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「50肩」の痛み切なし



 電車のつり革につかまろうとしたところ、なぜか右腕が重く感じられた。いま考えればそれが前兆だった。一週間経つと一人では着替えすら困難に。しばらくは痛みにうなりながら、明け方までもんもんとする日々が続いた。

 家に備え付けの医学書によれば、「五十肩」は筋肉の異常な緊張が高まり、神経や血管を圧迫して痛みを引き起こすのだという。確かに、私は四月に五十歳になったばかりだった。いわば、避けては通れない人生の通過儀礼だったのかもしれない。

 そういえば、十年前にも原因不明の腰痛に苦しんだことがあった。医学書を開くと、確かに「四十腰」という記載があった。これをみて、なるほどと合点がいった。「五十肩」の原因は、「老化」なのだという。それを知ったときは内心、ショックだった。確かに髪に白いものが目立つようになり、歯医者通いも続いている。それでも、年取ったという現実には目を背けてきた。しかし、痛みで右腕を動かせなくなって、初めて「老化」という現実を素直に受け入れなければという気持ちになってきた。

 六月からは、介護保険料が給与から天引きされるという。不本意だが、いつか介護を必要とするときが来るのかもしれない。ただ、見ず知らずの日本人のホームヘルパーに身の回りの介護を頼むというのは気が引ける。ましてや、韓国的な生活習慣とは縁遠いところで療養生活を送るというのも淋しいものだ。

 頼りとする妻はといえば、「年取って、寝たきりになってもらっては困る。そのときはいっそのこと、ぽっくり逝ってくれるのがいちばんいい」と冷たい。肩の痛みが一段とひどく感じられた。(P)

(2000.6.28 民団新聞)



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