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同胞和合へ母国訪問団推進を



 韓国では対北韓融和政策の一環として、金剛山観光が推進されています。この事業は韓国の一般国民の訪北を可能にした南北和合への第一歩であり、これまでの政権が成し得なかったものです。1000万南北離散家族に親族再会への希望と勇気を与え、同時に祖国の平和統一への重要なステップを踏み出したものとして高く評価されます。


■5万2000人が母国の地踏む

 一方で、同じ民族でありながら、さまざまな事情で故郷の土を踏めない朝鮮総連系同胞にとって韓国は「近くて遠い存在」であるかもしれません。

 民団と韓国政府は、このような総連系同胞に対して、四半世紀前から思想、理念そして過去を問わず、母国を訪問できる道を開きました。まさにイデオロギーを超越した、人道主義的かつ民族和合の意味合いで母国訪問団が行われているのです。

 その間、この母国訪問団に参加した延べ5万2000人の総連系同胞が、母国の発展を実感し、故郷の温かさに触れ、また愛しい肉親との再会を果たしました。

 総連系同胞にとって初めての母国訪問は、それぞれの歩んだ人生の重みによって感じ方も違うようです。植民地時代と戦後、日本社会での韓国・朝鮮人に対する差別と蔑視が嵐のように吹き荒れる中、数々の苦難を力強く乗り越えながら悲しみを胸の内にじっとひそめて耐え忍んだ在日一世世代の経験は、民団系、総連系にかかわらず共通したものでしょう。

 このような過去を背負った一世にとっての母国訪問は、やはり自分が生まれ育った故郷を訪ねることができる喜び、また数10年ぶりに肉親たちと再会できる嬉しさと懐かしさに満ち溢れたものであったことは容易に想像できます。


■全同胞が自由往来できる日まで

 片や、日本で生まれ育った若い世代の母国のとらえかたは、若干違うようです。

 韓国のショッピング、グルメ、ソウルの街並みなどが、日本で連日のように流されている情報と重なって、「画面から抜け出たような感じ」(参加者の1人)と受け取られているのです。彼らはありのままの母国を素直に受け入れています。

 そして何よりも彼らから、たどたどしいウリマルであっても一生懸命話そうという熱意がひしひしと伝わってくるのも嬉しいことです。夜の東大門市場などでもすぐにその雰囲気に慣れ、あっちこっちの店を興味深く回り、何ひとつ気兼ねせず慣れないウリマルで市場のアジュンマを相手に堂々と交渉しています。

 本当に初めて母国に来たのかと、疑いたくなるような気がします。同時に、一世から二世へ、そして三世へと受け継がれたパワフルな気質を目の当たりにし、時代が変わっても変わらないものもあるのだと改めて意を強くします。

 お互いに違う時代を生き、違う人生を歩んだいろいろな世代が、日本全国から母国を訪問するという、総連系同胞対象の母国訪問団。このような出会いの中に総連系同胞が母国を肌で感じる機会と、在日同胞社会の和合への道が隠されているのではないでしょうか。

 昨年、民団は多様な参加者の要求と志向に対して積極的に対処するため、夏季と秋季に分けて、金曜日出発で2泊3日間の母国訪問団を実施しました。

 民団としても、祖国が平和的に統一され、すべての同胞が自由に南北を往来できるその日が来るまで、母国訪問団の推進に全力を尽くしていかなければなりません。

(2000.02.02 民団新聞)



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