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在日へのメッセージ

氷室興一(NTV報道局政治部記者)



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在日Lディレクター初作品

 (1)手に職があり、(2)町内会やライオンズクラブなど地元での活動にも熱心、(3)地方参政権について真剣に考えたことがある人――をいま、女性ディレクターが探している。

 入社4年目、ドキュメント班に配属されて〓か半年の弊社の在日ディレクター、L嬢だ。国会で永住外国人地方参政権付与法案が成立する可能性が出てきたのを機会に取材に入る気になった。「在日のためにやるんじゃない。『私たちの住んでいる日本ってこんな国なんだよ』という番組にしたい」、在日社会から距離を置いて暮らしてきた彼女らしい言い方をした。

 「在日らしく在日をやっていない」と自ら語るL嬢の目に在日社会は立ち入りにくい社会と映るらしい。「こっちにヒケメがあるからですかねえ」とつぶやく。

 それでも人づてに取材対象を探し始めたようだ。災害や事件・事故、経済などのニュースは現場や容疑者、記者会見などを撮影すれば内容が伝わる。しかし地方参政権の問題では「投票する在日」という映像を撮れるわけもない。その問題を身を持って語れる「主人公」を探し、その人をカメラで追うことで説明が可能となる。主人公探しは「うまくいけば番組は半分成功したようなもの」と言われほど重要であり、それだけ難しい。同年代の在日に電話取材をしたら「地方参政権?ボク、よく分からないんですよ。それよりも仕事探し、どうにかならないですかねえ」と嘆かれたそうだ。

 「"カリスマ在日"はダメなんですぅ」とL嬢。カリスマ在日とは、既に知名度のある大学教授や弁護士らを指すL嬢の造語だ。「例えば歯医者さんとか。永住外国人って"ガイジン"じゃなくて、私のまわりにもいそうと視聴者に感じさせられる人がいい」と言いながら、冒頭の3条件を提示した。「出来ればシブい中年がいいなあ」とこちらが心配になるほど屈託がない。放送は法案成立のメドがついた頃。「桜が咲く頃には仕上がればいいな」と柔らかめにハッパをかけておいた。

(2000.03.08 民団新聞)



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