民団新聞 MINDAN
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日本大衆文化開放から1年

取捨選択に韓国の自信
寄稿・姜誠



韓国でも大人気の
ポケットモンスター

■「倭色侵略」の声消え、歓迎色に

 一昨年10月、金大中大統領によって日本の大衆文化開放の方針が打ち出された直後、ソウルの街角で聞いたのは日本文化流入による過度なジャパナイゼーション(日本化)を警戒する意見が大半を占めていた。

 あれから1年。いまではそのような声はほとんど聞かれない。それどころか、韓日文化交流の進展を歓迎する声も強い。なぜだろうか?

 まず第一にあげたいのは韓国の自信である。日本文化を受容しても、いわゆる倭色に染まってしまうとはだれも考えていない。楽しいもの、自分のライフスタイルにあう日本文化だけをきちんと取捨選択している。

 たとえば「うなぎ」や「HANA―BI」といった日本映画が一昨年末に公開されたが、ヒットしなかった。ところが、昨年11月から封切りとなった岩井俊一監督の「ラブレター」は興行成績ベスト10に食い込む人気ぶりである。

 韓国で大人気の日本マンガもタイ、ベトナムなどアジア諸国で大人気の「ドラえもん」がさっぱり売れない一方で、宮本武蔵の半生を描いた「バガボンド」(井上雄彦作・絵)は熱い支持を集めている。サムライものは豊臣秀吉の"朝鮮征伐"を連想させるため、韓国ではヒットしないというこれまでの定説を覆すものだ。


■新産業育成のチャンスも

 このように韓国の人々、とくに植民地支配を知らない若い世代は日本の大衆文化を相対化して、自らの判断で楽しむ余裕を持ちつつあるように思える。

 ふたつ目は韓日双方とも、大衆文化の交流をこれから大きな成長が見込めるコンテンツビジネス発展のチャンスとして受けとめているという点である。

 文化交流といっても日本の歌舞伎や韓国のパンソリといった古典芸能が行き来するわけではない。実際にはアニメや映像、ゲームソフト、そして音盤といったポップカルチャーが主流となる。こうしたポップカルチャーからは膨大なキャラクターグッズが派生する。

 アニメを例にあげてみよう。たとえば、日本で人気の「ポケットモンスター」のキャラクター・マーチャントダイジング市場は5000億円にも達している。

 規模は劣るが、韓国でもアニメ「ちびっこ恐竜トゥルリ」(金スジョン作・絵)がドイツでテレビ放映されるまでのヒットとなり、その結果、昨年1年間の国内関連商品売上は百億ウオンを超える成功を収めた。

 韓日の文化交流はこうしたコンテンツビジネスの展開において、日本には4700万人の市場拡大、韓国からすればこの種のビジネスに要求される高度なノウハウの習得、さらには新たな産業育成のきっかけになると歓迎されているのだ。


ルポライターの姜誠さん

■自己判断待つ若者

 最後にグローバリゼーションに対応した新たな東アジアのリージョナリズム構築に、韓日文化交流が有用だと人々が気づきはじめている点も指摘しておきたい。

 世界はいま、市場を通じて急速に一体化するとともに、激しい経済競争を強いられている。この競争をコントロールするのは一国では不可能で、EU、北米などは国家間を超えた様々なセーフティネットを張り巡らそうと模索している。

 にもかかわらず、東アジアに目を転じると、この地域の主な国である韓日間にはいまだに自由貿易協定すらないお寒い状況だ。東アジア共生に向けた双方の不信感はまだ払拭されてはいない。

 こうした韓日の現状に風穴を開けるのが、文化交流が醸し出す互いの親近感である。さらに2002年W杯共催がその機運を後押しするはずだ。韓日の若者が岩井俊一監督の「ラブレター」で愛の強さを考え、カン・ジェギュ監督の「シュリ」で民族を語り合うというシーンは想像するだけで楽しい。

 韓日のポップカルチャーが広く両国を流通することで、相互理解の共通のプラットフォームが形成されるのではという期待感がそこにある。

 ただ、現状では韓日間の文化交流は韓国側の入超となっている。韓国産のコンテンツも日本に受け入れらてこその文化交流で、このままの状態が長く続けば、ふたたびジャパナイゼーションとの批判も韓国内で起きかねない。

 こうした事態を打開する上で注目されるのは、韓日間のコラボレィティブ(共作)だ。三星の出資、角川春樹事務所の製作で完成した長編アニメ「アレキサンダー」や、日韓混成アイドルグループ、Y2Kの成功はそのお手本である。

 両国のコラボレィティブがどれだけ進むか、それが韓日文化交流の成否を握るカギとなるだろう。

(2000.01.12 民団新聞)



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