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元従軍慰安婦が手記「南海の空へ」出版

つらい過去の虐待を直視



キム・ユンシムさん

 元従軍慰安婦のハルモニを記録したビョン・ヨンジュ監督の記録映画「息づかい」に出演したキム・ユンシムさん(70)の自らの体験を綴った手記「海南の空へ―戦場からソウル、そして未来への日記」(発行・パンドラ、発売・現代書館、定価1200円+税)がこのほど出版された。来日したキムさんに話しを聞いた。

 同書はキムさんが小学校卒業後、日本軍人によって中国ハルビンに連行され、そこで強いられた「慰安婦」生活の証言に留まらず、生まれ故郷「海南」での幼少の頃の生活模様や毎週一回、韓国の日本大使館前で行われている「水曜デモ」での現在のハルモニたちの姿に触れるなど、広範に渡る。

 同書は九五年、韓国挺身隊問題対策協議会(ユン・ジョンオク総責任者)からの「自分たちの証言を手記という形で残してほしい」という呼びかけにより、キムさんが九六年から書き始めたもの。元「慰安婦」による手記は初めて。

 キムさんは九八年、この手記で韓国のチョン・テイル文学賞を受賞した。

 手記を手がけた当時、複雑な心境だったと話す。

 「慰安婦」を強制させられた当時の場面が目に鮮やかに浮かんできた。過去に向き合わなければならない辛い作業でもあり、また、「本当にこれを書いていいのか」という迷いもあった。

 そんな中での受賞についてキムさんは「まさか自分が書いた作品で賞をもらうとは夢にも思わなかった」と当時の驚きを隠せない。

 キムさんが同書で一番訴えたかったことは「戦争は二度と起こしてはいけない」ということだ。

 「これからどこかの国で、また戦争が起きれば最初に性的虐待を受けるのは女性です。ぜひ、この本を読んで世界の人たちが認識してほしい」と懇願する。

 キムさんが当時の自分の気持ちをありのままに綴ったという四行の文章が紹介されている。

 虹のように色とりどりの歳月のなかで/日本への恨(ハン)だけを胸に秘め/虚しく生きてきた女の一生を/誰がわかってくれようか

 キムさんは言う「人生はそれぞれの色があると思っている。私もさまざまな色の人生を生きてきた。それを虹に例えて表現した」

 今「心は青春です」と笑顔で答えられるまでになった。詩も何編か書きためている。今度はコンピューターにチャレンジする。

 同書に関する問い合わせは、パンドラ03(3555)3987まで。

(2000.04.26 民団新聞)



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