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<読書>イグナチオの鐘…魅する日本文化 俳句で発信 |
タイトルにある東京・四谷にある聖イグナチオ教会の鐘は、戦後ドイツから贈られたものだ。武器を溶かして作られたという。人の生命を奪った武器が、平和を祈る鐘に姿を変えた。同じくドイツから贈られた鐘に、広島の平和記念聖堂の鐘がある。
ソウル生まれの著者が、東京に住んで半世紀が過ぎた。韓国の文化を日本で幅広く紹介しながら、その一方で茶道や華道、墨絵など、自身が魅せられた日本文化を、韓国をはじめ世界に向けて発信している。
中でも「17文字に込められた小宇宙」と著者が形容する俳句の世界には、ひときわ思い入れが強い。茶道の先生から勧められて出会ったが、本格的に学ぶ前から松尾芭蕉のファンだったというのも運命的な縁だろう。
仕事柄、世界各国を回ってきたが、一番素敵な季節は東京の春。住まいがある四谷界隈の桜に格別の美を感じている。そのほか行く先々、ナザレの旅宿の月光や、ワイキキの夕焼け、マサチューセッツの冬木立ちなどを書き留め、130編の句とそれにまつわる様々な思い出を本書に収めた。旅人の日記のようなメモが、俳人ならではの美しい風景の描写になって、読者の旅情をかき立てる。
「鮎好きの夫の記憶梅雨近し」。亡き夫を想い創作した一句に情景が浮かぶ。
尹得漢著 ライフコム出版 1000円+税 03(5652)7955
(2017.4.26 民団新聞) |
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