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横須賀私立小がチョゴリで授業

道徳「国際理解」の時間に教師が活用



浅井教諭(中)にチョゴリを着せてもらい
大喜びする児童(左)=横須賀市立鷹取小

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人権視点に教師が体験

 【神奈川】担任自らチマチョゴリを着て教壇に―。授業では韓服や身近な食文化を通じて韓国に親しみを持たせ、一緒になって「トケビ・チャジュロ(じゃんけん遊び)」を楽しむ。「子どもたちと韓国・朝鮮との豊かな出会いを」願う浅井幸枝教諭=横須賀市立鷹取小学校=のユニークな実践が児童に好評だ。2002年から実施される「総合的な学習の時間」を先取りしたものとなっている。

 浅井教諭の授業実践は同小学校低学年生を対象とした人権教育の年間指導計画に基づいている。今年は1月に行われた。


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児童も韓国に親近感

 教壇に立った浅井教諭が長いコートを脱ぐ。見慣れないチマ・チョゴリ姿に児童から「ギャー」「ウエー」の声が上がった。浅井教諭に「どこの国の着物」「いつ、どんなときに着るの」など好奇心いっぱいの質問を投げかける。子どもたちの疑問があらかた出そろったころ、浅井教諭は一つひとつ謎解きをしていった。

 韓国そのものに親しみを持ってもらおうと用意して置いたキムチを見せたところ、反応はストレートだった。「ぼく、大好き。食べたいよう」との声も。ナムルが給食にも出てくることを例に挙げるなど、韓国が身近な存在であることを強調した。

 この後、教室から学習室に移動、韓国の音楽を聞きながら「トケビ・チャジュロ(じゃんけん遊び)」を夢中になって楽しんだ。

 授業中、子どもたちはノリにのっていた。算数や国語の時間では聞いていなかったり、いたずらしているような子どもたちからも積極的な発言が飛び出した。韓国という国の存在、特にチマ・チョゴリ、「キムチ」「ナムル」が強く印象に残ったようだ。

 日本国籍を持つ在日韓国人の子どもは、チマ・チョゴリを見て、「私も持っている。お誕生日に買ってもらった」とうれしそうに話したという。授業中ずっと笑顔だったことも分かった。浅井教諭は「韓国・朝鮮の文化に触れるという当初の狙いは達成できた」と話している。


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豊かな出会い育む

 鷹取小学校は95年、神奈川県と横須賀市の「道徳教育研究発表校」にあたった。校内で「どんな授業をするか」議論した結果、人権を視点に据えることが決まり、浅井教諭は高学年を対象に4時間かけて「在日外国人(とりわけ韓国・朝鮮人にかかわって)と共に生きる」をテーマに授業した。浅井教諭が在日韓国人問題に正面から取り組んだのは、教員生活30年目にして初めての経験だった。

 学習計画を作るにあたって浅井教諭は家庭教師をしていた学生時代、ある在日韓国人家庭との出会いを思い出した。子どもの母親は日本で「在日」として生きることの困難さを語ってくれた。ちょうど「金嬉老」事件が起きた年のことでもあった。


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同胞子弟には出自の自覚も

 浅井教諭は歴史的事実を通して「正しい豊かな韓国・朝鮮人(人)観」を形成したいと、侵略の歴史、強制連行、韓国人自身の抵抗の歴史を柱に据えた。それも「なぜ、日本にやってきたのか」「なぜ祖国に帰らなかったのか」「(在日韓国人が)現在、置かれている立場」について、子どもたち自身が疑問を感じるよう工夫した。

 授業が終わって間もなく、浅井教諭は生徒から「先生、私にも朝鮮人の血が流れているんだって。おじいちゃんが朝鮮人なんだよ」と思わぬ告白を受けた。

(2000.02.09 民団新聞)



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