な韓国式駅舎だ。日本によって建てられたのだろうと思ったが、説明板によれば1961年築。長項線に現存する最も古い駅舎という。

 1日の利用客は20人ほどというので、寂しい駅前を想像していたが、コンビニや役場の支所もあるしっかりした集落だ。駅前通りには平屋建ての古い商店が並び、看板の書体も古めかしい。まるで1980年代の町に迷い込んだようである。

 一軒の食堂が、「朝食あります」という看板を出していた。ここで朝食にしよう。

 店内には、女将さんと近所の常連客が2人いた。

 「おや、わざわざ日本から。この集落にも、日本の方が住んでいるのよ。食事はヘジャンククでいい?」

 外の看板にはカルビと書かれていたが、店内のメニューには内臓系の鍋料理が3つしかない。ほとんど常連しか来ないので、これで事足りるのだろう。と、メニューの横に貼られた、ソン・ガンホのサインが目に入った。

あの映画の舞台だ!

 「そうそう、去年ここで映画の撮影があったのよ。『タクシー運転手』っていってね。ついこの前、公開になったはずよ」

 ソウルの電鉄駅で見かけたばかりの最新映画は、この集落で撮影されたらしい。不思議な縁である。

 「1980年の光州って設定でね。ここ青所は40年間何も変わってないから、撮影地に選ばれたのよ。うちでご飯を食べてくれて、あれを撮ってくれたの」 CVV shop

 女将さんが指さした先には、壁一面に掲げられた大きな子どもの写真があった。

 「孫よ。一生の思い出ね」

 ソウルに戻り「タクシー運転手」を鑑賞した。青所駅前は、確かにほとんどそのままの姿で「1980年の光州市」として登場していた。いつまでも残してほしい駅と町の風景だ。

栗原景(フォトライター)

(2017.8.15 民団新聞)
 
最も多く読まれているニュース
新しい地平切り拓く若手在日同胞...
「在日」のあなたに…いま何をしているか朴沙羅 神戸大学・大学院国際文化学研究科講師◆これまでの生き方・現在の研究テーマ...
済州に「在日村」構想…在日3世...
次世代教育の場願い 済州島の魅力をまるごと語らうシンポジウムが12月17日、東京・千代田区の在日韓国YMCA9階国際ホールであった。...
韓日友好どう進める…日本与野党...
 今年は「韓日共同宣言」から20周年の節目の年に当たる。昨年秋には、韓日の民間組織が共同申請していた朝鮮通信使がユネスコの世界記憶遺...
その他のコラムニュース
民団は何をめざすのか<下-...
就任要件すべて緩和が筋「青年・学生」「地方」焦眉の課題◆国籍条項開放、根強い拒否感 民団が在日同胞の大統合に踏み切った。そして、...
訪ねてみたい韓国の駅<23...
スキー競技と観光の玄関口 いよいよ平昌オリンピックが開幕した。この週末は、人気種目の1つである、スキージャンプ・ラージヒル個人が...
民団は何をめざすのか<下-...
闘いが変化生んだ…多様化した社会に対応へ韓国籍への執着 筆者もその一人であるが、韓国籍に対する執着は尋常でない。当...

MINDAN All Rights Reserved.