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2002W杯対談・金宰淑−小倉純二

韓日の絆、さらに深めよう



「金浦−羽田のシャトル便実現を
期待している」と語る金宰淑副会長

◎対談者◎


金 宰 淑(在日韓国人後援会常任副会長)
小倉純二(日本サッカー協会副会長)


「共催」を契機に「共生」の21世紀に


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2002FIFAW杯の成功願い
韓日の絆さらに深めよう

■金 小倉さんは日本サッカー協会副会長という重責にありながら、昨年12月には日本組織委員会の理事にも就任されましたね。手応えはいかがですか。

■小倉 昨年5月にエンブレム、12月にマスコットが決まったことで、今後W杯に関心を持つ人が増えてくると思います。2002年の6月1日に開幕試合をソウル、6月30日に横浜で決勝戦ということが決まりましたから、大会運営の作業が、今年から具体的に決まっていくでしょう。

■金 21世紀初、共催初ということで、日本に住む私たちとしては、W杯を成功させるのはもちろん、より親密で豊かな韓日関係のために、韓日の架け橋の役割を果たそうとしています。

 韓日双方の事情を理解できる私たちが頑張ってこそ在日の存在が意味あるものになると思うからです。

「韓日サポーターの交流拡大はまさに
共催の産物」と語る小倉純二副会長

■小倉 辛容祥団長が日本組織委員会の特別顧問に就任されたのは、大きな意味がありますね。これで名実共に在日の方々に架け橋の役割をお願いしますということがはっきり証明された、という感じがします。

■金 ところで、韓国は会場建設が遅れるのではないかと、心配していたんですが、2001年の10月頃には完成しそうだと聞いて安心しました。日本の準備状況はいかがですか。

■小倉 日本も埼玉と神戸が遅れてスタートしていますが、2001年の9月か10月頃には完成します。


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親近感増す両国民…金宰淑
文化交流にも期待…小倉純二

■金 埼玉県と言えば、昨年6月にソウルで両国の開催都市の首長が集まる機会があり、民団にもお声がかかりました。全国知事会長の土屋義彦埼玉県知事が、他の国とは首長会議があるのに、一番近い韓国との間でないのはおかしいじゃないかという問題提起を受けたものです。ソウル、釜山、光州市の市長らが参席し、「日韓自治会議設立会」がもたれました。韓国組織委員会の朴世直委員長が提唱しているように、今後は開催都市間にも姉妹提携の関係ができそうですね。

■小倉 自治体の首長さんの会議でもう決まっていますし、昨年12月に仁川の少年選抜対横浜の少年選抜試合が開催できたのも共催の副産物ですよね。

■金 そういう雰囲気が芽生えたところで、それを実のあるものにするためにできるところから意見交換しながら、協力し合っていきましょう。まず考えられるのは、在日同胞は日本語も韓国語もできますから通訳ボランティアとして活動できます。世紀のイベントのために言葉を学びに韓国に留学するという3世も現実にいますので、大いにその力を活用できるのではないでしょうか。

 民団は全国に地方本部、支部がありますから開催地の十地方本部の団長を中心として、いかに地方で共生のための奉仕をしていくか。例えば物産フェアや各地の祭りに伝統文化を紹介することで韓国を身近に感じる企画があってもいいでしょう。そういう心構えはできています。

■小倉 大会中の通訳であるとか、韓国から来られる方の面倒を見ていただくというのはありますよね。


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「在日」の参与…大きな存在
両国の架け橋的役割担う

■金 2002年に向けて韓日間のより一層の理解を深めたいですね。私たちは地域社会の一員として、日本人との共生をスローガンに努力してきました。お互いを知り、お互いの文化を正しく理解するということから始めたいですね。

しめくくりの決勝戦が行われる
「横浜国際総合競技場」

■小倉 これからは両国の開催都市の交流のような形で、サッカーの試合も行われる機会が増えていくでしょう。ぜひお願いしたいと思うのは、そういう時に在日の方に見に来ていただきたいということですね。

 1月22、23日に韓国の19歳以下の代表チームと日本やイタリア、パラグアイの19歳以下の代表チーム四カ国による「ジャパンユースカップ2000」の試合を浦和、大宮で行いましたが、「W杯を成功させよう」という垂れ幕を掲げたことで、共通認識が深められたと思います。

■金 韓日関係はぎくしゃくした場面が多かったのですが、最近は新しい時代を迎えたと受けとめています。昔、韓国で日本語を話すと反日感情を露骨に出してきました。両国民がお互いを嫌うという統計もありました。それが最近は日本から韓国に200万人以上が出かけて行く時代になってきた。まさに「隔世の感」ありです。


