民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
民団中央・2000年度基調

新年度活動方針



新年度の基調を説明する黄迎満事務総長

21世紀を生きる子孫のために総力結集

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情勢と展望

 今年は新しい1000年が始まる年であり、20世紀の最後の年です。20世紀が幕を降ろそうとしているこの時点でも、冷戦状態がいまだに終息していない所が、まさに韓半島です。

 しかし、この韓半島の南北関係も徐々に変化の徴候が見え始めました。

 昨年は「延坪海戦」があり、核開発疑惑を招いた「金倉里」の査察問題、そして「ミサイル」開発と再発射問題などで、韓半島は一触即発の戦争危機が漂う極度の緊張状態にありました。


◆「包容政策」で変化の兆し
  本国経済、着実に回復

 ご承知のように、「延坪海戦」は北韓の完敗に終わり、「金倉里」の核施設査察を北韓は受け入れ、ミサイル再開発も発射も中止しました。これは強固な安保の後ろ盾の上に展開した韓国政府の対北包容政策と、米国、日本との協調体制が北韓の危険な「崖っぷち戦術」を抑制したものだと言えます。

 韓国政府の一貫性ある対北政策の推進により、戦争の脅威を減少させながら金剛山観光をはじめ、対北間のスポーツ、文化、経済交流が相当に活発に展開し始めました。昨年度の南北交易は、3億3000ドルに達し、史上最高の記録を残し、金剛山観光も15万人を突破しました。

 北韓の金正日政権は、昨年度の食糧生産が約350万トンに達し、多少は食糧危機状態が緩和されたというものの、いまだに120万トン程度の食糧不足が予想されており、今年も依然として外貨不足、エネルギー難などで経済的な困難が持続することが予想されます。

 北韓はこのような経済難と国際的な孤立状態から脱しようと、今年イタリアと修好、オーストラリア、フィリピンとの関係改善など、積極的な外交を展開しながら、朝・日国交正常化と朝・米関係改善に注力しており、その帰趨が注目されます。このような北韓の変化と韓国政府の包容政策の推進で、今年こそは冷戦終息の糸口をつかむよう期待する次第です。

 わが国は一昨年、IMF体制下で呻吟していた経済が確実な回復基調に達しました。昨年の韓国の経済は10%を超える経済成長率と720億ドルに達する外貨保有高を見せ、外貨危機は完全に克服したと言えます。さらには今年も6%前後の成長率と約120億ドルの貿易黒字を記録するだろうと楽観的な展望を掲げています。

 ただし、本国が持続的な経済成長と世界化時代に先進国として発展しようとすれば、何よりもわが国の政治安定と社会安定が切実に要求されます。近づいてくる「4・13」総選挙では、民主主義がより一層発展し、地域主義の弊害が克服され、政治的に安定した枠組みが形づくられるよう期待する次第です。

 私たちが生活している日本社会もやはりバブル経済の崩壊後、10年にわたる長期不況の中で、経済的な困難さを経験してきました。しかし、昨年から日本経済がマイナス成長から脱し、今年は約2%前後の経済成長率が予測され、不況から徐々に脱するのではという期待感を持たせるようになりました。また、日本の金融改革過程で陣痛を経験している私たちの信用組合としては、「ペイオフ」が1年延長され、多少の時間的余裕が持てるようになり、より一層の自助努力が展望されます。

 衰退一路をたどる朝鮮総連は昨年9月、拡大中央委員会を開き、組織方針の一部変更と機関紙「朝鮮新報」の多少の編集内容改革をしました。しかし、表面的な一部の組織改編や紙面変更程度では、彼らの組織の足場である民族学校の絶望的な現状と続出している総連同胞の組織離脱を防ぐ道理がありません。今も主な路線を空しい金正日の指導下にある主体思想に置き、現実に合わない非民主的な組織指導路線にある限り、朝鮮総連は総連同胞から無視され、組織弱体化は加速化し、総連の存立自体の危機に直面するでしょう。在日同胞の立場から生活者組織としての大胆な変貌なくしては、総連の存立と未来はありません。

 このような総連の弱体化と日本国籍取得者の増加などで、同胞社会に変動が起きています。

 本団は21世紀の日本社会の変化と同胞社会の変動に能動的に対処するため、2000年度の活動方針を次のように策定し、積極的に推進しなければなりません。


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新年度活動方針

■地方参政権の立法化と獲得

◆今国会成立めざし
  要望活動を継続強化

 去る1月21日、日本の自由党と公明党が永住外国人に対する参政権付与法律案を国会に提出しました。ただし、3党連立政権の中で自民党が内部の意見調整に多少時間がかかり、時間的にいつまでと断言するのは難しいものです。また、日本の政治情勢により、国会総選挙がいつ行われるのかによっても「法律案」審議と採択時期の変動が予想されます。しかし、本団としては今般の通常国会での成立を目標に立法化の要望活動を強力に推進していかなければなりません。

