民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
在日同胞の和合と交流・統一のために

民団中央・平和統一推進委員会より



歴史的な南北首脳の握手で
和合へのムードが広がった

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民団と総連
対立に終止符打ち、相互尊重で対話を

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総連に対話を呼びかけ

 去る6月15日、金大中大統領と金正日国防委員長の歴史的な首脳会談が行われ、「南北共同宣言」が発表された。

 分断50年の壁を越え、南北同胞の情愛をよみがえらせ、戦争をせず、南北が共存しながら和解と協力の精神に基づいて、交流を深めながら南北ともに発展していこうと誓い合った画期的な出来事である。

 われわれ70万在日同胞は、20世紀のわが民族の受難の歴史に終止符を打ち、21世紀のわが民族の雄飛のためにもこのたびの「南北共同宣言」が、新たな歴史の始まりを告げる里程表として高く評価するとともに、南北の平和定着と統一へ向けての大きな一歩を踏み出す契機として熱烈に支持するものである。

 われわれ在日同胞社会も祖国の分断の歴史と同じく、分裂と対立、そして抗争を重ねてきた。今やわれわれは、異民族社会の中で同じ同胞が対立をこれ以上、繰り返すことは止めなければならない。


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民団の「無条件対話」提案
総連は誠実呼応を

 われわれは南北首脳会談を契機に、20世紀の不幸であった在日同胞社会の分裂の歴史に終止符を打って、これこそ21世紀の同胞社会の活力に満ちた発展のために、同胞社会の和合と統一に向けて大きく前進すべきである。

 そのためにわれわれ韓国民団と民団同胞は、朝鮮総連と総連同胞との本格的な対話と交流を始めようとしている。

 6月15日、民団中央本部の金宰淑団長は内外の記者会見を通じて、朝鮮総連中央本部に無条件で虚心坦懐にあらゆる問題に関して話し合いたいと、そして今後話し合っていくべき内容や手続き、方法に関しては、われわれの代表団を送るから、それを快く迎え入れて協議に臨むよう提案をした。

 われわれが朝鮮総連と話し合いを行うのは今回が初めてではない。

大阪で行われた
ワンコリア囲碁大会

 1991年、千葉で行われた第41回世界卓球選手権大会で、民団・総連組織が初めて組織対組織で話し合いを通じて、当時の単一チームを共同で歓迎し、共同で応援し、共同で歓送した経験がある。

 その後も支部単位での花見大会をはじめ本部単位の敬老会や囲碁大会、またはゴルフコンペなど、さまざまなことを一緒にやってきている。

 われわれはこのような実績を踏まえた上で提案をした。総連中央は残念ながら、民団中央の提案を現在のところ肯定的に受け入れる気配を見せていない。


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民団の提案と総連の反応

 総連中央は未だに旧態依然とした政治組織としての戦略戦術にとらわれている。

 例えば、地方、支部、傘下団体の同胞同士の交流は大いに進めながら、民団中央との組織的な対話には応じようとはしない。つまり、民団中央は孤立させながら、下部の民団同胞は総連側に結集するといった「統一戦線戦術」を駆使しているのである。

 「民団は対話の相手ではない。韓国政府が相手だ」「民団同胞は政治工作の対象であり、彼らを総連組織のまわりに結集することで、民団組織を弱めることが交流の目的」であると内部的に吹張している。

 だが、いわゆるこれらの戦術は無意味なことで、在日同胞の現実を無視しているばかりなく、同胞の多くの素朴な要求にも反している。

1991年の千葉世界卓球では、
民団と総連が初めて
共同応援を実現した

 多くの同胞は総連系であろうが、民団団員であろうが、異民族社会(日本社会)の中にあって、いがみ合うことなく、仲良く暮らしていきたい、できることであれば、祖国の統一にも役に立ちたいと素朴に願っているだけである。

 在日同胞は特定のイデオロギーや体制を支持するための政治工作の対象物ではないのである。

 総連中央は、南北関係の新しい流れと在日同胞社会の切実な要求に目を向け、同胞社会の和合と統一に真剣に取り組むべきである。

 いずれにせよ、新しい時代の潮流と条件の変化に朝鮮総連中央もいつまでも目をそらし、同胞の要望に反するような行動をするわけにはいかないであろう。そして民団中央の呼びかけに呼応して、対話の席に着くであろうと信じている。


