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2002年W杯まで2年

動き始めた韓日
寄稿・慎武宏



寄稿・慎武宏(スポーツライター)

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アジアのプライド、世界に示せ

 アジアの"プライド"を世界に示すとき2002年W杯がいよいよ動き出した。昨年は公式ロゴマーク、大会マスコットが発表され、12月7日には史上最多198カ国・地域がエントリーする大陸別予選抽選会が行われた。こうした高まるW杯ムードの中で、韓日は着実に接近。

 韓国サッカー界も大きなうねりをあげて動き出した。今年、"アジアの虎"の新しいミレニアムが幕を開ける。


■韓日サッカー、新時代の到来

 2002年サッカーW杯まで、いよいよあと2年。アジア初にして21世紀最初のW杯を史上初めて共同開催することになった韓国と日本は今、世界のサッカーファンから託された最高のスポーツイベントを成功させるべく、急接近している。

 両国の政府首脳は2002年を韓日交流元年とし、それぞれの大会組織委員会は月に一度は会合を持つほど。マスメディアの交流も盛んになりつつあり、韓日サッカー記者シンポジウムも計画されている。

 私自身も昨年8回の韓国サッカー取材を行ったが、現場に足を運ぶたびに韓日の距離が縮まっていることを実感させられた。

 例えば昨年8月、韓国のW杯開催10都市をすべて訪れたが、どの地方自治体も韓日少年サッカー交流などに積極的で、すでに実施している都市もあった。全10都市で新築中のスタジアム工事の進行具合は平均33%。経済不況による遅れを取り戻そうと、急ピッチで工事が進められている。

 一昨年から芽生えたサポーター同士の交流も続いており、昨年9月の韓日五輪代表壮行試合前にはインターネットでエール交換も。試合会場で中田英寿のファンだと名乗る韓国人や、Kリーグ観戦が趣味だという日本人ファンと出会ったのも一度や二度ではなかった。

 しかし、もっとも急接近しているのは、両国の選手たちかもしれない。韓国五輪代表の選手たちが「アジア最終予選では日本と戦いたい」と語れば、日本五輪代表の某選手も「望むところ。韓国に勝ってこそアジア最強になれる」とし、双方ともに対戦を熱望した。それは、過去の因縁や遺恨から来るものではなく、お互いをライバルだと認め、さらなる飛躍を渇望しているからこそ出た言葉だったような気がする。言うなれば、純粋たる挑戦心。韓日サッカー界は今、お互いを尊重して切磋琢磨する、<競争共生>の時代を迎えつつあるのだ。


■加速する韓国サッカー改革

 ただ、韓日サッカー新時代の幕開けとなった99年は、韓国サッカー界にとって厳しい1年でもあった。

 日本がワールドユース準優勝に輝く一方で、韓国は二大会連続予選リーグ敗退を喫し、韓日五輪壮行試合でもまさかの二連敗。この結果だけで、「韓国サッカーの未来は暗い」と危機感を募らせる人も多かった。

 しかし、私は韓国サッカーの未来を悲観してはいない。確かに韓国はサッカーインフラが未熟で、選手育成システムなどにも問題を抱えているが、構造改革は着実に進んでいるのである。

 大韓蹴球協会は、伝統の少数精鋭主義から脱皮し、底辺拡大に取り組もうとしている。これまでは学校体育が基本で、指導者教育も徹底されず、一部エリートたちをスパルタ教育で鍛える選手育成を行ってきたが、国内プロリーグのKリーグを中心に、本格的クラブ・システムの導入を急いでいるのだ。

 政府も協力的で、2002年までに全国200カ所の公営運動場を天然芝フィールドにすることを約束。金大中大統領も鄭夢準会長ら協会首脳たちと直接会談の場を持つなど、サッカー改革に理解を示している。

 極めつけは、一昨年夏から活況を呈するKリーグだ。一時の低迷から人気回復したKリーグは、李東国、安貞桓、高宗秀ら新世代スターたちの活躍で賑わい、観客動員数は好調を維持している。

 彼らの活躍でKリーグを志す選手が増え、多くのKリーガーたちが世界進出を視野に入れて日夜レベルアップに励んでいる。国内プロリーグの活性化は、韓国サッカーの発展をさらに加速させるはずだ。


世界中が熱狂するFIFAワールドカップ
(写真は98年のフランス大会で優勝し
ワールドカップを高々と掲げるフランス代表)

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着実に広がるサポーター交流
韓日サッカー、「競争共生」の次代に

■アジアサッカーの21世紀に

 もちろん、2002年W杯への具体的な強化も進められている。

 協会は昨年、W杯支援団というプロジェクトチームを設立。韓国サッカー界の人力と英知を結集して、代表チーム強化を推し進めていくことを決めた。12月には「2002年W杯代表候補50人」を発表。平均年齢23・7歳の若き精鋭たちは今年、9月にシドニー五輪、10月にアジアカップを戦うが、その挑戦の過程で流す汗は、かならずや2002年へとつながるであろう。

 1954年W杯での初出場以来、韓国はアジア最多の五度のW杯を経験した。が、0勝4分10敗と未だ1勝も挙げていない。2002年で悲願のW杯一勝とホスト国としての目標である決勝トーナメント進出が達成されたとき、韓国は正真正銘の"アジアの虎"になれるだろう。

 さらに言えば、2002年W杯の成功をキッカケに、韓国にも真のサッカー文化が築かれることになるだろうし、韓国サッカーの発展は日本サッカーの活性化にも結びつく。両国の切磋琢磨はアジアサッカー全体の発展にもつながるはずだ。

 21世紀はアジアサッカーのプライドを世界に示す時代なのだ。そのために韓国、そして日本が動き出している。今度は我々「在日」が動き出す番だ。

(2000.01.01 民団新聞)



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