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在日へのメッセージ

「普通の国」になれるか
小林和博(東京新聞・論説委員)



 このところ、北朝鮮は国際舞台、特にアジアにおいては、主演級の注目を集めている。

 金正日総書記は、分断後初めての南北首脳会談を劇的にこなし、その前後に、お忍びで中国を訪れて中朝首脳会談、平壌でロ朝首脳会談まで行った。

 さらには、今年に入って、イタリア、オーストラリア、フィリピンなど、いわゆる西側諸国と国交を樹立し、そのほかの国とも盛んに行き来を始めた。

 これまで北朝鮮は、軍事独裁体制を強化し、事実上の鎖国を続けてきた。外交といっても、恫喝外交、こわもて外交、瀬戸際外交など、怖い顔のイメージしかわいてこない。

 それだけに、金総書記や白南淳外相らが笑顔を振りまきながら外国要人と握手する姿は、意外性が強く、北朝鮮の外交的大変身の衝撃度は強かった。

 「首脳会談などの実現で金大統領はノーベル賞を受けるが、金総書記は何賞をもらうか」。韓国で最近流行ったなぞなぞだ。

 正解は「アカデミー賞」。確かに北朝鮮の国際舞台へのデビューは、金総書記の演出、そして主演によるものだろう。

 北朝鮮の大変身の理由は、国内の体制固めが一段落して、経済立て直しのため、大々的に外国の支援を得るのが狙いといったところだろう。そのために、北朝鮮は外国と「普通」のつきあいを始めたのだ。

 周囲に軍事的脅威を与えないで、もっぱら「富国」につとめ、あつれきが生じれば、話し合いを通じて解決する。

 そうゆう普通のつきあいができるようになれば、周辺国はいくらでも支援を惜しまない。北朝鮮が安定することは、地域全体の安定につながり、ともに繁栄を追求できるからだ。

 果たして、北朝鮮は「普通の国」に変身できるだろうか。いま外づらを変えつつある。問題は国内だ。普通の人が普通に暮らせる社会に変わるのでないと、普通のつきあいはすぐに限界にぶつかる。「特異な指導者」の試金石である。

(2000.08.02 民団新聞)



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