民団新聞 MINDAN
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わが街、ウリ支部<3>

福岡県・大牟田支部



禹判根・大牟田支部支団長

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福岡県・大牟田支部
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 日本の国策として推進された石炭産業。中でも大牟田の三井三池炭鉱は最大級の炭鉱として有名だ。

 過去、数多くの同胞が居住していたが、現在は同胞数は48世帯と少ない。しかし、大牟田市が地方参政権の付与に関する意見書を採択したのは全国でも三番目。93年12月17日、京都府・市と同時だった。もちろん福岡では一番早く採択された。

 現在、民団大牟田支部をたばねるのは禹判根支団長(62)。二世だ。支部設立草創から民団にかかわり、歴代執行部とともに数多くの成果を挙げてきた。89年の就任時に掲げた目標が(1)徴用犠牲者の慰霊碑建立(2)高齢者・障害者の福祉金(3)先達の慰労―だった。

団員らが苦労して建てた
大牟田支部会館

 大牟田市が採択した地方参政権付与請願は、超スピードの採択だった。93年12月4日に開かれた支団長会議で説明を受けたその夜に市議会議長を訪ね、2週間後の議会で採択された。

 大牟田市の市職員採用時の国籍条項も90年9月に市議会で撤廃された。また、川崎市などで外国人県民会議として実施されている、外国人に対する政治活動参加の決議も採択されている。

 自治体、議会とのつながりは深い。土木業を営む禹支団長だが、市の職員の間では「雨が降ればやって来る団長」と呼ばれている。年間50日ほどは役所や議会を訪問している。選挙に当たっても、キムチを差し入れるなど議員との積極的な交流を図ってきた。これが太いパイプを築いた。

支部の活動方向などを
話し合う役員ら

 大牟田では全国でも珍しく、同胞への漁業権を獲得している。有明海に面し、海苔の養殖、タイラギ貝のセン水漁でそれぞれ15人ずつが認定されている。同胞の権益を拡大するために福岡県庁に座り込み闘争するなど3年かけて交渉した。韓国人漁業組合はできなかったものの日本の組合に加入できる運びになった。いまでも後裔が漁を続けている。

 炭鉱=徴用、強制連行という図式は過去の韓日間の歴史において大きな比重を占める。三池炭鉱で犠牲となった同胞を慰霊するための慰霊碑=写真=は95年、大牟田市を見下ろす県立甘木山公園内に完成した。建立までの長い交渉は筆舌に尽くしがたいものがあったという。紆余曲折の交渉の結果、三井傘下の三企業と行政が資金を拠出した。企業が資金提供した全国でも珍しい慰霊碑となった。

 今、積極的に取り組んでいるのは地域の小中学校での講演活動。在日同胞が置かれている立場や韓日関係などを日本人生徒たちに教えている。青少年たちに韓国を理解してもらいたいからだ。

 歴代の団長たちと連携を取りながら、今日も自治体へ足を運ぶ。


三池炭鉱で犠牲となった
同胞の慰霊碑


◆大牟田の略歴

 1959年3月18日に結成。三井三池炭鉱を擁する大牟田市と高田町を管轄する。解放前は三池炭鉱に数多くの同胞が従事していたが、現在は三池炭鉱も閉山し、48世帯の同胞が居住する。歴史の街として長年、日本行政との交渉が続けられてきた。

(2000.01.01 民団新聞)



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