民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
第53回定期中央委員会

99年度・総括報告



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地方参政権獲得運動

◆統一行動で新たな世論化

 私たちは昨年、地方参政権獲得運動を大きく前進させ、立法化が実現可能な段階にまで進展しました。

 まず昨年10月初旬に、日本の「自・自・公」3党代表が連立政権発足に際する「合意書」で、地方参政権付与を3党が力を合わせて議員立法によって成立させることを約束しました。

 この合意によってまず、今年1月21日、第147回通常国会に公明・自由党が与党として「永住外国人に対する地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権等の付与などに関する法律案」を共同で提出しました。これは実に画期的な出来事です。

 本団は昨年5月、全国団長会議の決議に基づき、全地方団長らと共に日本政府の総理府、自治省、日本衆議院・参議院をはじめ、日本の各政党、友好団体(日韓議員連盟)に対して、地方参政権早期立法化要望活動を展開しました。

 このような統一行動を通じて、日本政府と日本各政党に再度、在日韓国人の参政権に対する熱望と熱意を伝え、立法化の早期実現を訴えることによって、新たな日本世論を喚起させました。

 それだけではなく、本国政府は金大中大統領を先頭に、金鍾泌総理(当時)をはじめ、昨年3月中旬の韓日首脳会談、また、10月の韓日閣僚懇談会等を通じて、日本政府に早期立法化を求めてくれました。

 昨年6月、ソウルで開催した、韓日・日韓親善協会年次総会で地方参政権の早期立法化要求決議文を採択したほか、韓日国会議員等の合同会議(昨年11月初東京で開催)の共同声明で、「両国代表は在日韓国人への地方参政権が新しい世紀を迎える前に実現されるべきだ」と明示したことで、日本国会で立法化が早期成立されるよう、国会議員らが積極努力するという約束を取りつけました。

 このように地方参政権の立法化が具体的な日程として進展したのは、全国各地の民団幹部らが率先して地域自治団体への要望活動を積極展開した努力のたまものと言えるでしょう。

 朝鮮総連の必死の反対活動にもかかわらず、大阪府、千葉県、茨城県をはじめ、55個所(3府県、11市区、34町、7村)の議会が、私たちを支持してくれる等、運動を大きく前進させてきました。

 2000年2月現在、3302の自治体中、1439議会が私たちの要望書に賛同を示してくれています。これは日本全地方議会の44%に達する成果であり、日本国民人口比率では、実に73・3%に達する支持率であり、私たちの参政権を賛成してくれていることを物語っています。さらに、昨年1年間の地方参政権獲得運動の前進を通じた、地方参政権立法化の実現が確信できるようになりました。


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民族金融機関の健全育成

◆足踏み状態続く統合

 私たちの民族金融機関である信用組合が日本の金融改革過程で大きな陣痛を迎えています。一昨年、7信用組合が事業譲渡、または合併せざるをえず、昨年も高知商銀が広島商銀に事業譲渡しました。一部、事業譲渡を約束した信用組合がこれを履行せず、韓信協の決議にもかかわらず、統合・再編が遅々不振の状態となっています。

 日本金融監督機関の業務実態調査が昨年10月からスタートし、今年3月までには一段落することが予想されます。

 現実的に、いくつかの信用組合は事実上倒産直前にあるにもかかわらず、事業を譲渡する側と譲受すべき信用組合の利害関係が弊害となり、順調な統合・再編がなされずにいるのが現状です。

 これに対し、朝鮮総連系信用組合は、ほとんど再編を終え、むしろ日本政府の公的資金投入を受け入れる態勢まで揃えていると知らされています。

 韓信協会員のわが信用組合幹部は、民族金融機関という特殊性に安住せず、また、現実的な利害関係にだけ執着することなく、長い眼目で私たちの子々孫々のための金融機関の存続と育成という観点をもって真摯な努力が要求されます。


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民族教育と10月のマダン

◆民族大学と土曜学校で成果

 まず、民族的社会教育の質的強化と量的拡大に尽力するという方針に沿って、講座制「民族大学」が七地方本部(東京、神奈川、長野、愛知、大阪、兵庫、広島)で成果的に展開されました。

 講師として参与していただいた教授陣の熱意と開催地方本部の全面的協助によって、受講生が約600人に達しました。また「東京コリアン・アカデミー」の韓国語講座は継続して好評展開中です。

 第二に、子どもから青少年までの民族教育に尽力するという方針に沿って、「オリニ土曜学校」が全国で着実に展開され、制度的に定着したばかりでなく、めざましい成果を上げています。

 20地方本部の22カ所、24期にわたって開催され、約900人の同胞子弟が初歩的な韓国語(国語)と韓国の歌などを学びました。

 また、「オリニ臨海・林間学校」が34地方本部、39カ所で展開され、これには同胞の子ども約1000人が参加し、最も初歩的な民族意識自覚の契機を作りました。

 第三に、一般教育部門で韓国語(国語)講習と民族教育50時間履修制を教育院の協助のもと、39地方本部の127カ所、164学級で実施され、在日同胞約2000人が受講しました。

