民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
2000年、新時代迎えた民団の展望



次代を担う青年層の活性化が大きな課題だ
(写真は昨年10月の青年会2000フェスタ)

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組織局
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意識調査で要望把握
朝鮮総連との交流も拡大へ

 三世以下の世代が40%以上を占める一方、意識の多様化が進む中にあって、21世紀の豊かな同胞社会に向けた基盤を作りあげる1年としなければならない。

 まずは、本団が推進している各種事業の基礎となる団員の実態を正確に把握することが必要だ。団員の皆さんが今現在、どこに住み、何をしているのかを再調査し、正確な名簿を揃えることがすべての事業に優先される。

 名簿をコンピュータに完全入力し、団員サービスに活用していく。例えば、学校入学時の案内や成人式のお祝い、敬老会への案内をはじめ、領事業務の事務処理の簡素化など、団員の皆さんに対するサービスは数多く実施できる。

 第二には、同胞に対する幅広い意識調査を実施し、今後の組織活動に対し同胞がどのような要望を持っているかを把握する。世代別、年齢別、性別にどのような意識を持っているのかを調査し、将来の組織運営の基礎資料として活用していきたい。

 一世は祖国・民族・統一といえば条件反射的に集結したが、今や主流になりつつある三世世代は意識も相当に変化してきており、同胞社会の世代交代に合わせた組織活動が望まれている。

 昨年、四十周年を迎えた北送事業や朝鮮総連との交流について、民団は具体的な対応策を講じる時期にきている。

 北韓の深刻な食糧事情は一朝一夕に解決する見通しにはなく、北送同胞も塗炭の苦しみに喘いでいると伝えられる。中国に脱出し救いの手を待つ北送同胞もかなりいると聞いている。

 このような人たちに、同胞として、またもとは同じ在日同士として具体的な支援の手を差しのべていきたい。

 朝鮮総連とは94年以来各地で交流を積み重ねてきたが、ここ2年ほどは朝鮮総連中央の指示によって残念ながら交流のパイプが狭まっている。今年からは、より大胆に交流を図っていきたい。

 青年会は、昨年10月に福岡で行った「2000フェスタ」を契機に活性化の兆しが出てきた。

 同胞社会を受け継いでいくのは、何といっても青年層である。民団にとって緊急の課題となっている青年会の活性化に多角的に取り組んでいきたい。

 今年は、特に組織基盤を固め朝鮮総連との交流を拡大していきたい。


地方参政権実現に向け、
民団は日本の与野党議員に
要望を展開しづけた

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国際局
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地方自治体選挙権の立法化
次期国会で実現期す

 昨年、本団の地方参政権獲得運動は実現に向け大きな前進をみた。大きなトピックスを3つあげれば、(1)8月に日本国会で地方選挙権の法案が審議された(2)9月に韓国政府が在韓定住外国人に地方選挙権を付与する方針を決定した(3)10月に自自公3党連立与党が永住外国人に地方選挙権を付与することで合意した―である。

 いずれも本団のこの間のたゆみない運動が実を結んできたもので、有力政党の国対委員長が述べたように、「歴史的意義があり、高く評価できる」ものである。

 2000年代を迎え、本団では次期通常国会での早期法制化の実現に全力を尽くす。言うまでもなく、地方自治体参政権は、在日韓国人の半世紀以上にわたる住民としての権利を確保するために必要不可欠である。そのためにも自民党が遅延させることなく最終調整を行い、与党三党が共同で修正法案を次期国会に提出するよう求めていく。

 この間の本団の地方参政権獲得運動の浸透によって、すでに次の五つの合意(コンセンサス)を得ていることを確認しておきたい。

 (1)同胞間の合意(80%以上)(2)司法の合意(最高裁の合憲判決)(3)地方自治体の住民認知と地方参政権の法制化を国に求める意見書採択(1428議会)(4)日本社会の世論調査(賛同65.6%)(5)各政党の付与合意―がそれである。

 後は「国会での法制化」という最終合意だけである。最近、一部反対派は国籍至上主義を唱え、遺憾にも露骨な外国人危険論を展開している。

 これは、在日韓国人の半世紀以上にわたる住民としての生活歴と、日本社会の繁栄への応分の貢献を無視したものである。帰化しなければ駄目だという暴論は、最高裁判決を尊重すれば出てこないものだ。

 最高裁判決は、地方自治体参政権は国政とは異なり、永住者である外国人であれば付与しても違憲ではないとした。つまり地域に深く関わっている住民である永住者であれば、地方自治体については帰化を要しないというものだ。

 不当な差別のない21世紀の基盤づくりのため、本団は、韓日共同宣言にあるように、「日韓両国民の相互交流、相互理解の架け橋としての役割を担う」共生者として、今後一層日本社会の発展に寄与できるよう、草の根の親善活動に努力していきたい。


