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いつまで続く食糧危機



 4月29日、快晴の朝。ゴールデンウィークの初日にあたり、世間では外国旅行だと騒ぎたてているのに、目覚めが悪い。それはある集会のテーマのせいだ。

 かわいい子供たちとのジャレアイも程々に、スーツに着替えて車のキーを回す。走る車から見える外の風景は、平和で活気に満ち溢れている。その風景に酔いしれていたころ会場に着き、現実に引き戻された。

 会場内には20数人がすでに席に着いている。2時を合図に、それ程大きくないテレビの画面から「朝中国境を越えた北朝鮮の子供たち」と題した内容が流れ始めた。食べ物を買うお金を稼ぐために、生命の危険にさらされながらも朝中国境を越えた12歳ぐらいの子供の生活体験談だ。

 その子はすでに14回目の朝中国境越えであると告げる。1回だけ北韓の国境警備隊に逮捕され、新義州の刑務所に投獄された。「歩けないくらい殴られた」と何事もないように笑いとばす。

 中国では拾い食いで食いつなぎ、公園で寝ながら、中国警察の目をくぐりぬけ、「物乞い」で約300元(日本円で約6000円、北韓では半年分の生活費に相当)を稼ぎ、家族のもとへと帰る。稼いだお金は小さく丸めて飲みこみ、北韓兵には賄賂として50元を渡し、家に戻り4日間の断食で飲みこんだお金を外に出し、米などの食糧を買う。

 その子の一番の楽しみは、家族のもとへ帰ったときの「母の抱きしめ」と言いながら、屈託のない微笑を見せる。食べられなくなったら同じことを繰り返すと言うが、韓国や日本、そしてNGOなどから食糧支援があるということは知るよしもない。

 表に出ると、目に痛いほどの日射し。やりきれない気持ちだけが心に残った。(K)

(2000.05.10 民団新聞)



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