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韓国は「人世に前向き」日本は「将来に悲観」

韓日中高生対象の教育比較調査



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高学歴神話生きる韓国
日本は生活環境に甘え

 何事にも明るく、前向きに立ち向かおうとしている韓国国内の学生に対して、日本人学生はというと将来に悲観的で、ちょっぴり自信なさげ―。韓日両国中・高校生の間には意識面で顕著な格差が見られる。

 これは「韓日教育比較調査」と題して、財団法人日韓文化交流基金(熊谷直博理事長、東京・港区)が、調査研究班(代表・深谷昌志東京誠徳短期大学教授、教育社会学)に委託して調べた。韓国ではソウル、釜山在住の820人を対象にした。日本では東京の574人のほか秋田、静岡、島根の地方都市でも1208人からサンプルを集めた。調査期間は九八、99年の2年間にまたがっている。

 中学生に対しては日常生活の様子、学校生活や友人関係、流行への意識と行動などについて比較した。

 顕著な差が出たのは「自己像について」。自分をポジティブに評価できるかどうかは成長する上で重要な意味を持つとされる。これが、韓国の中学生では「自分なりの意見がある」「精いっぱい生きている」と自分自身を肯定的にとらえていたのが七割に達していたのに対し、日本の中学生では5割にとどまった。

 「生き方」についても、韓国の中学生は「コツコツやれば報われる」「将来のためにがまんする」といった生き方を支持したのに対し、日本の中学生は、どちらかというと「努力」「出世」よりも「要領のよさが大事」「世の中はお金」に重きを置いていた。将来を見据えてコツコツ努力するという生き方には懐疑的な傾向が見られた。

 委託調査研究メンバーは「韓国の中学生のほうが日本の中学生よりも心身とも健康さを保っている」「日本の中学生は何となく疲れ切った生活を送っている。豊かな情報社会が到来し、何不足のない生活環境に慣れた甘えが目に付く」との印象を抱いたという。

 高校生に対しては、高学歴社会という共通の土俵の上で進学意識を比較した。日本は全国的な規模で、韓国はソウル市内の進学校を対象に調査した。

 両国とも高校卒業後の大学進学志望傾向に大きな差は見られない。ただし、難関とされる大学へのチャレンジ精神では差異が出た。

 韓国側が、いまのままでは無理でも「一生懸命勉強したら」「きっと入れる」が47・3%、「なんとかは入れる」まで含めると82・7%と密かな自信をのぞかせていたのに対し、日本側は「一生懸命勉強したら」「きっと入れる」で16・3%、「なんとか入れる」を含めても52・9%でしかなかった。

 韓国ではソウル大学に代表される著名な大学への進学が、社会的に成功する最短コースであり、経済的な豊かさも保障されていると言われる。一方、日本では学歴神話が崩れつつあり、大学を出ただけでは社会的に高い地位も経済的な豊かさも期待できなくなっている。こうした状況を敏感に反映してか、希望の大学に進学できなかった際の対応でも若干の差異が見られた。浪人しても再度チャレンジしたいというのは韓国側が34・7%、日本側は二割に過ぎなかった。

 「将来への見通し」でも韓国の高校生のほうが、日本の高校生よりも全ての項目で比較的バラ色の人生を思い描いていた。特に「一流企業に就職できる」では韓国が49・9%、日本側は15・6%と、意欲格差は歴然としていた。

 学歴社会のひずみをいまだに抱える韓国に対して、一方では学歴がかつてほどの意味をを持たなくなったために、何に頼って将来の人生を設計したらいいのか分からないでいる日本の高校生。皮肉な調査結果といえよう。

(2000.02.23 民団新聞)



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