昨年も各地で開催された
オリニのサマーキャンプ

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文教局
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民族大学の充実図る
母国修学は環境整備へ

 日本社会で韓民族の一員として生きていく意志と、それを支える自己確立を育むと同時に地域住民として主体となりうる民族教育のあり方が検討されなくてはならない。

 この観点からまず、民族意識の確立に効果的な民族学校に対する支援を継続する一方、民族社会教育事業の拡充もめざす。中央民族教育委員会で検討された多様な方案の具体化に着手する。

 二つ目に、民族の内なる魅力を再認識する学びの場、講座制民族大学「コリアン・アカデミー」の充実を図る。講師陣の協力をもとに、東京、大阪の常設化を神奈川、愛知へと広げていく。昨年から試みた同胞過疎地方での方法を通じて、より多くの地方での開設を進めていく。また、現在行われている韓国語講習を並行開催しながら多様なニーズに対応する。受講できなかった人への対策として、これまで蓄積されてきた講座内容を書籍として発行する。

 三つ目に、世代に応じた多様な民族社会教育事業を体系的に推進する。

 民族的自覚は幼少の時から、家庭、地域の中で自然な形で育まれる状況が望ましい。都市化と分散居住する同胞社会の中で「土曜学校」方式は着実に定着化してきた。日本の公立学校における民族学級、国際学級とともに全国化を図る。土曜学校のカリキュラムの一環として、既に幅広く実施されている「臨海林間学校」を活用すればより効果的になる。特に、本国での開催はオリニに感動を与えており、全国レベルの開催も視野に入れて研究を進める。さらに韓国で開設している中・高・大学生対象の夏季・春季学校に結びつけることが可能となれば、地域に根ざした後継者の育成に大きな力を発揮する。

 このような事業が、子弟の健やかな成長を願う保護者との関わりを通じて開催できれば、民族教育と同時に地域同胞社会の活性化にもつながる。

 四つ目に、民族的自覚の確立に最も効果的な母国修学生制度の充実を図る。直接的な指導と育成にあたる韓国教育部・国際教育振興院との協力態勢と、昨年再建された母国修学生会の育成を通じて、より修学しやすい環境を整える。

 五つ目に、在日の祭りとして定着した「10月のマダン」の積極開催があげられる。異文化共生の実践場所として日本の地域祭りを活用するだけでなく、民族教育と民族文化の発表の場として活用していきたい。


多くの団員の要望にこたえて
開催されているブライダルパーティ

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民生局
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民族金融機関強化を
ブライダル情報の提供も

◆民族金融機関の健全化

 今年4月からは信用組合の監督官庁が金融監督庁に移行され、金融再編も大詰めを迎える。

 民団としては99年に韓信協総会が打ち出した広域・ブロック毎の再編動向を重視していく。特に破綻後、事業譲渡先が未決の組合に対して早急に解決の道を導き出すよう要請する必要がある。

 民団は韓国系信用組合の設立に主導的な役割を果たした。そして組合員の殆どが団員であることを踏まえれば、民族金融機関の健全化を求めるのは当然のことであり、また責任もある。同胞社会の血脈としての民族金融機関としての役割が果たせるように関係機関に積極的に働きかけ、また緊密な連絡体制を構築して推進する。


◆戦後補償と慰霊事業

 未だ解決されていない戦後補償問題は、強制連行被害者などの高齢化を考えると早急に解決されなければならない。ここ数年の関連訴訟では、主文では棄却されたものの付言で国に強く解決を求めている。また昨年3月の野中官房長官(当時)の「今世紀のことは今世紀中に解決を」の発言から傷痍軍人・軍属に対する1時金支給の特別立法立案に着手した。

 民団では、この特別立法を日本人と同等の年金支給やこれまでの補償を1時金として支給を求め、当事者が納得できる解決策を求めていく。また、供託金名簿の公開、及び未払い賃金の返還も併せて求めていく。

 このような資料の公開をはじめ、各地の強制連行現場の保存整備も行う必要がある。不幸な歴史を共有した韓日両国にとって真実を明確にする視点が重要だからだ。


◆ブライダル事業の拡充

 同事業に民団が組織的に参与して6年目に入る今年は「出会いの場」であるイベントの地方・地協単位での開催を定着させる。企画・運営のモデルを積極的に提供し、日程調整や有機的な地方間の連携に向けて推進委員会を設置する。

 また、懸案であったプライバシーを考慮した登録者情報を掲載した冊子を発刊し、適齢者同士のネットワーク作りを模索していく。


◆求人ネットワーク構築

 日本社会の長引く不況により在日同胞の就職難は深刻化している。97年から始めた就職説明会を充実させるとともに関係機関と連携のもと登録制人材バンクを設置し、数少ない企業のニーズにあった人材を紹介できる体制を構築していく。

(2000.01.01 民団新聞)



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