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在日へのメッセージ

大田明彦(大阪国際大学教授)



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原則曲げて譲る必要ない

 韓国や米国などが注目する中、日本と北朝鮮との国交正常化交渉が7年5カ月ぶりに再開され、平壌でこのほど、本会談が2回にわたって開かれたが、予想通り、過去の謝罪や補償、拉致、ミサイルなどをめぐって双方の主張は平行線をたどった模様だ。

 ところが、奇妙なのは記者会見で北朝鮮側は「日本側が過去の謝罪と補償をすることで合意した」と説明したのに対し、日本側は「そういう合意はない」と反論したことだ。

 日本側代表の高野幸二郎大使は名うての外交官であり、政治家の故・金丸信氏のような不用意な発言をするはずがない。

 それゆえ、北朝鮮側の焦りを反映したか、鄭泰和大使が金正日総書記への報告を取り繕ったと見るのが自然だろう。

 さて、国交交渉への基本認識は「日朝間の不正常な関係を正常なものにしたい」(日本)、「『過去の清算』問題を解決し善隣友好関係を結びたい」(北朝鮮)と、双方とも意欲的だ。

 しかし、「謝罪」について、日本側は「平成7年の村山首相談話で示された認識を継承する」としているのに、北朝鮮側は「法的拘束力のある公式文書に明記すべき」と譲らない。

 「拉致」も「深刻な人道問題であり、正常化にあたって避けて通れない」という日本側に対し、北朝鮮側は「あり得ないことで、敵視政策の表れだ」と、従来の発言を繰り返した。

 確かに、最近の北朝鮮はイタリアと国交を正常化し、カナダや英国、フィリピンなどと接触を進めており、朝鮮半島をめぐる国際環境の変化はある。

 ただ、日本は交渉再開にあたって、米国、韓国との協調を重視した「ペリー報告」に基づいて行動する方針を決めている。

 また、日本は10万トンのコメ支援を決め、北朝鮮が同じテーブルについたという経緯がある。

 日本としては北朝鮮側が過去の態度を改め、拉致疑惑にも誠実に対応しない限り、原則を曲げてまで国交正常化を急ぐ必要はない。

(2000.04.12 民団新聞)



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