民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
辛野乃の短期母国修学記<8>

「下宿のおばさん」



 下宿はアジュモニの人柄によってそれぞれ雰囲気が全く違う。

 ある友人の下宿は、到着したその日にオソオセヨ・パーティがあり、翌週には雑誌の取材でパーティ風景を撮影、翌日に下宿生の誕生日パーティと宴会ずくめ。

 他にも食事に肉がよく出る下宿、などといった情報が学校の中を飛び交っている。

 私の下宿には9人が暮らしている。これだけの人数の面倒を見るのだから、下宿経営はよほどの世話好きでなければ務まらない。

 おまけに私以外の下宿生は全員が韓国生まれの韓国人のため、言葉が不自由で生活に不慣れな私にアジュモニの関心が集中する。

 アジュモニの様々な注意事項を私が理解出来ないでいると、手の空いている下宿生を連れてきて「寸劇」が始まる。とかく細かい気配りに、最初はどうすればいいのか分からなかった。そして事件は起きた。

 それは旧正月の時のこと。下宿生は全員故郷に里帰りし、アジュモニと2人きりに。夕飯の時間にいつも通り食堂に行くとご飯がない!

 「2人で食べようね」と聞いたはずだが、間違えたのかと考え、1人わびしくパンをかじっているとアジュモニが血相変えてやって来た。せっかくだから一緒に外食しようとアジュモニは部屋で私を待っていたらしい。なのに私が遠慮して声をかけなかったために怒らせてしまったのだ。

 この1件によって、韓国生活において忘れてはならない基本を思い出した。それはすなわち「遠慮は不要」ということ。以来、とことんまで甘えさせてもらっている。その方がアジュモニもうれしいのだということが分かったから。

(2000.04.12 民団新聞)



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