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父がなくなり、財産相続の問題で不測の事態に直面し、頭をかかえています。実は、父には日本にいる私たち家族以外に、韓国にも奥さんと子どもがいたようなのです。父が残した財産はすべて日本にありますが、韓国の奥さんと子どもも父の財産の相続人になれるのでしょうか。
【回答】
ご質問のような相続の問題については、被相続人つまりお父様の国籍に連なる韓国法が適用されます。本事例においては、お父様の日本における配偶者、つまりあなたのお母様のほかに、韓国においても配偶者と子どもがいるとのことですので、重婚をキーワードに説明を進めていきます。重婚とは、前の婚姻関係が残っているのに、重ねて後の婚姻関係が成立してしまうことを言います。ある一方と婚姻関係が成立し、その婚姻について離婚が成立していないのに、他方との婚姻が成立すると、重婚になります。
まず、お父様の韓日両国における婚姻が重婚にあたらないケースを想定します。本事例が重婚にあたらない場合、韓国での婚姻は、なんらその効力に問題がないことになりますので、韓国の配偶者と子どもは当然、法定相続人になります。
次に、お父様の日韓両国における婚姻が重婚にあたるケースです。重婚状態にある場合はこれを理由に、後婚が婚姻の取消事由となります。
韓国の民法上、重婚の場合、当事者、その配偶者、直系血族、四親等以内の傍系血族、検事が取消権者として後婚を取り消すことができる旨が定められています(韓国民法818条前段)。したがって、お父様が先に婚姻されたのがあなたのお母様なのであれば、婚姻の取消請求を行うことができます。
ただし、韓国大審院判例1996年12月23日判決は、「民法第824条は、“婚姻の取消の効力は既往に遡及しない”と規定しているにすぎず、財産相続等に関し遡及効を認める別途の規定がないところ、婚姻中の夫婦の一方が死亡し、相手方が配偶者として亡人の財産の相続を受けた後にその婚姻が取り消されたという事情のみで、その前になされた相続関係が遡及して無効と言ったり、または、その相続財産が法律上原因なく取得したものとみることはできない」と判示しています。
また、上記のとおり婚姻の取消の効力は既往に遡及しない(韓国民法824条)ため、重婚における後婚において出生した子は、婚姻中の子となります。
以上の韓国民法上の取扱いからすると、お父様の韓国での婚姻に対し婚姻取消の請求をしたとしても、韓国における配偶者と子どもも、相続人になります。
したがって、本事例は重婚にあたるケースであったとしても、そうでないケースだとしても、あなたのほかに韓国の配偶者と子どもも相続人として手続きを進めることになります。 |
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