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日本人と同等の年金支給を



 「今世紀の問題は今世紀中に解決を」。昨年3月に当時の野中広務官房長官が、旧日本軍の軍人・軍属だった在日韓国・朝鮮人が日本国籍がないことを理由に恩給や年金を受けられない問題に対して、「これまでの経過は経過として人道的、国際的な問題に前向き対処したい」と表明しました。現在、与党自民党で、恩給・年金に代わる措置として、弔慰金や見舞金といった一時金の支給を柱とした議員立法の法案作りに着手しています。

 これは、日本政府がこれまで主張してきた、在日韓国人の戦後補償問題は1965年の請求権協定で「完全且つ最終的に解決した」との見解を維持するためのものと思われますが、戦後55年にしてようやく膠着状況に陥っていたこの問題の解決への糸口となりうる画期的なことであり、遅すぎた感は免れませんが当然の措置として歓迎したいと思います。


■根底は在日同胞除外から

 この「一時金構想」は、昨今の関連訴訟の判決で、原告の請求を棄却しながらも付言や所見で立法府および行政府の早期対応を強く促していた背景から取り組まなければならなかったのも事実です。特に、昨年10月に大阪高裁での判決では高裁レベルとしては初めて国籍による差別は違憲との判断まで示しています。

 そもそもこの問題は、民団が主張してきたように「日韓請求権協定」から在日韓国人が除外されてきたことが原因です。

 また、本来、補償を受けるべき旧軍人・軍属は、日本人として戦場にかり出されたにもかかわらず、戦後半世紀を経過した今日でも、未だに放置されているのはあまりにも理不尽であるとも指摘してきました。当事者の高齢化を考えれば、今回の「一時金構想」はこれまで放置してきたことに見合う処遇で実施されるべきでしょう。

 具体的な補償内容は87年に行った台湾在住元日本軍人・軍属の戦没者遺族および負傷者に対する一時金を念頭に置いていると言われています。

 しかし、当時とは物価の変動、及び長期にわたる精神的な苦痛等を鑑みれば、当然、それ相応の措置でなければなりません。また、日本政府が95年に設置した従軍慰安婦に対する「平和基金」が韓国の当事者から受取拒否されている現実も考慮されなければなりません。


■歴史認識の共有化を

 また、植民地の人々を戦争に動員した結果、補償問題が発生した国は存在しますが、日本のような矛盾をそのままにした国はありません。

 これらを踏まえれば、緊急避難的な一時金支給で果たしていいのでしょうか。本来であれば、同じような処遇にあった日本人と同等の補償を受けるべきでありますが、サンフランシスコ条約の発効に伴い、一方的な日本国籍の離脱によって恩給法・戦傷者戦没者遺族等援護法から除外されています。当然、状況に応じた対応でなければなりません。それと同時に残された余命に対しては日本人と同等の年金支給ができる措置を講じることを強く求めます。

 在日韓国人は、日本社会での「定住」、即ち、地域社会の一員としての「共存・共栄」社会の実現を願っています。その前提となるのが歴史認識の共有化ではないでしょうか。真の歴史の確認・清算するうえでこれ以上の遅滞は許るされません。

 この一時金構想がその試金石となり、来る21世紀は、真のパートナーとしての韓日関係が強固のになることを願います。

(2000.03.08 民団新聞)



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