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在日へのメッセージ

吉田健一(時事通信社会部記者)
向かい風を追い風に



 昨年1年間の自殺者は3万3048人と2年連続で過去最悪となったことが警察庁の調べで分かった。特に負債、事業不振、失業などの経済・生活問題を苦にした自殺は急増し、6700人を超えたという。

 これはまったくの推測に過ぎないのだが、在日コリアンの現在の自殺率は日本人より低いのではなかろうか。

 厳しい境遇の中、それこそ死ぬ思いで生活のすべを自ら切り開いてこざるを得なかった在日コリアンは、会社人間として突き進んできた日本人よりもたくましさをもっていると思う。韓国語を教えながらベンチャービジネス進出をもくろむ在日の友人も「在日は今みたいな不景気な先の見えないときこそ力を発揮する」と話していた。

 経済成長という共通の目標が崩れ始め、21世紀を前に日本社会は大きな曲がり角に差し掛かっている。しかし、多くの日本人は会社の倒産やリストラの影におびえながら自らの生活を守るのがやっとで、新たな未来像を描くことができずにいる。

 それどころか、「三国人発言」や「神の国発言」など、同じ日本社会に住む在日コリアンらにとってあまりに無神経な発言が飛び交う始末だ。

 もちろん、不景気の影響は在日の人々にも大きな影を落としているだろう。いや、個人経営者が多い在日の人たちの方が日本人よりもより苦しみは大きいのかもしれない。

 しかし、私が聞く範囲では、多くの在日の人々は今以上の苦しみをすでに経験している分だけ強い。

 それまでの経済・社会の枠組みが変わりつつある時代に、向かい風を追い風に変えて生き抜く力を持っていると思う。

 在日コリアンがパワーを爆発させ、21世紀の日本社会創造の起爆剤となってくれることを1日本人として望んでいる。

 そして韓国と日本の文化を互いの国に紹介しようという友人のビジネスが成功することも。

(2000.08.30 民団新聞)



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