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在日へのメッセージ

「ショー」の後
**前川昌輝(共同通信社社会部記者)**



 タラップの下で、金正日総書記が金大中大統領を出迎えるという劇的なシーンで幕を開けた史上初の南北首脳会談が終了した。

 突然一日延期されたり、日程さえ不明確だったり。北朝鮮ならではの特殊事情も作用し、期間中は意外な展開に目を見張らされることが多く、まれに見る壮大な「政治ショー」だった。

 肉声さえほとんど伝わらなかった指導者が、実は多弁で、時に身振りを交え、ユーモアも随所に織り込む。正反対の人物だろうという固定観念が強かっただけに驚きは大きく、イメージアップ等の“宣伝効果”は計り知れない。

 「(韓国側は)宣伝するが、我々は実利を求める」との金総書記の発言が皮肉に聞こえるほど巧みな演出で、世界に向かって存在感を誇示したと言える。もっとも、丸々と健康そうに太った体格には、飢餓が深刻化している国情を考えると違和感を覚えざるを得ないし、沿道で小旗を振っていた平壌市民の様子も相変わらずの異様さ。

 某放送局の番組で日本人から「好きな歌は?」と尋ねられ、「指導者を讃える歌」(曲名は失念)を熱唱する青年の姿は、理解の範囲を超える光景であり、

 「統一」への具体的なシナリオを想像するのは難しい。

 それでも、分断されてきた民族の夢に現実感を持たせたのは事実だ。総連に対話を呼び掛けた民団の提案や、川崎市で行われた合同祝賀会の成功など、「在日社会の統一」を指向する動きは、今後も加速し続けるだろう。

 そうした動きを支える素地が「二〇〇二年ワールドカップを統一チームで」

 「協力して民族教育に力を尽くそう」「在日同胞の間から統一への機運盛り上げを」等、在日たちの熱意が込もった声だ。

 派手な仕掛けに世界中の目が東アジアの半島に向けられ、次の展開を注目している。

 後は「ショー」の第二幕が早く開き、クライマックスに向かって着実に盛り上がるよう望む。

(2000.6.28 民団新聞)



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