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新春対談・民団団長−駐日大使

「2000年の在日同胞社会を見る」



2000年の在日同胞社会にいて語り合う
辛容祥団長(左)と金大使(右)

 新しい1000年が始まる2000年の新年を迎え、民団中央本部の辛容祥団長と駐日韓国大使館の金ソッキュ大使は、新春対談を行い、地方参政権獲得運動や民族金融機関の問題、在日同胞社会の和合について意見を交換した。今年中に立法化されることが確実視される地方参政権問題では、大使館が橋渡し役になりながら民団と韓国政府の一体となった努力を継続することを確認した。また、民族金融機関の問題に関連して、辛団長は政府の抜本的な施策を求め、在日同胞社会の和合で金大使は、本国に先駆けて民団が朝鮮総連に対して「包容政策」を実施するよう促した。

■地方参政権、同胞と本国一体で早期実現

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地方参政権の展望
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本国の支援で勇気…辛団長
"総理決断"の段階…金大使

◇団長
 明けましておめでとうございます。

◆大使
 新しい1000年のお慶びを申し上げます。

◇団長
 昨年は私たち在日同胞の問題でいろいろとご配慮いただき、大使を通して本国政府が私たちに対して格別の理解を示して下さり、支援して下さったことに感謝いたします。

 今、私たちが最も強く要望しているのが地方参政権です。1日も早く立法化されなければならないのですが、大使はどのように展望していますか。

◆大使
 地方参政権は本当に全在日同胞の望みであるだけでなく、韓国政府としても最も力点をおいて成し遂げたいと思っている課題です。現在、地方では相当数の自治体が永住韓国人の地方参政権を支持しています。民団が全国的に活発に活動したおかげで野党が法案を提出しており、その過程で自民・自由・公明の3党が連立政権を構成し、政策として立案しようと合意までしている状態ではありませんか。

 金大中大統領も98年10月に訪日し、国会演説で在日同胞に地方参政権を与えるべきだと述べ、小渕総理がソウルを訪問した際や機会ある度に強調してきました。韓国政府と民団が一つになり、これだけはどうにか今世紀が終わる前に成し遂げたいと願っています。ところが、ご存知のように日本の臨時国会では採択されずに次の通常国会に持ち越されました。

 自民党内で意見が割れているようですね。大使館では日韓議員連盟及び日韓親善協会などを通じて、私たちの声をもう少し大きくしようという考えもあります。自民党内では地方参政権問題を現在14項目に分けて検討しており、この検討結果を元に総理の決断を得ようとする過程にあるようです。

 どのくらい時間がかかるかわかりませんが、時間を短縮させるためには、民団と政府、大使館、在日同胞が一つになって努力していくべきだと思います。

◇団長
 ありがとうございます。在日同胞が地方参政権を獲得するための周辺環境を造成するため、韓国政府は日本の一部反対議員が主張する「相互主義」の問題を解決しようと、韓国に在住している外国人に対しても地方選挙権を付与する法律案を提出するということを行政自治部長官から聞きましたが、その後の進展はどうでしょうか。今期の国会で通過するのでしょうか。

◆大使
 昨年の国会では法案提出はされていませんが、関係部署で積極的に検討しており、このことについては心配しなくてもいいと思います。

 先進国になるためにはそのような基本的な権利、実は韓国には定住外国人は多くないのですが、法的整備はしようと大統領からも指摘されています。

◇団長
 外交部が私たちの窓口ですから、これを早期に国会で通過させるように努力して下さるよう重ねてお願いいたします。

 法が通過すれば、2004年から実施するようですが、以前に行政自治部を訪れた時、法が通過したらすぐに実施するようにした方がいい、なぜ先延ばしする必要があるのか、と注文をしたことがあります。行政自治部では法案が通過すれば、即刻施行すると言っていましたが…。

◆大使
 そうですか。私もそのような方向に行くのが望ましいと思います。参政権問題に関しては、団長も私もほとんど同じ考えだと思えばいいでしょう。


辛団長

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同胞金融機関の問題
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抜本的施策が必要…辛団長
全同胞一丸で再編…金大使

◇団長
 私たちの最も重要な問題は、私たち在日同胞の民族金融機関です。金融機関がよくなってこそ、在日同胞の生活が安定しますが、在日同胞の企業は零細企業が多く、また在日同胞は日本の金融機関から融資が受けにくいという特殊な事情があります。