 また文化講習会が42地方本部53カ所で民俗、芸能、テコンド、書道、音楽など、多様な内容で実施され、子どもを含め一般成人約1200人が受講しました。

 このように、民族社会教育部門では地方本部幹部を先頭に、教育院講師の努力と受講生たちの学ぶ熱意によって着実に前進しています。

 昨年度にはわが民族学校も各地方本部幹部と団員の努力によって質的向上され、今年から生徒数が多少増加傾向にあります。

 第四に、私たち同胞の祭典として定着した、「10月のマダン」を一層強化するという方針に沿って活動を展開した結果、26地方本部・33カ所で開催されました。

 参加同胞数は1万4000余人に達し、これは98年度より5地方本部・12カ所の増加であり、同胞参加者数も2000余人増加し、「10月のマダン」は成果的に推進されたと言えるでしょう。


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組織強化活動

◆"学ぶ民団"が定着

 まず昨年度の組織強化方針として「21世紀に備えた民団」を主要スローガンに掲げ、組織研修強化と組織実態調査の着手、そして支部活動強化を目標に活動しました。

 第一に、全地方本部が年2回以上、幹部研修会を実施しました。本団の全般的運動に対する意思統一と行動統一を成し遂げようとの方針に沿って研修活動を展開した結果、前半期には19地方本部が開催、約900人の幹部が参加しました。後半期は21地方本部が開催し、1200人余人が参加、合わせて2100余人の幹部が参加という成果を上げました。

 第二に、2001年には新しい民団の方向を策定できるよう、団員に対する基本調査を中心にした基礎作業に着手するという方針に沿って、調査事業を準備しました。しかし、いわゆる「手形問題」等によって、臨時中央委員会を年2回も開催するという事態が起こり、全団的な推進が困難となりました。2カ年計画で推進する予定だった調査事業が、1年延長せざるをえなくなった事に対し、各地方本部と団員らに深くおわび申し上げます。

 第三に、支部組織活性化のために全国的な支部幹部研修と会議を開催するという方針に沿って、昨年7月末、本国で全国支団長会議を開催しました。支団長を包め、支部幹部250余人が参加し、「支部活動と支団長の役割」を中心とした、内容の濃い研修会と「当面する課題と支部活性化」というテーマで真摯な討議を行いました。

 晩餐会などを通じて、全国各地から参加した支団長らの親睦と紐帯を強化したことはもちろん、青瓦台を礼訪して金大中大統領から心温まる激励を受け、士気高揚への大きな支えになりました。これを通じて、支部活性化へ大きな組織的ステップになりました。

 昨年1年間、「手形問題」などで多少混乱もありましたが、組織幹部研修と支団長会議等を通して着実に組織は前進したと言えます。


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生活向上と便宜提供

◆"出会いの場"が各地方にも

 まず、同胞の若手世代の就職難を少しでも解消し、就業機会を拡充するため、「就業説明会」を東京で開催しました。駐日韓国企業14社、同胞青年約200人が参加するという盛況でした。

 また在日同胞企業が主催した就業説明会を東京、大阪、愛知の3都市で開催し、微力ながら同胞青年等の就業機会を広げる努力をしました。

 第二に、同胞の若い世代たちの結婚問題の深刻性を考える時、できる限り出会いのチャンスと場を用意すべきだという方針に沿って、中央本部が主催のもと、春季と秋季に「ブライダルパーティ旅行」を本国で開催しました。約40人ずつの同胞男女が参加し、13組が結婚を前提とした交際に至りました。

 また昨年から、地方本部と婦人会、青年会、青年商工会などが各地域で自主的に結婚相談のための「イベント」を開催し、大きな成果を上げています。

 婦人会大阪本部(年2回)、在日済州婦人会、民団福岡、民団兵庫、広島青商等が主催した「イベント」には約250組の青年男女が参加して約60組以上のカップルが誕生するなど、成果的な活動を展開しています。

 第三に、在日同胞の戦後補償問題活動として、昨年、野中官房長官(当時)が「20世紀中に起きたことは20世紀中に解決すべきだ」という立場で、在日韓国人の旧軍人軍属に対する「特別法の制定」を示唆しました。

 これに対し民団は、国籍によって在日同胞旧軍人・軍属が援護法や年金法適用から排除されてきたいう点を指摘しました。同問題への支援活動と合わせて「一時金だけで処理する問題ではなく、特別法成立後旧日本軍人・軍属と共に処理すること」を日本政府に要望しました。

 また今年4月から施行される「介護保険」制度を控えて、国民年金法改正時に排除された同胞高齢者らが不利益を被らないよう、日本政府と厚生省に要望書を提出し、今後も継続要望活動を推進していきます。