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サポーターの交流拡大
"共催"の最大の功績

■小倉 違いを認識し、分かり合えるようになるのが重要ですね。政治の世界だけでなく、草の根の交流が必要でしょうし、共催を契機に「共生」という考えが理解されればいいですね。日本人と韓国人が力を合わせ、韓国人が得意なところ、日本人が得意なところをうまく役割分担して大会が成功できれば、それに越したことはないと思います。

昨年5月に結成された
「在日韓国人後援会」

■金 在日同胞社会も日本で生まれ育った2世、3世の時代です。考え方や生活様式に日本的な要素があるんですね。そういう在日に対して、日本は同化ではなく「共生、共栄」していくという考えで、在日韓国人が日本の社会に貢献していく機会をつくってほしい。

■小倉 共催が決まった後の日本と韓国の試合は、前と比べると大変な変化があります。韓国でフランスのW杯予選があった時に、「一緒にフランスに行こう」という横断幕が出たのには感激しました。昨年もオリンピック予選の親善試合が韓国でありましたが、今度は「ウェルカムジャパン」。応援しているサポーターが一体となり、草の根の交流がすでに始まっているというのが、共催の最大の功績と言えますね。競技場の雰囲気は忘れられません。

■金 昔だったらとても想像もつかない。韓日戦になると韓国が勝たないと大変ですよ。それが今では韓国に中田選手のファンがいたり、日本に李東国選手のファンがいたりする。国籍や勝負にこだわるよりも、「かっこいいものはいい」「スーパープレーには素直に拍手を送る」というスポーツ本来の感動の場面が表れてきたと思います。

■小倉 日本のサッカー協会を通して年間約150チームが海外に出て行く中で、その半分くらいが韓国です。サッカーだけでなく、文化交流などに広がっていけばいいですよね。

■金 最近嬉しい悲鳴と言うのか、私たちも所用で韓国に行くんですが、飛行機の座席を取るのが大変なんですよ。理由を聞いたら、日本人が韓国に気軽に行けるようになったと言うんです。かつてのように、日本人は嫌われるんじゃないかという心配がない。

■小倉 私も経験しています(笑)。共催という明るい面が出てきています。

■金 21世紀という新しい時代には、国家観や民族観が、変わってくると思います。これからは「地球村の住民」としてお互いに協力し合い、お互いに譲り合っていくことを今度のW杯で証明し、21世紀の道しるべになるようにしたいものです。

■小倉 ホスト国の日本と韓国、前回優勝チームのフランスを合わせると198カ国がこの大会に参加します。これは国連の加盟国よりも多い。予測されているだけでも64四試合のテレビの視聴者が延べ400億人と言われています。韓日の試合にそれぞれ200億人もの人が視聴するということは、日本と韓国を世界の人によく知ってもらう絶好のチャンスです。日本と韓国が協力して情報発信すれば、両国のためにも一番役に立つと思います。


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98年のフランスW杯で実現した
韓日共同応援団

金浦−羽田のシャトル便…金宰淑
垣根のないまつりに…小倉純二

■金 ヨーロッパではすでにボーダーレスの時代になってきましたが、アジアでも東京から福岡とか札幌に行くような感覚で今ソウルに行けるわけです。今後はもっと頻繁に往来しなければいけない。羽田とソウルにシャトル便を飛ばすという話があるそうですが、W杯の時だけでなく今後も羽田と金浦はそれぞれの国内線の延長線上にあるというふうになればと思います。札幌に行く、福岡に行くという国内旅行の感覚で、韓日間が羽田とソウルを起点に近づけばいいですね。

■小倉 私たちも急いでミーティングをする時は福岡でやるんですよ。ソウルからも東京からも1時間ちょっとですから。チームも日本と韓国の間を移動しますし、お客さんも好きなチームを追いかけて、釜山から札幌へ移動するとか、期間中頻繁にやるわけです。

 グランドの大きさから日本と韓国で全試合の切符を買って、試合を競技場で見ることができる人が300万人と言われてるんですね。少なくとも3分の1の切符が外国人に売られると、延べ百万人が日本と韓国の間を動くわけですからぜひ実現できるといいですね。

■金 W杯の共催がこんなに素晴らしいんだよと。

■小倉 垣根がなくなっちゃうんだよと。

■金 日本サッカー協会の行動宣言にもあるように、「緑の芝生と一つのボールが人の輪を広げる」ことを21世紀の初めに私たちが証明したいですね。

■小倉 ちょっと心配なのは、韓国人も日本人も真面目ですから、外の人から律儀すぎるというイメージで捉えられているのではないか。W杯というのは、サッカーの4年に1回のお祭りですから、ぜひ楽しい運営に努めたいですね。

(2000.02.02 民団新聞)



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