 この特殊な事情を勘案され、零細企業を生かすことに政府からもいろいろと協助を頂きたいのですが、昨年末のニュースを見ますと、韓国の外貨保有高が七百億ドル以上になり、これまでで最高の保有高だそうです。まだIMFの影響で困難な状況は続いていますが、在日同胞の民族金融機関のために高度な政治判断に基づいて、抜本的な施策を講じてほしいのですが…。

◆大使
 日本の多くの信用組合も困難を強いられています。在日同胞の信用組合だけの問題ではなく、日本の金融機関すべての問題です。信用組合の統廃合の問題もあり、多くの論議もある中で、全ての民族金融機関が良くなるよう願う気持ちは政府としても同じです。

 政府としては民族金融機関が育成され、健全化され、全ての同胞の経済活動の土台となることを願う気持ちには変わりありません。そのような問題が少しでも具体化され、何らかの計画あるいはアイディア、プロジェクトなどができましたら、先に専門家たちが実現性などを研究した上で、全同胞の名前で、あるいは団長が直接政府や関係機関を訪れて本国の方に話をされたらどうですか。

 大使館としても民団などと実情を詳しく意見交換しながら民族金融機関発展のためにお互いに力を合わすべきだと思います。

 本国の外貨保有高は確かに増えました。このようになるまでには、在日同胞の努力も大きかったと思います。この場を借りて感謝の言葉を申し上げます。


■2・3世、さらに成長する21世紀に
 本国に先駆け同胞の和合実現

金大使

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在日同胞社会の和合
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総連との対話拡大…辛団長
民団も包容政策を…金大使

◇団長
 もう一つ、私たちが苦心しているのが朝総連のことです。総連と民団がどのように対話し、和合するかということですが、2000年には必ず本国の統一に先がけて日本で和合と対話をするため新しい覚悟で臨むつもりでいます。

◆大使
 とても良い考えですね。韓国政府は北韓に対して、いかなる挑発も許さないし、決して北韓を吸収統一もしません。多方面の交流を通じて私たちが和解と和合を摸索するという三原則があることを先ず申し上げます。それと共に包容政策を一貫して推進し、民間企業の北韓での事業活動や金剛山観光事業、スポーツや芸能人の往来など、このような一連の交流と和解、和合のための措置を講じています。

 しかし、日本社会で苦難を共にし、同じ立場にある朝総連と民団が分かれている状態については、民団が先に朝総連に対して包容的な態度をとるのが良いのではないかと思います。毎年朝鮮籍同胞から相当数が韓国籍を取り、あるいは日本国籍を取得しているという状態にあります。

 そのような過程において民団が朝鮮籍同胞を暖かく迎え入れることを希望します。

 またそのような民団の活動展開において何か支援になるのであれば、いろいろ南北関係の動向などについて民団に資料を送るなり協力していくつもりです。

◇団長
 今年が在日同胞一人ひとりと民団の飛躍的な発展の年になるよう大使の新春メッセージをお願いいたします。

◆大使
 日本社会で尊敬され、経済的にも安定した在日同胞社会になってほしいということをまず申し上げます。また何よりも強調したいのは、今日まで同胞社会を引っ張り、民団を立派な組織として育てあげた一世の皆さまに本当に心から敬意を表します。このような精神を受け継ぎ、二世や三世も自分が韓国人であることを忘れず、国語を習い、韓国文化も知り、また韓国を訪問し多くの本国の人と触れ合ってほしいのです。

 21世紀には二世と三世がさらに成長することと、今よりもっと立派な組織として民団が成長することを願います。新しい1000年を迎え、同胞の皆さまの健康と全ての同胞の家庭に幸福がありますようお祈りいたします。

◇団長
 ありがとうございます。大使にとっても意義深い2000年になることをお祈りいたします。本国に対しては、在日同胞の実情がよくわかるよう広報していただきたいと思います。本国の政治家や公務員のほとんどが米国で勉強した人たちで、在日同胞のことをよくわかっていません。

 大使から政府の機関を通して在日同胞の真の姿を知らせるのに努力して下さるようお願いいたします。

(2000.01.01 民団新聞)



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