 まず、立法化の早期実現のため各政党に対する要望活動をより一層強化し、日本政府や友好親善団体に対し、総力を傾け要望活動を展開しなければなりません。そして、本国政府や韓日議員関係者にも協助を要請し、韓日の友好関係の中で立法化がもっと迅速に成し遂げられるよう努力しなければなりません。そのためには中央本部と地方幹部が力を合わせ、日本の政治家の理解と決断を要求しなければなりません。

 二つ目に、継続して地方議会で私たちの意見書が採択されるように、少なくとも全自治体の50%以上から支持を得られるように全団員とともに全力を尽くさなくてはなりません。

 三つ目に、日本社会でもう少し多くの人々に共生・共存していく在日同胞の地域住民としての権利に対する理解と協助、支援を呼びかけなければなりません。

 本団はいかなる障害があっても、今年中すなわち20世紀中に地方参政権を獲得し、私たちの子孫が堂々と生きていくことのできる政治的、法的権利の獲得に全力を傾注しましょう。


■信用組合の健全育成

◆統合・再編が急務
 全団的な努力を傾注

 幸いにも日本当局の信用組合に対する「ペイオフ」の実施が1年延期されました。私たちの信用組合がこれからは自己の利害関係にのみとらわれ、少し遠い将来の民族金融機関としての存立と発展を考えなければ、業務停止という最悪の事態を免れることはできません。事態が切迫しています。私たちの信用組合をつくったのも民団であり、組合員の大部分は団員です。したがって、今年こそは韓信協を中心に統合と再編、そして健全育成に商工会議所とともに、全団的な努力を傾注しなければなりません。2002年から始まる金融機関の無限競争時代に、同胞経済の後ろ盾となる統合再編された信用組合として発展させてこそ、21世紀を生きていく私たちの経済的土台が準備されるのです。


満場一致の拍手で新年度活動方針案を
採択する中央委員

■民族社会教育とオリニジャンボリー

◆「文化教室」を展開
  10月マダンの充実化も

 21世紀の日本社会とともに共生共栄しながら、国際化時代と情報通信革命時代に積極的に対応するためには、何よりも重要なことは在日韓国人として主体性が確立されなければならず、これは民族教育と民族文化の強化発展なくしては成し遂げられません。

 まず、講座制「民族大学」の質的向上のために努力しなければなりません。常設教室の拡大と巡回地方教室を積極的に開設し、神奈川と愛知の「コリアンアカデミー」の常設化を試みながら、東北、中北、九州地協管下本部の巡回教室開設に努力していかなければなりません。


◆本国でオリニジャンボリー

 二つ目に、オリニと青少年に対する民族教育を強化しなければなりません。全国的に定着化していきつつある「オリニ土曜学校」「臨海林間学校」を継続推進しながら、これを土台に全国的規模の「オリニジャンボリー」を本国で開催し、本国のオリニたちと交流も試みながら小さな頃から民族意識が芽生えるよう力を傾けなければなりません。

 この取り組みと合わせ、定例化している中・高校生を中心とした夏季学校と大学生の春季学校をより強化し、若者の民族的な自覚と「ネットワーク」がきちんと成し遂げられるように継続して努力しなければなりません。

 三つ目に、民族文化の生活化と在日同胞の文化向上のために、「文化教室」を婦人会とともに全国的に展開できるよう試みなければなりません。また、「10月のマダン」をもう少し内実があるものに展開することで、在日同胞の文化創造の大衆的な契機となるよう力を尽くさなければなりません。さらに、自発的な文化サークルへの支援も強化し、民族文化振興に一層努力しなければなりません。


■組織活性化と基礎作業

◆実態調査を本格始動
  支部活性化へ交流に尽力

 最近、在日同胞社会は少子化と国際法による日本人化、帰化などで同胞人口は減少傾向にあり、特に一世の自然減少などで質的変化が顕著に進行しています。

 また、民団の基礎組織で団員の減少や三、四世の本団に対する無関心が深刻な問題になっています。

 まず、このような事態に能動的に対処するため、組織の実態調査を今年から本格的に実施しなければなりません。

 団員の基本調査を中心に団員の要求や要望を把握するよう努力し、全国的かつ統一的に統計化を確立しなければなりません。近づいてくる2002年には、新しい民団の方向を策定できるよう基礎作業として調査事業に全力を尽くさなければなりません。

 二つ目に、組織の基礎である支部活動の活性化のために、今年も全国支団長研修と会議を組織し、支団長の相互交流に尽力するだけでなく、支部間の交流を試みるよう努力しなければなりません。

 三つ目に、在日同胞社会の和合と交流、そして統一のために組織的な準備を強固にしながら、朝鮮総連の同胞に「在日同胞」の立場から「生活者」としての交流を呼びかけ、強化しなければなりません。

