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【神奈川】特定の人種や民族などへの憎悪をあおるヘイトスピーチの規制に絡み、川崎市(福田紀彦市長)は9日、市立公園や公民館などの公共施設の利用を制限する際の可否を判断するガイドライン(指針)を公表した。これはヘイトスピーチを規制する全国初の指針となる。
指針によれば、公的施設の利用に関して「不当な差別的言動の行われるおそれが客観的な事実に照らして具体的に認められる場合」は、「警告」「条件付き許可」「不許可」「許可の取り消し」ができるとした。
そのうえで、憲法が定める「表現の自由」の制約にならないよう「不許可」と「許可取り消し」については、他の利用者に著しく迷惑を及ぼす危険が明白な場合にのみ可能としており、恣意的な判断や正当な表現行為への規制を避けるため、市が設置する第三者機関に事前に意見を求めることを義務づけた。2018年3月末までに施行する。
同市内では13年から一部の確信的人種差別主義者が特定の民族を攻撃するヘイトデモを繰り返しており、すでに14回を数えた。ネットを通じても差別をあおっており、特定の人物を標的に直接脅迫する電話や手紙も届いている。
これに対して市民団体「『ヘイトスピーチを許さない』かわさき市民ネットワーク」が16年1月から人種差別撤廃条例の早期制定を求める要請行動を行ってきた。
■□ <寄稿>「事前要件再検討を」…師岡康子弁護士
「市民の安全と尊厳を守る」ため、地方公共団体が責任をもってヘイトスピーチを「制度的に防止」すべくつくられたものであり、高く評価したい。今後全国のガイドラインづくりのモデルとなるだろう。
ただ、ガイドラインでは「不当な差別的言動の行われるおそれが客観的な事実に照らして具体的に認められる場合」(言動要件)のほかに、「その者等に施設を利用させると他の利用者に著しく迷惑を及ぼす危険のあることが客観的な事実に照らして明白な場合」との迷惑要件が必要とされている。
ヘイトスピーチの被害は、その言動が直接発せられている瞬間に限定されるものではない。日常的に不安にさらされ、自らのアイデンティティーを攻撃されずに地域の一員として平穏に暮らす人格権が脅かされる。
また、小さな会議室で行われる場合でも、インターネット上の生中継か、少なくともユーチューブなどの動画サイトへの投稿が行われることが通常だから、市民がネット上でヘイトスピーチに遭遇して人格権が侵害され、差別が広がる危険性がある。特に、民間施設でなく公共施設でヘイトスピーチが行われることにより、公的機関が差別を容認しているとなり、被害当事者に孤立感、社会への絶望感と恐怖をもたらす。
当ガイドラインはヘイトスピーチ解消法に基づくものと位置付けられているのだから、解消法の認定するこのような重大な害悪を防ぐ目的に照らし、言動要件があれば利用制限すべきであり、迷惑要件は削除すべきである。
2016年12月の川崎市人権施策推進協議会の意見にもあるように、ヘイトスピーチ対策を含めた人種差別撤廃条例を早急に整備することが不可欠である。
本来、公共施設の利用制限は、人種差別撤廃条例の中の一部として位置付けられることが望ましい。差別の深刻な被害があるのだから、人種差別撤廃条例制定の具体的スケジュールを示してほしい。
(2017.11.15 民団新聞) |
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