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「統一在日」次世代に
力合わせて権益向上

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同胞和合の基本姿勢

 われわれが朝鮮総連との和合と交流を促進し、同胞社会の統一を目指そうとする理由は次の三つのことのためである。

 まずは、日本の社会に住んでいるわれわれ同胞同士がいつまでも対立を続けるわけにはいかない。わが民族の自尊心からしてもそうであるし、日本社会の同胞を見る目からしてもそうである。

 その上、われわれの次の世代に対しても、分裂した同胞社会を継がせるわけにはいかない。そのためにも同胞同士が、互いに誹謗中傷したり、さげすんだりすることは即刻止めるべきである。

 一歩進んで互いが尊重し合う関係を作りだしていくべきである。


各地域では、すでに花見や野遊会など
非政治的分野で交流が進んでいる
(写真は今年4月大阪
豊能支部の合同花見で踊る
民団支団長と総連委員長)

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在日同胞団体の立場で
共通課題、共同で解決しよう

 次には、同胞の共通利益を追求していくために、同胞の力量を統合していくべきである。日本という国、日本の社会に一緒に住んでいる同胞、また、この土地で永住していかざるを得ない同胞の立場から、われわれの生活条件を良くするため、一緒に力を合わせることが切実に要求されているのである。

 そのためには、民団、総連の組織的対立のための、消耗的な力の浪費を止めるべきことである。そうでなくとも日本の社会の中は、少数力量なのにもかかわらず、それがさらに分散するという事態を一日も早く克服しなければならない。

 三番目には、祖国分断の歴史と同じく民族分裂の悲哀を痛感してきた在日同胞が、祖国の平和定着と統一に少しでも、在日同胞の名において貢献をしたいという願いからである。

 祖国半島で二度と戦争を起こさない、そして南北が手を相携えて、ともに発展しながら、平和裏に統一に向かうのに、団結した在日同胞の力が役に立つならば、われわれ在日同胞のこの上ない喜びである。これこそ、在日同胞の歴史的な使命である。

 以上、三つの願いをもって、われわれは在日社会の統一を目指そうとしている。


人道的立場から民団は
25年前から行っている
総連同胞対象の母国訪問団は
すでに5万人の総連同胞が訪韓した

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対話と交流の原則

 われわれは総連と対話をし、交流を行うには次のような共通原則に基づいて行うべきであると考える。

 第一に、民主主義的な原則に基づいて、総連との対話、交流を行う。同胞の大多数の要望、要求に従って、その要求が実現する方向で対話が行われるべきである。

 統一同胞社会の主人公は在日同胞であるばかりでなく、統一推進も多くの同胞が行うものである。組織はそれを手助けするぐらいで良い。

 第二に、相互尊重の原則に基づいて対話と交流を行う。民団、総連は半世紀以上にわたるそれぞれの歴史を持っているし、伝統を持っている。そればかりか、互いに蓄積した資産も持っている。その両組織が話し合いを行う時、互いが互いを認め尊重し、信頼し対等に相対すべきである。


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同胞どうしの情愛深め
信頼関係構築めざす

 いずれにせよ、最終的な同胞社会の統一は民団、総連の統一なくしてはできないであろうから、なおさら、この原則は重要である。

 第三に、対話と合意の原則である。

 組織防衛の名において、相手組織に対する瓦解工作や誹謗中傷は止めるべきであるし、あくまでも話し合いを通じ、すべての問題を解決すべきである。そして、対立点は対立点として、一時保留するか、もしくは気長に話し合いを通じて、共通点をさぐっていく合意の原則は非常に大事である。

 第四に、対話と交流は段階的に推進していくべきである。

 できる分野から一つひとつ対話と交流を積み重ね、やがて相互協力の段階へと一歩一歩進むべきである。

 互いに無理難題をぶつけたり、実現できそうにもない提案をしたりして、対話と交流を妨げることがあってはならない。

 五十数年間、対立をしてきた組織が一挙にすべての問題が解決できることはあり得ないからである。

 われわれ民団は十数年来、「非政治的で人道的な交流」は大いに行うべきであるとして積極的に推進してきた。


同じサッカーを愛する同胞どうしで
民団同胞と総連同胞の交流も行われている
(写真は今年7月、埼玉県で)

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花見、敬老会、スポーツ等
可能な部分から交流

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当面の対話と交流促進

 当面、同胞同士の情愛を確かめ、深めるために敬老会、花見やゴルフ大会、囲碁大会など、親睦行事は自主的に行ってきたし、今後も活発に展開するよう推進していく。さらに非政治的なスポーツ、文化、学術交流も積極的に推進していくつもりである。

