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<読書>生命の詩人・尹東柱…「序詩」誕生の秘密明かす |
副題に『空と風と星と詩』誕生の秘蹟とある。著者はNHKディレクターだった1995年当時、戦後50年の企画として韓国KBSと国民的詩人・尹東柱を題材にドキュメンタリーを制作した。その後の取材等も含めて、詩人の人間性や文学性に新たに光を当てたのが本書である。
「死ぬ日まで空を仰ぎ一点の恥辱なきことを」で始まる「序詩」の強烈な印象は、見た者の感性をとらえて離さない。20代の頃から尹東柱の詩に魅せられた著者は、「序詩」を含む詩集『空と風と星と詩』が、もとは『病院』だったことや、「序詩」が詩集完成後に加筆されたことを疑問に思ってきた。
しかし、その背景には英語の言葉「MORTAL(限りある命を生きる)」があること、詩人の内面世界に聖書の影響があることに気づかされた。英国勤務中の40代だった。死の淵にいた民族を、より高い生命の次元へと昇華させることに懸けた人生を顕彰させたいと思った。
今年は尹東柱生誕100年。中国、北韓、韓国、日本へたどった越境の詩人は、27歳の若さで福岡刑務所で獄死した。生前1冊の詩集も出せなかったが、毎年命日の頃には、ゆかりの地である東京、京都、福岡などで、韓国よりも盛んに追悼行事が催される。人々の心の中に生き続ける詩人になった。
多胡吉郎著 影書房 1900円+税 03(6902)2645
(2017.4.26 民団新聞) |
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