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在日へのメッセージ

吉田健一・時事通信社会部記者



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未来への思いは同じ

 茨城県東海村で起こった原子力施設の臨界事故、京都の小学生殺傷事件、中央省庁のホームページへのハッキング…。

 ここの所、今までの常識では理解し難い事件が続いている。回復の兆しの見えず、いつまでも続く不景気。財政赤字は六百兆円とも言われ、なお急増し続けている。池袋と下関で相次いだ通り魔事件と、全日空機ハイジャック事件の被告は、みな社会への漠然とした敵意を持っており、供述内容は酷似していた。

 戦後続いてきた、経済成長一辺倒のシステムは限界に達し、社会全体がストレスを抱えているのだろう。多くの日本人は、危機感を持ちながらも、どうしていいか分からず悶々としている。

 「在日」の人たちは、世の中について、どのような考えを持っているのだろうか。これまで私は、日本人と「在日」の相違点ばかりに目が行ってきたが、自分たちが暮らす世の中に不満を持ち、子や孫が育つ未来を心配する気持ちは、共通しているはずだ。

 「在日」の人たちには参政権もなく、日本国民と対等な立場に置かれていない。日本国民と「在日」が対等に語れる土俵を作らぬうちに、日本人の私から、在日の人々に何かを求めるというのは、ムシがよすぎるかもしれない。

 そもそも、日本人が求めようが、そうでなかろうが、そんなことは関係なく、世の中をよくしようと努力している有名、無名の「在日」は多くいる。

 満身創痍の現在の日本。今後も明るい見通しがあるわけでもなく、無力感を感じることも多い。しかし、未来を少しでも明るくするためには、社会を構成する一人ひとりが知恵を出し合っていくしかない。日本という国家というより、共に暮らしていく社会をよくしていくために、これまで以上に協力していければと思っている。

 これからの世の中について、まずは話し合う機会を増やしたい。そこに現状を打ち破る突破口があるような気がする。

(2000.02.02 民団新聞)



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