民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
石原都知事の「三国人」妄言

在日同胞が猛反発
民団も抗議の談話文



 東京都の石原慎太郎知事が9日、陸上自衛隊の式典あいさつで「三国人、外国人が凶悪な犯罪を繰り返している。大きな震災では騒擾事件すら想定される。警察の力には限りがある。(自衛隊の)みなさんに出動していただいて、災害だけでなく、治安の維持も大きな目的として遂行してほしい」などと述べた。自衛隊の治安出動は、警察力では治安を維持できない緊急事態に首相が直接命令する場合のほか、都道府県知事が首相に要請できるが、過去には出動した例はない。

 また、都が9月3日に自衛隊と実施する災害対策訓練について「国家にとっての軍隊の意義を国民に示してほしい」と続けた。同発言に対して民団中央本部は10日、「妄言」をただす声明文を出した。全文別掲。


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治安対象視に強く抗議
姜徳相・滋賀県立大教授の話

 「第三国人」という言葉は死語だと思っていた。第二次大戦後、われわれを厄介者扱いするところから生まれた言葉だ。騒擾事件が予想されるなどというのは、全く関東大震災の朝鮮人虐殺を彷彿させる。

 要するにわれわれを治安の対象としているわけで、民団や総連、本国政府は同胞を保護する意味からも抗議すべきだと思う。政治家ではなく、行政のトップが語ったことが重大な問題だ。


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■民団の談話文

 東京都の石原慎太郎知事は9日、陸上自衛隊練馬駐屯地で開かれた創隊記念式典の挨拶で、「三国人、外国人の凶悪な犯罪が繰り返されており、震災が起きたら騒擾事件が予想される。警察には限度があり、災害でなく治安の維持も遂行してもらいたい」と述べた。

 われわれ在日韓国人70万人は、このたびの石原発言の問題性を到底看過することができない。この発言は1923年に起きた関東大震災で当時の朝鮮人に対する悪意に満ちた流言飛語が意図的に流され、自警団によって罪のない多くの同胞が「外国人」という理由だけで犠牲になった悪夢を彷彿させるばかりか、「共生・共存」社会を願う多くの日本人と在日外国人の友好関係に水をさすものだからである。

 さらに、外国人を危険な存在と断定していたずらに偏見をあおり、治安維持のためには前代未聞の自衛隊出動までちらつかせる旧時代の発想法は、都知事という要職にある者の発言としては不穏当きわまりない。われわれはかかる認識については、憤りと同時に首都東京を預かる指導者として危惧を抱かざるを得ない。

 周知の通り、関東大震災の悲惨な事実の反省に立ったからこそ、1995年の阪神大震災では未曾有の混乱の中でも、日本人、外国人がともに助け合う人間として当然の行為を示したのである。

 石原都知事は国際化に向かう日本社会の現実をどのように認識しているのであろうか。さらに、「三国人」という呼称が主に在日韓国人を指す差別的な言葉として使われた経緯を見る時、このたびの妄言はソウル市との姉妹関係を損ない、98年の金大中大統領の訪日を大きな契機に、21世紀をめざして韓日パートナーシップが着実に進展している現状はおろか、将来の外交関係にまで悪影響を及ぼす恐れは大である。

 われわれ在日韓国人70万人は、韓日間の架け橋的役割をはたすべく、これまで日本の地域社会の発展に応分の貢献をしてきたし、これからもその旨尽くすものである。石原都知事はこのたびの発言によって引き起こした内外の波紋について、すみやかに都知事としての新たな見識を示すべきである。

2000年4月10日
在日本大韓民国民団中央本部
宣伝局長 「哲恩

(2000.04.12 民団新聞)



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