民団新聞 MINDAN
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南北共同宣言から2カ月

その成果をもう一度検証する



南北首脳会談後自らが署名した
「南北共同宣言」を交換する金大中大統領(左)
と金正日国防委員長(右)

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南北共存の"制度化"に力点

◆◇自主的解決の意味◆◇

 南北分断後初の南北首脳会談とその成果をまとめた「6・15南北共同宣言」発表から2カ月になる。きょう15日には離散家族訪問団が平壌とソウルをそれぞれ訪問する。また、この日を期して板門店の南北連絡事務所業務が3年8カ月ぶりに再開される。「共存共栄しながら南北統一の道に進む」ことをうたったこの「共同宣言」が誠実に履行され、相互信頼に立脚した「和解・協力と平和共存」の南北新時代の到来が期待されている。「6・15共同宣言」を韓国統一部の「解説」などをもとに検証してみよう。

 「共同宣言」(第1項)で強調された「統一問題の自主的解決」について、金大中大統領は「南北が7・4共同声明(72年)で合意した原則を再確認した」ものと説明している(6月15日のソウル帰着報告)。

 統一問題は基本的にわが民族の内部問題であり、南北が当事者原則に立脚し、7000万同胞の意思に基づき解決する、というのが韓国側の立場である。これと関連して、金大統領は外勢(外国勢力)排除など「排他的自主」ではなく国際社会の支持と協力に基づいた自主が必要だと力説し、金正日国防委員長は特に反論しなかったという。


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当事者原則を再確認
駐韓米軍、北側も理解示す

 統一部は、ここでの「自主的解決」は北韓側が従来主張してきた駐韓米軍の撤収と結びつくものではない、としている。しかし北韓は、「自主」を「駐韓米軍の撤収」「外勢の排除」だと強調してきたことは、よく知られている。

 金大統領は、6月25日の韓国戦争50周年記念式典で「韓半島に完全な平和体制が構築されるまではもちろん、統一後も東北アジアの勢力均衡のため(駐韓米軍は)必要だと、明確に北韓側に説明し、北韓側も相当の理解を示した」と主張。「(南北間に)軍事委員会を設置し緊張緩和と不可侵など、平和のための措置について積極的に協議していく」と明らかにした。

 一方、金国防委員長は6月30日、在米同胞ジャーナリスト・文明子氏との会見で「この間、米軍には撤退しろといってきたが、すぐ出ていくだろうか。米軍の問題は、まず彼ら自身が、わが民族の統一を積極的に助ける方向で、決定しなければならぬ」と表明、従来より“柔軟”な姿勢を示した。

 韓国戦争休戦(53年7月)が47年も続いているのは異常であり、恒久的な平和協定に早急に移行させなければならない。それには、韓国と北韓の両直接当事者が平和協定を締結し、米国と中国、さらに必要なら日本とロシアがその履行を保障するとの韓国側の構想が現実的である。

 北韓は、南北間ではなく北韓と米国との間で平和協定を結ぶことを唱えている。だが、かつては休戦協定を南北間平和協定に変え、その後に米軍を撤収させることを主張していた。


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北側に望まれる明示的な路線転換

 南北対峙を前提にした過重な軍備・兵力の維持負担の重荷は、双方の経済と民生にのしかかっている。相手方を「敵視し、破壊・打倒の対象」視する政策を改めなければならない。

 韓国側は、かねてから「南北共存・統一」政策推進を明確にしてきた。金大中大統領の「太陽政策」は、それをより一層鮮明にして積極的に推進するものだ。北韓側には、今回の「南北共同宣言」を契機に、対南革命路線を明示的に放棄、「南北和解・協力推進」が当面の戦術的対応にとどまるものでないことを内外に示すことが待たれている。


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統一への過渡的措置
「南北連合」案と類似点も

◆◇低い段階での連邦制◆◇

 「共同宣言」(第2項)は「南側の連合制案と北側の低い段階の(緩やかな)連邦制案が互いに共通性があると認定し、今後この方向で統一をめざす」とうたっている。

 この項と関連して統一部は、「統一方案に合意したのではない。今後協議していくことのできる接点を確認したということだ」と強調している。

 韓国の「南北連合制」は、「統一に至る中間段階(統一を準備する過渡段階)」として、互いに異なる二体制二政府をそのまま置き南と北が首脳会議、閣僚会議など常設協議体を構成してすべての懸案を協議、執行するというもの。

