民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
新千年の夢と希望、同胞とともに
民族・人権・共生…21世紀に対備を

辛容祥・民団中央団長新年辞



地方参政権結実へ今一度総力結集
2002W杯成功へ韓日の“架け橋”を担おう

在日本大韓民国民団
中央本部団長 辛容祥

親愛なる在日同胞のみなさん!

 2000年の元旦を迎え、在日同胞のみなさんに謹んで新春のご挨拶を申し上げます。

 2000年代の始まりの年である今年は、雲雨を起こすと言われる辰年です。まさに大業をなす予感にあふれていると言えるでしょう。1年の計は元旦にありの格言にならって、新1000年の夢と希望を在日同胞のみなさんとわかち合いたいと思います。

 一つ目は、在日同胞が日本社会で「共生・共栄・共創」していくための権利である地方参政権の獲得です。みなさんもご承知の通り、昨年、自民、自由、公明3党の連立与党の合意により、地方参政権法案が日本の国会で成立するのも時間の問題となりました。

 地方参政権が獲得できれば、私たちの次世代、子孫たちがこの日本で、今以上に韓国人として自らの出自を明らかにし、主体性を堅持しながら、地域社会の中で異文化交流の担い手として役割を果たすのはもちろん、韓日の架け橋として両国の友好、親善のために活躍する機会が広がっていきます。

 苦難の歴史に翻弄されながらも在日同胞社会の基礎を築いた一世から責任世代の二世へ、そして共生社会を体現する三世、四世の時代へと代を継いで在日同胞社会が存続するために、在日同胞が日本社会で見えない存在から積極的に日本社会へ参与する存在へと転換を図るために、地方参政権を一日も早く勝ち取りましょう。在日同胞に対する日本の制度の壁、いわれなき心の壁が早くなくなるように、地域住民として日本の繁栄に貢献する地方参政権の立法化へ向けて、私たちの総意で今一度、足並みそろえて前進しましょう。


親愛なる在日同胞のみなさん!

 二つ目は、2年後の韓日共催サッカーワールドカップ(W杯)です。史上初の韓日共催という「天の啓示」は、W杯を単なるスポーツ行事にとどめるのではなく、日本国民の象徴である天皇の訪韓とあわせ、韓日間に真のパートナーシップをもたらし、官民一体となった交流をベースにした両国の協調によるアジアの発展、ひいては世界平和に寄与することを望んでいると言えます。

 世界の耳目は刻一刻と極東アジアの二国に集まってくることでしょう。

 2000年という新しい年は、W杯共催を成功させるという共通認識を両国国民に深化させるのにふさわしい年です。

 昨年12月にサッカーの日本組織委員会が民団の代表を特別顧問に推戴したのも、在日同胞こそが韓国と日本の事情に精通し、その立場を充分に発揮してW杯を成功に導くことができると期待をかけているからにほかなりません。

 金大中大統領の歴史的な訪日を大きな契機に、韓日両国は日毎に友好関係を揺るぎないものにしています。大統領自ら「観光韓国」をアピールしたことも追い風となり、昨年夏には初めて、韓国への旅行客がこれまでのトップだったハワイを抜きました。これは両国が近くて近い、一衣帯水の関係であることが市民レベルでも現実のものになった証拠です。

 さらに、韓国での日本の大衆文化の開放を機に、日本でも韓国文化が紹介され始め、若い世代を中心に互いの文化や存在を素直に認め合う気運が高まりつつあります。その良好な関係をより広範囲に展開していくのが、在日同胞に課せられた役割であり、最高の見せ場がW杯ではないでしょうか。W杯成功の鍵を握る立場にあると自負して、今年は開催自治体のある各民団地方本部はもとより全国単位で共催成功の雰囲気づくりから具体的に着手していきましょう。


親愛なる在日同胞のみなさん!

 三つ目に、同胞社会の安定と繁栄の屋台骨となっている民族金融機関の統合・再編が焦眉の課題としてあげられます。

 「六・二五以来の最大の国難」にあった韓国もIMF体制の管理下から脱し、経済危機克服の宣言を発しました。それは「国民の政府」が財閥の解体をはじめとした思い切った経済政策を断行した結果であり、やればできるという「韓国の底力」の表れであります。

 かつての「銀行神話」が書き換えられていく現在の日本で、銀行よりも規模の小さい、在日同胞の実情に則した信用組合の生き残りをかけて、私たち在日同胞もこれまでの既得権や目先の小さな利潤にこだわるのではなく、民団、商工会議所、金融機関の三位一体の体制で大同団結を図り、韓国人の底力をもってこの苦境を必ずや乗り切っていきましょう。


親愛なる在日同胞のみなさん!

 今や在日同胞社会は日本生まれの二・三世が舵取りをする時代へと移り変わってきました。国籍イコール民族という図式ではくくれないほど、多種多様な在日同胞の形態があり、その分だけ価値観が多様化しています。

 日進月歩の情報通信革命が、ライフスタイルの国際化に拍車をかけています。

 世界の移民史の中でも類例のない、自国の国籍を保持してきたことの意味は大切ですが、今後は韓国籍の同胞だけでなく、在日同胞として権益擁護を追求する立場にある朝鮮総連との対話と交流を進めるほか、韓半島にルーツをもつ在日同胞の横のネットワークを積極的に広げたいと思います。

 民団は創団以来、在日同胞の権益擁護運動をはじめ、常に同胞とともにありました。今も全国津々浦々で在日同胞が地方参政権運動を推し進めています。地方参政権運動を提唱した団長として、この場をお借りして全国の民団の指導者並びに在日同胞のみなさん、さらには金大中大統領をはじめ本国要路の一致した尽力に対して感謝を述べたいと思います。

 民団は五十有余年にわたるこれまでの輝かしい歴史を土台に、今後も21世紀の時流に合った在日同胞社会の青写真を同胞の前にきちんと提示し、同胞一人ひとりがこの世に生まれたことを誇り、活力のある人生を送ることができるよう奉仕する団体であります。


親愛なる在日同胞のみなさん!

 今年は来る21世紀に備え、民団としても新しい世紀に対応できる団体としてどうあるべきかを真剣に考える年になります。目前に迫った地方参政権獲得やW杯の成功に向けて在日同胞を牽引できる新しいリーダーのもと、日本に根をおろした在日同胞の総体として自らの主体を明確にし、自立した存在として韓日両国に「民族・人権・共生」の崇高な理想を掲げ、「在日同胞とともにある」生活者団体として向上していきましょう。

 2000年という同時代を生きる在日同胞のみなさん一人ひとりに、夢と希望がかなう年になることを祈りながら、新春のお慶びといたします。

(2000.01.01 民団新聞)



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