 例えば、サッカーの2002年ワールドカップの共同応援や柔道、サッカーの交流、本国での体育祭典(国体)への共同参加、研究会、フォーラムなど、在日同胞の現実と未来に関わる学術交流など、自発的に大いに行われるべきである。民団はこのような「非政治的な人道的な交流」に関しては、一切の組織的統制はしない立場をはっきり示している。

 支部、傘下団体、地方本部は、民団の基本方針に従って自主的に、自発的に行うよう推奨している。願わくば、総連中央がこれを政治的に悪用しないことを望むものである。

 すでに6月13日、大阪で韓国商工会議所のメンバー100人と総連傘下の商工会メンバー100人が、「南北首脳会談」を祝して、共同でゴルフ大会を行った。

 7月30日、「神戸まつり」に民団同胞、総連同胞が、組織名称抜きで、統一の旗のもとで合同で参加し、多くの日本の市民の方々から歓迎と激励の拍手を受けながら、同じ同胞としての感激と力を日本社会に向けて誇示することができた。

 そのほか、いろいろな行事、合同パーティーなどが行われているし、行われようとしている。

 民団はこのように在日同胞の和合と信頼構築のために、開放的に対話と交流を今後も進めていくつもりである。


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食料・経済支援も用意
祖国半島統一へともに参与

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祖国統一と同胞社会統一に向け

 南北首脳会談を契機に同胞社会は在日同胞の和合と統一に向け、自発的交流が活発に行われている。これらの動きは誰も抑えることのできない在日同胞の自然な力の発露である。

 朝鮮総連中央が同胞の多くの自発的な和合に向けての流れにそって、民団中央と対話の席に着くならば、われわれは次の三つの方向で真剣に対話をし、協力していくつもりだ。

 第一の方向性は南北関係の改善と祖国半島の統一問題に関して、在日同胞として共同で努力できることを話し合いながら模索していく。

 例えば、もしも朝鮮総連側の要求として北に対する食糧支援の問題、医療、医薬品の支援問題などを提起するならば、民団中央は真剣に取り組んでいく用意がある。

 北の経済開発に関して、在日の商工人たちが共同で投資する問題などに対しても、民団と総連の商工人たちが合同で調査団を構成し、派遣することを協議する必要があるし、また、南北の鉄道連結問題に在日同胞として共同で参加する法案なども対話を通し、共同努力していくつもりである。

 こういうことは両国政府に関わる問題だ。在日同胞の名において、統一促進、祖国の平和定着と交流に役立つことであれば、共同で両当局に対処していく用意がある。

 第二の方向は、日本政府と日本の社会に対して共同努力する課題だ。

 この異民族社会の中にあって、同じ民族として共同利益のために、そして共同の民族的な自尊心のために、一緒に活動していく課題である。

 国籍条項撤廃や高齢者や障害者給付金の問題など、または、老人介護保険問題に対する共同対処などの問題を話し合って共同活動をしていくつもりである。

 これらの問題は、思想、信条を超え、同胞として生活者として不利益をこうむらないようにすべきである。

 第三の方向は、在日同胞社会の現実問題と将来の統一問題である。

 われわれは、現実に日本の社会の中で生活者として生きている。今、未だに民族的な差別が存在する条件のもとで、相対的な劣勢の立場に置かれている同胞として、さまざまな現実問題を抱えている。

 経済活動の分野において、互いに日本の長期不況の影響で信用組合は倒産するし、同胞の主要な業種も軒並み業績は悪化している。

 例えば、信用組合の統合を通じて「一つの銀行」を設立できたら、どんなに同胞経済活動に助けになるだろうか。

 または社会的な分野でも、就職、結婚問題などに共同対処して、同胞子弟たちがより自由に生きられるようにする問題、民族教育、民族文化など、共通した民族主体性の継承と確立問題など、民団、総連がお互いに真剣に話し合うべき問題が山積している。

 以上のような三つの方向での話し合いを通じて、われわれは在日同胞社会の統一へと進んでいくべきであると信じている。

 民団は、20世紀が幕を下ろし、21世紀が始まろうとしている今日、五十五周年光復節を機に、真の意味での在日同胞の和合と交流、そして統一への第一歩を歩み出すべきであると考えている。

 われわれは同胞社会の分裂と対立に今や終止符を打って、統一された活力に満ちた同胞社会の未来のために、朝鮮総連と総連同胞と共に手を携えて同胞和合を推進しよう。

(2000.08.15 民団新聞)



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