民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
辛野乃の短期母国修学記<15>

どれだけ楽しかったか分からない



 とうとう十週間の授業を終え、修了式の日を迎えた。祝辞として挨拶した韓美教育委員団の団長は、語学堂を六級まで終えて卒業されたという、私たちの大先輩にあたる方だ。アメリカ人らしい陽気な話し方で、いい話を聞かせてもらった。

 曰く、今日、六級を卒業する人やこの後語学堂を去る人には二つの道がある。一つの道は語学堂で身につけた力をさらに大きく育て、韓国生活を楽しみ、この国を理解していく道。そしてもう一つの道はすべてを忘れていく道である。自分の生活拠点に帰って、それでもなお「学びたい」と思う積極的な姿勢がなければ、残されるのはこの道しかない。あなたはどの道を行きますか?というお話だった。

 私自身を振り返ってみると、毎日の宿題やテスト勉強など、よく勉強した方だと思う。が、一番重要な文法を学ぶ級といわれる二級の授業を終えても、残念ながら実力が上がったという実感はない。それどころか未だに言いたいことの半分しか言うことが出来ず、そのために何度も悔しい思いをした。帰りの飛行機のチケットを握りしめて泣いた日もある。ただそうした経験のすべてが今の私にとっては財産だ。

 何よりももったいないのはこの経験を眠らせてしまうことだと思う。生活者の目で知った事柄や出会った人々。短い時間ではあったけれど、この母国修学によって得たものは単に「言葉」だけではない。

 三世の私にとって初めて祖国を肌で感じた旅が終わろうとしている。この続きは「あなた」が感じて欲しい。よれよれになったチケットで乗る飛行機からのソウルの夜景は、私の新たな出発点である。(おわり)

(2000.6.28 民団新聞)



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