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単刀直入の韓国人が魅力
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渡日した母が体験した苦労
今度は私が韓国で
◆元々はデザイナー志望
在日同胞三世が母国の地で女優になった。間もなく韓国全国で封切られる映画「絵日記」のヒロインで、在日同胞役を演じた、金裕美さん(22・東京都武蔵野市)だ。
小平市出身の裕美さんは、建築デザイナーをめざして武蔵野美術短大に入学した。映画鑑賞が好きな裕美さんは「俳優」に興味を持ち、大学時代の2年間、サークルで演劇活動を続けた。
「どういうわけか小学生のころから学芸会などでは主役に選ばれることが多かったんです。私も緊張という経験をしたことがないんです」。
こんな娘の素質を見抜いたのは母親だった。今回、女優デビューとなった「絵日記」のオーディションも、実は母親が勝手に申し込んだ。
◆チャレンジ精神
「言葉のハンディとかあって最初は絶対無理だと思い拒んだのですけど、オーディションにチャレンジすることだけでも人生の体験になると思い受けたんです」。
映画監督界の巨匠である高ヨンナム監督が裕美さんの素質を見抜き、ヒロインに抜擢した。
韓国での芸名「ヒロミ」も高監督から命名された。
昨年6月に韓国入りした裕美さんは一人で下宿生活を続け、ウリマルを学ぶため延世大・語学堂に通いながら、映画活動を続けた。
韓国で生活をして半年余り。もっとも悩んだのは言葉のギャップだ。
「もっと正確に気持ちを伝えられるようにウリマルをマスターしたい。そうすればもっともっと楽しそうだから」。
裕美さんはクランクアップしたあとも、そのまま韓国に滞在することを決意した。
◆同胞の友人作りたい
父が民団の役員を務めていることもあり、大学時代も学生会の行事などには積極的に参加していた。
母からもつねに「韓国人としてのプライドを持てる人間になりなさい」と言われ続けてきた。
「本国の人はうち解けて仲良くなると、ものすごく親しんでくれるし、何事もざっくばらんになる。でもこんな韓国の人のほうが私の性格には合うし、とても楽しい」。
映画撮りのため韓国入りした時、一番最初に仲良くなった事務所の子から「日本に偏見を持っていたが裕美と話をしてそれが少しずつ消えた」と言われた。
「日本でなく韓国で女優になることに魅力を感じた。だって、一からスタートするから、吸収する事がとても多いんです。在日同胞だって韓国でがんばれるという見本を作りたいですから」。
裕美さんの母は韓国生まれで在日二世の父に嫁いできた、いわゆる本国人妻だ。言葉のハンディや文化の違いなど、様々な苦労を重ねてきた母親。今度は逆に自分が韓国で体験することになった。
「母から見ればまだまだでしょうが、母親の大切さと偉大さが何倍もわかりました」。
◆韓国を愛したい
「韓国で女優活動をすることになったのは、天が与えた使命だととらえたい。自分に負けずに楽しく過ごし、韓国をもっともっと好きになりたい」。
2002年には世界最大のスポーツイベントであるサッカーのワールドカップが韓国と日本で開催される。
「ぜひ、2002年W杯では通訳ボランティアなど、両国の架け橋的な役割として参与したい」。
「ヒロミ」の「絵日記」はこれからが本当の始まりだ。
(2000.01.01 民団新聞)
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