民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
20世紀の負の遺産を払拭しよう



 早いもので9月1日で20世紀も残すところ4カ月だけになります。

 私たち在日同胞を取り巻く環境は、20世紀の負の遺産ばかりと言っても過言でありません。そして今年は、20世紀最後の年を象徴するかのように様々な出来事がありました。

 まず、韓半島では歴史的で感動的な南北首脳会談に続き、この8月には15年ぶりに南北離散家族の再会が果たされました。そして、7年5カ月ぶりに朝・日国交正常化交渉が再開され、次回からの本格的な協議が期待されるところです。

 半世紀が経過してようやく軌道にのった朝・日国交正常化交渉をみるとき、東西冷戦の狭間にあった韓半島であったとしても、日本政府の曖昧な戦後処理が根底にあったことは否定できません。

 同様に、未だに取りざたされている戦後補償問題においても、在日同胞の元軍人・軍属に1時金を支給するという救済措置の特別立法成立や、最高裁の仲介によって企業側と原告側が和解したことです。

 特に最高裁が仲介して初めて和解が成立したことは、21世紀に問題を先送りせず、決着させたことで大きな評価と言えます。


■注目される「公開法」

 この和解に大きな役割を果たしたのが、昨年7月に米国カリフォニア州で成立した第二次大戦中の被害を巡る賠償請求の時効を2010年まで延長する改正民事訴訟法です。なぜならば、原告団はこの法に則り、他の韓国人とともに集団訴訟を準備し、これを知った企業側が海外でのイメージダウンを懸念して歩み寄った経緯があったからです。

 また、日本と同じ敗戦国でありながら、これまで精力的に補償政策に取り組んできたドイツでも、新たに補償関連の法律が成立しました。それは、ナチス政権下で強制労働に従事させられたユダヤ人や東欧諸国民らの被害者に対して、独政府と企業が百億マルク(約5200億円)を拠出して基金を作り、被害補償に充てるというものです。

 この法律にも大きな影響を与えたのが98年10月に成立した米国の「ナチス戦争犯罪情報公開法」です。

 そして、新たに、この公開法と同様の「日本帝国軍情報公開法」が現在、米上・下院でともに審議されています。

 内容は、米国政府機関が保有する旧日本軍記録の全てを探索し、確認して機密解除を勧告するとあります。この法律が成立すれば、これまで、隠されたままであった多くの文書の内容が明かになります。これによって、歴史的な究明が困難であった事実が解明され、歴史を共有する韓日関係にとっても真の歴史確認・清算する上で大いに役立つものと期待されます。


■アジアの平和な共同体へ

 この公開法の提案者は「アジアの国々が平和な共同体を築こうとするならば、過去を十分に公平に、誠実に処理することが必要」とし、日本に対して自国の記録を苦痛を持って見直す勇気を求めています。

 自民党の野中幹事長は、新たに「20世紀という不幸な戦争の世紀を、十分な戦後処理をドイツのようにしないまま先送りしてきた」と指摘し、戦争体験世代の責任を強調し、公正な戦後処理への意欲を示しています。

 日本政府は、アジアの共存共栄と世界平和の観点から真摯な姿勢で積極的な戦後処理を行うべきでしょう。

(2000.08.30 民団新聞)



この号のインデックスページへBackNumberインデックスページへ


民団に対するお問い合わせはこちらへ