 韓国の統一方案は89年9月に盧泰愚大統領(当時)が発表した「民族共同体統一方案」。同案は国会公聴会と国民の意見を収れんしたもの。「自主・平和・民主」を統一の三原則とし「一国家・一体制」をめざす。統一部の説明によると、今回の南北首脳会談で金大中大統領は、この「民族共同体統一方案」にある「南北連合」構成案を提案した。

 一方、北韓の連邦制案とは故金日成主席が80年10月に発表した「高麗民主連邦共和国創立方案」を指す。同案は、南北が相手の思想と制度を容認して双方が同等に参加する連邦政府を組織し、その下に体制を異にする二つの自治(地域)政府を残すというもの。自治政府は内政権だけ保持し、軍事・外交権は連邦政府が握る。このような「一国家・二体制・二政府」の連邦制の樹立をもって「祖国統一の最終形態」つまり「統一の完成」と位置づけている。

 だが、91年の金日成新年辞では連邦方式の統一案を再提示しながら、「当面は、連邦共和国の地域的自治政府に対してより多くの権限を与え、次第に中央政府の機能を高めてゆく方向で連邦制統一を段階的に完成させる問題も協議する用意がある」と表明している。

 金大統領は、「ソウル帰着演説」で「北は中央政府が軍事・外交権を持つという主張を修正した。『低い段階の連邦制』という名前で、中央政府が持つとした軍事・外交権をそのまま地方政府が持ってもよいとした」と明かにした。

 統一部では「このような『低い段階の連邦制』は、過去の『高麗連邦制』とは明らかに違いがあり、象徴的存在としての中央政府の構成さえ除けば、『南北連合』方案と類似している」と説明。「これは北韓が、『高麗連邦制』の非現実性を認め、相互体制認定と平和共存を示唆するもので重要な変化」とみなしている。

 「統一」の最終目標は違うが(韓国が自主・平和・民主の統一三原則による「一国家・一体制」であるのに対し、北韓は自主・平和・民族大団結による「一国家(連邦政府)・二体制・二地域自治政府」樹立)、「統一」までには過渡期が必要ということを、北韓側も公式に認めたということなのだろう。


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誠実な履行が不可欠
南北基本合意書、信頼構築の基礎に

◆◇平和定着と「共同委」◆◇

 平壌首脳会談に臨む韓国側の優先的目的は、南北首脳間の信頼構築と韓半島の平和定着、南北間の和解・協力の転機づくりにあった。しかし「共同宣言」には、平和共存に不可欠な緊張緩和と平和定着問題は盛り込まれなかった。

 この点について、統一部は次のように「解説」している。韓国側は戦争再発防止と平和定着の必要性について説明、北側と共感帯を形成し、軍事直通電話(ホットライン)の開設、相互ひぼう中止、破壊・転覆行為中止など具体的事業を協議・解決していく土台を整えた。

 南北間では「7・4南北共同声明」と「南北基本合意書」などで原則と方法にすでに合意をみている。南北首脳は、現在必要なのは実践であるとし、既存合意の精神を尊重、一つでも実践可能な課題に合意、それを実践することにより、段階的に南北関係を発展させていくことにした、という。

 金大統領は、首脳会談で「南北基本合意書」の重要性を強調、分野別共同委員会稼動の必要性を力説した。南北当局間会談でもこのような問題が協議されることにより、韓半島の冷戦構造がしだいに解体され、南北共存および事実上の統一状況がくるものと韓国側では期待している。

 「南北基本合意書」は、双方が相手側の体制を尊重し、内部問題に干渉しないことを約束することで、平和的に共存する道を選択、本格的に和解の道を進み、政治、経済、軍事など諸分野で協力関係を推進する枠組を定めた基本文書である。「韓半島非核化共同宣言」とともに92年2月に発効。それに基づいて政治、軍事、交流・協力の3分科委員会が発足し、重要問題での意見調整は新たに発足する和解、軍事、経済交流・協力の四つの共同委員会に委ねられた。

 これにより、南北双方は和解へ向けて経済協力はもとより軍事・軍縮問題まで含め、関係改善作業を具体的に進める実践段階に移るかにみえた。だが、92年11月に北側が南北対話を全面的に中断させることでストップしてしまった。

 「共同宣言」(第5項)の合意に基づく第1回南北長官(閣僚)級会談(7月29日〜31日。ソウル)での板門店南北連絡事務所の再開合意および次回会談日の合意などは、「南北基本合意書」体制の再構築に向けた第一歩とされている。 

 この長官級会談で北韓側は「共同委員会」の必要性を認めたという。「軍事的な信頼醸成措置」や分野別協議機関の設置、経済協力の制度化など、南北和解・協力推進に向けた実質的な措置を早期に講じることが望まれている。

(2000.08.15 民団新聞)



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