掲載日 : [18-08-20] 照会数 : 12962
民団中央本部人権擁護委員会 国連に代表団を派遣
8月16日と17日、国連の人種差別撤廃委員会による日本政府への報告審査が実施された。
民団中央本部の人権擁護委員会は、同委員会への情報提供として、「在日コリアンへの差別に関する報告書」を2018年7月に提出しており、審査に際し、3名の委員を派遣、情報提供活動に努めていた。
人種差別撤廃委員会の審査は、事前に提出されている政府報告書をもとに、18人からなる委員(委員は個人の資格で任務を遂行する専門家)と、政府代表団とのあいだの質疑応答を通じて進められる。
前回の2014年8月に実施された人種差別撤廃委員会の審査では、ヘイトスピーチ、人種差別禁止法の不在、公務就任権、外国人の無年金問題等日本国内における様々な人種差別の問題が指摘されていたが、特に2016年のヘイトスピーチ対策法(解消法)成立後の状況について、同委員会がどのような反応を示すかが注目されていた。
8月16日の審査では、冒頭に日本政府審査の報告者を務めるボスート委員(ベルギー)から現状報告があり、人種差別禁止法の不在、外国人地方参政権、公務就任権、ヘイトスピーチ等の様々な問題に言及がなされた。
また、ヘイトスピーチの問題の専門家であるマルガン委員(スペイン)からは、なぜ日本 にはヘイトクライム法が存在しないのか、在日コリアンであることを公表している警察官や裁判官はいるのか、ヘイトスピーチ対策法はヘイトスピーチに対する制裁を定めておらず人種差別撤廃条約4条の義務を果たしていないのではないか、等の鋭い指摘がなされた。
また、カリツァイ委員(グアテマラ)からは、なぜ外国人地方参政権を認めないのか、外国籍教員が教頭や校長になれないのはなぜか等の質問が出された。
その他の委員からも在日コリアンの直面する人権課題に対して数多くの質問・指摘が出された。
これに対して日本政府は、ヘイトスピーチに関しては、「留保を撤回し、人種差別思想の流布等に対し、正当な言論までも不当に萎縮させる危険を冒してまで処罰立法措置をとることを検討しなければならないほど、現在の日本が人種差別思想の流布や人種差別の扇動が行われている状況にあるとは考えていない」と回答したほか、
憲法14条や既存の法令があるため包括的差別禁止法の制定は必要ない、外国人地方参政権に対しては1995年の最高裁判決に基づき国会の判断に委ねられている、外国人の公務就任権には「当然の法理」に基づく制約がある、といった従来の日本政府の対応を繰り返し説明するに留まった。
委員会は8月30日に、今回の審査を踏まえた最終所見を公表する予定であり、最終所見には日本政府に対する厳しい勧告が盛り込まれることが望まれる。
今後も民団では、日本の人種差別に関する諸政策が、国際人権基準に適ったものになるよう運動を進めていく。