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朝鮮通信使関連資料未来への遺産に…公開、保存どうする |
| 「記憶遺産」登録を祝う「朝鮮通信使日韓文化交流祝祭」(福岡) | ユネスコ登録は出発点 関係者に聞く
「朝鮮通信使に関する記録」が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界の記憶」に登録されることが10月30日に決まった。これは世界的に重要な記録物への認識を高め、保護やアクセスを促進することを目的とした事業だ。これまで登録に努力してきた関係者に喜びの声とともに未来の遺産としてどう次代に伝えて行くのかを聞いた。
■□ 各地で特別展を…仲尾宏さん
どうして登録に値するものなのかを一般に公開することで韓国と日本の市民、そして在日に知ってもらうことがこれから大事になる。
資料を保管している各地の博物館、美術館、自治体で「特別展」を行うなどして登録の意味を取り上げてほしい。京都の高麗美術館では来年4月から世界記憶遺産登録記念特別展「京・近江朝鮮通信使」を準備している。ぜひ、観覧する市民から意見を聞きたいものだ。
ただし、絵として描かれたものは痛んでしまうだけに巡回展示は難しいだろう。
(ユネスコ記憶遺産日本学術委員会元委員長)
■□ 史実知らせよう…遠藤靖夫さん
私たちの会は朝鮮通信使の善隣友好の精神を今に生かすため日本人、韓国人、在日韓国人が一緒になって2年に一度、朝鮮通信使の幟を掲げ、朝鮮通信使の道であるソウル‐東京を一緒になって歩いています。朝鮮通信使が来日して400年目の2007年からはじめ、今春に第6次を終えました。
当初は「朝鮮通信使? なんですか、それ」と聞かれるほど、知名度は限りなくゼロに近いと言ってもいいほどでした。それがいまは「記憶遺産」に登録されたのだからこのウオークをやってきてよかった。登録実現に少しでも寄与できたかなと一緒に歩いた仲間と喜んでいます。
多くの人に朝鮮通信使の史実をもっと詳しく学んでほしいと思う。この日韓共通の財産をテーマにして様々なイベントや交流行事、文化事業などが展開されることを望みたい。(21世紀朝鮮通信使友情ウオークの会会長)
■□ 善隣友好を宝に…金両基さん
朝鮮通信使の歴史・文化がユネスコの世界遺産になった。これは隣国が約265年間善隣友好を築いてきた韓日共有の宝で、世界でも稀有である。
徳川家康は秀吉の侵略戦争で断交していた朝鮮王朝と国交回復を発進し、朝鮮王朝から松雲大師を代表とする探賊使が派遣され、1605年伏見城で家康公と会い、1607年回答兼刷還使(朝鮮通信使)として朝鮮と江戸を往還したことに始まる。回答とは家康の国書への回答であり、刷還とは連れて行かれた自国民を取り戻すということである。
朝鮮王朝と江戸幕府つまり韓日両国が構築した世界に誇れるこの善隣友好の宝を活性化し、共生時代造りに活用したい。駿府城に大御所として君臨した家康公は、1607年の第1回使節団を駿府城に招き歓待したが、静岡でも忘れられていた。
この素晴らしい歴史遺産を、静岡で蘇生するのに30年かかった。私は一貫して本国と定住国の2国を意識し在日として進めてきただけに、辛さを忘れて喜びを満喫している。(比較文化学者)
■□ これから正念場…阿比留正臣さん
登録決定は釜山文化財団から知らせがありました。朝起きて家族みんなに最初に教え、ハイタッチしました。嬉しい気持ちと、ホッとした感じ。
ユネスコ2次審査のことは事前に知っていましたし、申請した事務局長として記憶遺産に登録されることには自信がありました。それは申請題材である朝鮮通信使が「平和」をテーマにしたものであること。また、「日韓共同」という多国間での申請であったこと。そして申請資料すべてが貴重で美しく、後世に残すべき重要なものであったからです。
今回の登録は「新たなスタート」になります。通信使遺産の伝承、保存、発掘および広報活動は加速力を増し、これからの重要な仕事になることでしょう。(ユネスコ記憶遺産日本側推進部会元事務局長)
(2017.11.15 民団新聞) |
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