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宣伝弘報活動

◆TVとネットで広報拡大

 まず機関紙「民団新聞」の10万部態勢確立という方針に沿って、購読者拡充に努力した結果、昨年度より1万部が増加し、2月末現在9万8000部を数え、目標は達成されたと言えます。これによって、名実共に在日同胞社会で最大発行部数を誇る新聞になり、日本社会と本国にも影響力を持つ言論媒体になりました。

 さらに、編集内容面でも本団の最重要運動である地方参政権獲得運動を中心に民族教育、文化活動、2002年ワールドカップ後援活動、自発的な団員たちの活動、韓日親善活動等をタイムリーに報道することで、機関紙として、また、在日同胞紙としての威力を発揮できるようになりました。

 第二に、電波媒体のひとつであるKNTV「在日コリアニュース」と「インターネット・ホームページ」を発展させるという方針に沿ってKNTVの「在日コリアンニュース」の放送時間がこれまでの15分から、昨年からは60分間に拡大され、内容も充実され好評を受けています。

 「インターネットホームページ」もメニューをリニューアルし、昨年1年間で約4件のアクセス数がありました。

 第三に、「民団新聞」の財政自立へ広告収入拡大に努力するという方針に沿って、少ない人員数で試行錯誤してきましたが、大きな成果を上げることができませんでした。直送体制維持のための膨大な費用を考慮した場合、今後、財政自立への収入拡大方案は全団的な課題であり、真摯に対処していかなければなりません。


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いわゆる「手形問題」

◆再発防止へ規定改定へ

 今から7年前に起きた、いわゆる「手形問題」は、故朴鍾氏(当時山口商銀理事長、中央本部常任顧問)と文性煥氏(当時中央本部総務局長)が共謀し、文氏が自分の意志で発行した「手形」を故朴鍾氏が法律を違反してまで山口商銀で割引させ、自己の用途によって使用したという問題でした。

 事実上、「調査委員会」の調査結果を見ても、民団中央本部とは何ら関連がない問題でした。それにもかかわらず、一部顧問と中央役員が無定見にも「公開状」を出し、「報告書」などを流布させ、あたかも中央本部が、特に現執行部が関連していたかの様に浪説を広め、組織に対する不信を助長させ、権威を大きく失墜させました。

 元来、このような問題に対する対処は「組織内部問題はあくまでも組織内部で処理する」という立場と対外的には民団の被害を防ぎ、民団の自主性を守るという立場のもとで扱うべきです。

 しかし、対内的な反省と措置は厳格に扱い、このような不祥事を二度と起こさないという基本姿勢で臨むべきです。

 第51回臨時中央委員会で、同問題の真相が明るみになり、文氏告発問題と、このいわゆる「手形問題」と関連する処分問題がさる1月18日に開かれた、第52回臨時中央委員会ですべてが片付けられました。

 そしてこのような事態が二度と起こらないようにするために、非営利団体の民団は中央をはじめ地方まで、「手形」は発行しないとの事務規定まで改正するに至りました。

 辛容祥執行部とは何ら関連がなかった問題であり、また、民団に直接的被害がなかった問題ではありましが、このような不名誉な事で一時的ではありますが、組織混乱がおきたことに対し、道義的な責任を痛感しており、深刻に反省しています。

 今後、新しく選出される執行部は、いわゆる「手形問題」をはじめ、民団に対する不信と傷つけられた権威を回復するために全力を尽くしていかなければなりません。


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2002W杯後援事業

◆「後援会」、日本側も注目

 21世紀、韓日間の架け橋的役割を果たしていくべき在日韓国人は「2002年ワールドカップ(W杯)」の成功へ、昨年度方針に沿って、5月11日、全国団長会議で全団的規模の「在日韓国人後援会」を結成しました。

 李煕健・韓信協会長を後援会長に推戴し、1世帯2000円程度の団員募金活動を通じて、目標十億円の募金運動を策定しました。これにともなう免税措置問題も関連機関と最終協議に入っています。KOWOC(韓国組織委員会)の諮問委員として李煕健会長と中央団長が招へいされており、JAWOC(日本組織委員会)の特別顧問として中央団長が推戴されており、対内外的に本団の役割が大きく注目されています。

 ただ、昨年度は体制の整備に苦労し、具体的な募金活動は展開できませんでした。今年から本格的な活動展開が求められるでしょう。


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まとめ

◆前進させた成果土台に

 以上のように99年度は組織の対内外的条件は決して順調とは言えませんが、辛容祥執行部が2期にわたって、団員とともに血と汗を流しながら展開してきた「地方参政権」の立法化実現がもうすぐ目の前までに迫っています。

 着実に前進させてきた諸般事業の成果を土台に20世紀最後の年である今年を、21世紀を開いていくための民団活動の年として、総力を結集しましょう。

(2000.03.22 民団新聞)



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