民団新聞 MINDAN
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在日へのメッセージ

若一光司(作家)



サイサの意味と重さを

 「民族教育」とは、「子どもたちが自民族の歴史や文化を学ぶことで、自らの民族的諸要素を肯定的に捉え、それを人格形成や社会的自立に積極的に生かしていけるよう支援する教育」のことですが、在日コリアンにとって民族教育の原点ともいえるのが、1948年の阪神教育闘争です。

 在日コリアンは、同化政策で奪われた民族の歴史や文化を取り戻すために、終戦直後から全国に600校以上の民族学校を設立しました。

 しかし48年、日本政府はGHQの指令下で民族学校への弾圧を開始。神戸ではこれに抗議した2000人以上のコリアンが無差別的に検挙され、大阪では16歳の少年が警官に射殺されるという惨劇すら起きました。この一連の抗議闘争が「阪神教育闘争」です。

 阪神教育闘争に象徴される弾圧のもとにあっても、在日の子どもたちの民族教育権の保障を願う人々の取り組みは、やがて民族学校や民族学級の再建となって結実し、営々と継続されてきました。

 在日の子どもたちを自覚的な民族主体として育む上で、また、日本の子どもたちの誤った民族観を正す上で、民族教育が果たしてきた役割には特筆すべきものがあります。

 子どもたちの「民族教育を受ける権利」は、国際人権規約や子どもの権利条約等で明確に保障されていますし、国際化への対応を迫られている日本社会において、多文化・多民族共生の基礎条件としての民族教育は重要性を増す一方です。

 しかし、日本政府が今も民族教育否定政策をとり続けていることもあって、戦後補償の一環でもある民族教育権の保障を巡り、まだまだ多くの制度的差別や無理解がはびこっています。

 まもなく52回目の阪神教育闘争記念日(サイサ・4月24日)を迎えるに際し、私が共同代表を務める民族教育ネットワークでも大阪での記念事業を計画していますが、今年もまた新たな思いで、多くの人と、サイサの意味と重さを共有したいと願っています。

(2000.03.15 民団新聞)



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