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川崎市外国人会議、公務員採用で前進

李仁夏・前委員長にインタビュー



李さんが議長として
会議の進行をつとめた
川崎市外国人市民代表者会議

提言案巡り綱引き
任用制限市が見直しに着手

 【神奈川】川崎市(高橋清市長)が外国人市民の声を市政に反映するため、全国に先駆けて条例で設置した川崎市外国人市民代表者会議第3期が4月23日、スタートした。96年12月の発足当初から2期にわたり委員長を務めてきた李仁夏さん(74)は4月、99年度提言を高橋市長に提出して任期を満了した。李さんにこれまでの活動を振り返ってもらった。


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任期中、川崎市の外国人市民施策はどれだけ前進したとお考えですか。

○…代表者会議には限界と可能性がある。例えば外登法や入管法など、国の問題には市としても直接介入できず、限界がある。それでも入管職員に対する人権教育は実現できた。市の施策については調査権が与えられている。これは他市のような諮問委員会とは違い、代表者会議が条例で設置されたためだ。98年には市が「外国人教育基本方針」を打ち出すのに寄与できた。市職員採用時の国籍条項についても、1年間ねばり強くやって成果を上げられた。


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その成果が99年度の年次報告に反映されているわけですね。

○…提言には「国籍による就職問題を中心とした差別の解消を図る」との1項がある。最終文案づくりの作業では、私たち正副委員長と2人の部会長が「要望として提言します」と書き込むよう主張したのに対し、市側は国が圧力をかけているために「強く期待します」の表現に固執した。綱引きは延々と続き、時にはつい声を荒げる場面もあったが、押し切った。この結果、市は今年度から消防職の採用など182職種とラインの局部課長の任用制限の見直しに着手した。


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 外国人の入居差別解消のための条例は他の自治体にもあるが、具体的な支援制度をつくったのは全国でも初めてだとか。

○…そう。海外でもフランスなどで外国人への「入居差別」に対し、罰則付きの住宅条例があるが、川崎の制度が優れているのは、家主への保障を盛り込み、支援対象を外国人に限らず日本人の高齢者・身体障害者にも広げている点。これは、われわれ外国人全部が差別された痛みを知っているから出せた。日本人差別もわれわれにとって怒りなのです。


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 李さんは会議で「外国人にとって住み良い街は日本人にも住みよい街」とよく発言していましたね。

○…李さん 私は3つのキーワードを肝に銘じて活動を続けてきました。外国人があれこれ要求するばかりでなく、街づくりに参加していこうという「要求から参加へ」。2つ目は「個と普遍」といってわれわれの目指す目標は外国人だけでなく、日本人にも利益となる普遍的なものでなければならない、という意味。最後は「相互理解と共生」で一般の日本人に外国人をはじめとするマイノリティー(少数派)への理解を深めてもらい、心の豊かな社会づくりのきっかけにしてほしい、という願いです。


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今後の課題は。

○…国の支配という枠組みがまだ残っている。これからも地方分権を広げ、深める必要がある。それには東京、京都など他都市の外国人市民代表者会議と連携し、将来的には全国の外国人が国にメッセージを発信できるようになれればいい。

 OBとしてこれからもこうした取り組みに役立っていきたい。

(2000.05.10 民団新聞)



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