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ヘイトスピーチ対策法施行1年…じわり機能発揮
街頭ビジョン「DHC Channe1」を使った東京都の啓発映像(渋谷区内)
川崎で講演する師岡康子弁護士
 「不当な差別的言動は許されない」とする「ヘイトスピーチ対策法」が施行されてから3日で1年が経過した。各NGOは3日に東京、4日は川崎市内で市民集会を開き、この1年間の国と自治体の取り組みを検証した。報告によれば罰則規定のない理念法とはいえ、日本で初めての「反人種差別法」はじわり機能を発揮していることがわかった。取り組みがどこまで進んだのか、今後の課題も含めてまとめた。

東京都も啓発街頭ビジョン

 東京の渋谷ハチ公前スクランブル交差点。街頭ビジョン「DHC Channel」に法務省動画「ヘイトスピーチ、許さない」(30秒版)が映し出された。現場は1回の青信号で2000人、多いときで3000人が通り過ぎるという。東京都が2日から8日まで実施した。「ヘイトスピーチはあってはならないこと。解消の必要性について都民に周知し、その理解を深める」ためだ。

 行政情報や公共交通情報などを都民に提供している新宿駅西口広場大型デジタルサイネージでも、同様の動画を放映している。こちらは15日まで14日間の予定。近くの4号街路デジタルサイネージでも静止画を放映し、都営地下鉄各駅で法務省作成の啓発ポスターを張りだした。

条例化めざす自治体広がる

 「対策法」第5条2項には全国の地方公共団体に対し、相談窓口の設置、差別的言動に関する紛争の防止または解決を図ることができるような体制整備、啓発活動を求めてきた。一部では成果をあげつつある。以下の地方は「成功例」といえよう。

 大阪市は「対策法」に先立つ2016年1月15日、全国に先駆けてヘイトスピーチ抑止条例を制定。1日、悪質なYouTube上の動画についてGoogleに削除を要請、Google側もこれに応じた。

 神奈川県川崎市は4月28日、公共施設の利用制限に向けたガイドラインの骨子を発表した。6月中には成案にこぎつけ、パブリックコメントを経て秋には確定の予定。

 愛知県では16年5月、知事自ら「ヘイトスピーチを行う団体には県の施設を貸さない」と明言。これを受けて県民生活部、県営の各施設が内規の利用要領で定める審査基準に「不当な差別的言動が行われるおそれがあるもの」を不許可とする条項を含めるよう各部署に要請した。名古屋市でも3月、市議会で自民党市議の質問に対し、副市長が「条例制定に向け課題の整理に取り組んでいく」と答弁した。

 東京都江戸川区でも区の公園・緑地の占用基準に、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律2条に規定する『本邦外出身者に対する不当な差別的言動』を行うときには占用を許可しない」と記載した。

 京都府は16年9月に府人権教育・啓発施策推進懇話会内にヘイトスピーチ対策に関する専門委員会を設置し、3月までに3回開催した。公共施設の利用制限も前向きに検討中という。

 神戸市は市議会日韓友好市議連盟(吉田謙治会長)が議員提案による市条例制定を検討しており、5月15日に初めての勉強会を実施した。今年度内の成立をめざしている。

省庁横断的な基本計画必要

 白川靖浩警察庁官房審議官は4月13日の参議院法務委員会席上、「対策法」施行後の右派系市民グループによるデモは約30件と明らかにした。「前年同期のデモ件数60件と比べれば減少が見られる」という。一方、届け出が不要な街宣については警察庁が把握していないだけで「それほど減っていない」とされる。

 川崎市桜本地区については、裁判所が近隣での差別をあおるデモや街宣を禁じる仮処分を決定した。市内の団体職員、崔江以子さんは「法により私たちの週末が守られた」と、ヘイトスピーチがしにくい社会になっていることを歓迎した。

 しかし、ネットやSNSによる匿名を隠れみのとした「死ね」「殺せ」といった個人を標的としたへイトスピーチはいまだに「何10万」を数える。一部削除されてきているとはいえ、それ以上に増え続けているのが実情だ。崔さんは「対策法は一定の効果はあったが、確信的に差別をする人間がなくなったわけではない。ヘイトスピーチの根絶には至っていない」と嘆く。

 4日、川崎市中原区で開かれた市民集会「川崎市に人種差別撤廃条例の早期制定を求める市民の集い」で講演した師岡康子弁護士は、「法務省は少ない人数で頑張っているが、ヘイトスピーチや人種差別に国レベル、または日本政府全体としてみたとき、どう取り組むのか、省庁横断的な基本方針・計画がない」と指摘している。

 その具体的な例として国家公安委員会と警察庁による「カウンター」への対処が各地ごとに違うことを挙げた。「対策法が浸透していないのは明らか。全国的に個別の警察官への研修が必要」と訴える。

 師岡弁護士は「国は2020年までに差別のない『人権大国』をつくると言っている。差別を止め、国民の意識を変えていくためにもまずは人種差別撤廃基本法をつくれ」と強調した。

(2017.6.14 民団新聞)
 
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