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著者に聞く・前田憲二

「百萬人の身世打鈴」



前田憲二監督

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苦難の証言、7年かけ調査

 「弱肉強食」の力の論理が支配した20世紀が、今年で終わる。98年10月に訪日した金大中大統領は、「20世紀に起きたことは、20世紀のうちに解決を」と語った。

 解決しなければならない一つの問題が、戦後補償である。日本当局による強制連行で他郷暮らしを余儀なくされた同胞は、どのような試練にあったのか。歴史の生き証人が亡くなれば、不幸な歴史は風化し、かつての支配者側に都合のいい歪曲が始まる。

 そのような風潮に危機感を抱いた映画監督の前田憲二さん(64)は、植民地支配の犠牲になった同胞や日本人関係者の証言を求めて日本国内と韓国の地を歩き続けた。

 「日本の恥部に蓋をするのではなく、真摯に受け止めた上で対等なつきあいをしたい」からだ。

 7年にもおよぶ聞き取り調査で、集めた証言は126人。映画の完成よりも先に東方出版から発刊されたのが、編著『百萬人の身世打鈴』(5800円+税)である。

 第一章の「かつて日本は朝鮮で何をしたのですか?」から第四章の「なぜわたしたちは提訴しているのか?」まで、654ページには、不遇な時代を生きた重くて確かな同胞の歴史が刻まれている。

 20代後半から日本全国を回り、「日本の祭」というテレビ作品と映画を250本あまり制作した。その時に、「なぜ日本に新羅や高句麗の神社があるのか」と驚き、韓国の文化が古代から日本に入り、日本文化の基礎を築いていたことを知らされた。

 日本人とは何か。20年温めた構想が88年に「神々の履歴書」という作品を生んだ。しかし、そこには近代の民衆の歴史が欠落していたという。

 民衆の中に入って集めた今回の証言を「若い人や女性、未来を生きる子どもたちに読んでほしい」と前田さん。15日には大阪で出版記念会を開く。自主制作の映画は、今年5月の完成を目指し頑張っている。カンパおよび問い合わせは映像ハヌルへ。03(5996)9426。

(2000.02.09 民団新聞)



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