 そうすることで在日同胞の統一と祖国の平和統一のために、主導的役割を果たすよう努力しなければなりません。

 このような組織活動を通して、組織の基礎を強化しながら同胞社会の未来に対する準備をしなければなりません。


■団員の福祉向上と便宜提供

◆"イベント"を多様化
  「介護保険」にも対処へ

 団員の経済生活のみならず、就職、結婚、高齢者問題など、日常的な生活問題に対し、福祉向上と便宜提供に力を尽くさなければなりません。

 まず、今年4月から実施される「介護保険」制度に対し、同胞高齢者が不当な処遇を受けないように、日本政府と自治体に対して、継続して要望活動を強化しながら各地方本部と支部が自治体と協議しながら、進んで団員に対して独自のサービスを開発し、実施するよう全団的に力を尽くさなくてはなりません。

 二つ目に、結婚相談活動と就業説明会活動を継続拡大、強化しなければなりません。

 結婚適齢期の若者を対象にした調査と記録を全国的に統合し、「結婚情報誌」を発行し、今まで推進してきた「ブライダルパーティ」と各種「イベント」をもう少し多様に、そして地方においても情報誌が自律的に発行することができるように、全国的な協力態勢を確立していかなければなりません。

 三つ目に、団員に対する便宜提供とともに、収益事業を研究、開発しなければなりません。

 民団は元来、非営利団体ですが、団員に対する各種サービス提供をより生産性あるように効率的に提供し、収益性をあげ、財政自立の一助となるよう努力しなければなりません。

 このような活動を通して、団員の多様な要求を収れんし、新しい便宜提供をしてこそ民団組織が活性化するのです。


■宣伝・広報活動の強化

◆機関紙を一層充実へ
  TVやネットの拡大も

 十万部態勢を確立した本団の機関紙、「民団新聞」は、今後も継続して団員と同胞に情報提供だけでなく、相互情報交流の広場としての役割を果たし、在日同胞社会が新しい時代の共同体として発展していく情報媒体としての機能を発揮しなければなりません。

 最初に、「民団新聞」の質的向上に尽力しなければなりません。編集陣の補強と紙面改革を通して、名実ともに全同胞の情報紙とならなくてはならず、特に各民団支部の生活現場の記事を多く載せ、その記事を通じて同胞間に自然な情報交流ができるようにしなければなりません。

 二番目に、10万部に達する新聞を発行するのに膨大な費用がかかり、中でも直送体制を維持するための財政は、中央本部を圧迫しています。

 したがって、できる限り広告収入をあげ、機関紙の財政自立を確立しなければなりません。

 そのために今年は、「広告代理店」制を導入し、広告収入をあげるのに力を傾けなければなりません。この事業は中央本部だけでなく、地方本部と力を合わせ、全国的に推進しなければなりません。

 三番目に、KNTVの「在日コリアンニュース」と民団の「インターネットホームページ」を持続的に発展させなければなりません。KNTVと連携し、「在日コリアンニュース」の内容面の充実と視聴者拡大に全団的に協力しなければなりません。

 また、民団中央本部の「インターネットホームページ」のニュースをもっと豊富にし、多くのアクセスと双方からの交流ができるよう拡大していかなけばなりません。


■2002年W杯後援事業本格化

◆「10億円募金」を開始
  後援会も補強・改編

 昨年、組織された「2002年ワールドカップ在日韓国人後援会」を今年は補強、改編し、本格的に活動を展開しなければなりません。韓国組織委員会と日本組織委員会の架け橋的な役割を果たすため、募金活動の積極展開と世論喚起、弘報活動に全力を尽くさなければなりません。

 まず、募金目標を10億円にして組織募金と経済人募金を実行し、推進して行かなければなりません。次に、日本の開催地と本国の開催地に対する支援と応援、韓日親善のための各種行事の参与と支援、そして同胞社会の関心を盛り上げ、日本社会に対する弘報活動を強化するための態勢確立に全力を傾けていかなければなりません。

 「2002年ワールドカップ」を成功させることにより、韓日友好関係を確固たるものものにし、日本社会で共生・共栄の基盤を堅固にしなければなりません。


■21世紀に対応

 今年は本団としても歴史的に重要な年です。地方参政権の立法化が成就し、21世紀を生きていく私たちの子孫が権利を確立する年にしなければなりません。そして、この運動を6年間、血と汗で推進してきた辛容祥執行部が歴史的な任務を終え、21世紀の初頭に民団を牽引する新執行部が選出される年です。

 したがって、本団は今年、以上のような課題を着実に遂行することで「21世紀」に対応しようとしています。

 全団的な力量を結集し、運動と課題達成に全力を傾注しましょう。

(2000.03.29 民団新聞)



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