民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
平統諮問会議・日本地域会議

3氏が意見発表で総連との交流強調



◆意見発表1−朴性祐委員(民団中央・平和統一推進委員長)
  テーマ「在日同胞社会の和合と交流」

◆意見発表2−金敬得委員(民団中央・在日同胞21世紀委員会代表)
  テーマ「南北和解時代と21世紀の同胞の役割」

◆意見発表3−申恵淑委員(婦人会中央・総務部長)
  テーマ「南北和解時代の女医の役割」


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◆意見発表1
朴性祐委員(民団中央・平和統一推進委員長)
テーマ「在日同胞社会の和合と交流」

◆◇
離散家族の面会所、民団と総連で共同建設

 さる6月に発表された歴史的な南北共同宣言を現実的に実践していくために、私たち海外同胞が何を、どのようにしていけるのかを、本格的に模索すべき時期がきたと思います。南北首脳会談は、金大中大統領が帰国声明で述べたように、戦争に対する恐怖からの解放と南北和解への大道を開拓したことに最大の意義があったと思います。

 新1000年を迎えた今こそ、私たち70万在日同胞が固く団結し意思統一を図り、祖国統一の先頭に立たねばならないと確信します。


◆在日70万の統一

 在日同胞社会は、祖国分断と東西冷戦の影響を直に受け、自由民主主義綱領の下、いち早く結成したわが韓国民団と、共産主義を信奉し北韓を盲目的に支持する朝鮮総連が結成されました。両団体が、解放直後から現在に至るまで半世紀以上にわたって対立と抗争を繰り返してきたことは、承知の通りです。

 それは、時には貴重な生命までも犠牲にしなければならない熾烈な抗争でした。最近こそ、暴力事件はなくなりましたが、朝鮮総連が民団団員を工作員に仕立てて韓国に送り込むなどをしてきたのも事実です。

 また、韓国民団が全組織的に推進している地方参政権獲得運動に対する朝鮮総連の激しい妨害工作は、良識ある同胞と日本人のひんしゅくを買っているのが現状です。

 しかし、在日同胞社会も、いつまでも対立と抗争を継続してはなりません。

 91年に行われた千葉世界卓球選手権大会を契機に、民団と朝鮮総連は南北単一チームを共同で歓迎・応援・支援した経験を持っています。

 その後も、民団は各地で朝鮮総連との交流を推進しようと努力し、これまで数多くの地域で花見、敬老会、ゴルフなど非政治的な分野で交流を重ねてきました。

 さきの南北首脳会談を契機に、民団では、すでに朝鮮総連との交流を積極的に推進するために指針を作成しており、その指針に基づいて「なんら前提条件をつけず」「虚心坦懐に」対話を始めようと、朝鮮総連に呼びかけました。

 すでにご承知のように、8月24日、朝鮮総連中央本部の代表団が「共同事業を推進するために協議機構を構成しよう」との提議書を持って民団中央本部を訪問してきました。

 これに対し民団は、9月11日、代表団が総連中央本部を訪問し、協議機構設置に同意するとともに、具体的な作業を推進していくための分科委員会設置を追加提案し、「前向きに検討する」との肯定的な回答を得ています。

 両組織の対話が順調に進めば、私たちは、同胞同士の親睦行事実施や生活上の共通問題を共同で対処していくことはもちろん、(1)北韓に対する共同食糧支援(2)民団・朝鮮総連代表者らの南北相互訪問(3)北韓に対する共同投資調査事業(4)北送同胞の生存と安否調査―などを共同で推進していく提案の準備をしています。


◆在日の手で面会所

 私は、この場を借りて特に提案したいことがあります。それは、南北離散家族面会所を在日同胞の力で、それも民団と朝鮮総連が共同で建設しようということです。

 さきに行われた離散家族再会を通じて、私たちは同胞の情愛がいかに強いものであるかを再確認するとともに、悲劇が現存していることに改めて痛みを感じました。

 祖国統一の大道に私たち在日同胞が参与する象徴的な事業として、私はこの面会所設置を朝鮮総連と共同で行うことを強く提起致します。

 在日同胞社会は今、3世以下の世代が過半数を占めています。近づく21世紀に民団と朝鮮総連が反目から協力、対立から和合へと変わっていく同胞社会となるよう、私たちみんなが心を一つにし、忍耐心を持って対話と交流を推進していきましょう。


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◆意見発表2
金敬得委員(民団中央・在日同胞21世紀委員会代表)
テーマ「南北和解時代と21世紀の同胞の役割」

◆◇
在日同胞のための民族共同体作りを

 20世紀は韓民族にとって日帝植民地統治の屈辱と南北分断の苦痛の時代でした。植民地支配の結果、日本に渡り、南北分断のために解放後も継続日本で暮らしていくしかなかった在日韓国人こそ、20世紀韓民族の歴史を証言する存在だと言えます。

 解放祖国の建設に寄与することを願った在日韓国人は「大韓民国の国是遵守」を規約に明記した「在日本大韓民国民団」と、朝鮮民主主義人民共和国の周囲に総結集することを綱領に掲げた「在日本朝鮮人総連合会」の二大組織を構成し、南北政府対立と類似した政治的対立を繰り返してきました。

 南北分断の固定化は、在日同胞の日本定着をもたらしましたが、今では在日同胞の90%以上が日本出生者が占め、帰国することより日本に居住することの意味が大きくなりました。

 解放後も、日本人の植民地支配に対する責任意識は希薄で、在日韓国人は民族的矜持を維持するために国籍差別による同化政策を受けてきました。在日韓国人の努力は、日本人の歴史認識の是正と責任意識を覚醒させ、外国人の権利向上による日本の開放と国際化を促進させました。


◆国際化と平等時代

 20世紀がナショナリズムの衝突と戦争の時代であったとすれば、21世紀はナショナリズムの克復と平和の時代ということができます。今後は、全世界的に国際化と内外人平等原則がいっそう確固となるでしょう。

 在日韓国人は、日本においては地域住民としての社会参与と貢献を果たすと同時に在外国民として本国の発展に貢献すべき存在です。それは、両国間の交流と相互理解を通じた平和を維持してこそ可能であり、在日韓国人は両国間の平和の使者としての架け橋の役割を果たさねばなりません。21世紀を目前にした今日、在日韓国人は南北分断の克服にも英知を集めなければなりません。

 東西対立が終わった今日、世界は世界大戦後、現在まで唯一の分断国家として残る韓半島の平和的統一がどのようになされていくかを注視しています。

 解放後初めて実現した、南北首脳会談以後、統一を志向する南北間交流がいっそう進展することを、全同胞が注視しています。そうしたなかで、三八度線のない日本に暮らす在日韓国人は、韓半島の対立と葛藤を超えて民族の平和的共同体をつくっていかなければなりません。

 以上のような在日韓国人の役割を達成するために、在日韓国人社会に必要ないくつかの提案をします。


◆南北韓の自由往来

 第一は、在日韓国人の南北韓自由往来の実現です。

 人間の尊厳性と民族的矜持のために国籍差別に耐えて本国国籍を維持してきた在日韓国人に対しては、日本国籍に変えれば南北両国家を往来できますが、「韓国籍」や「朝鮮籍」を維持すると一方の国家しか行くことができないアイロニカルな現象を速やかに終わらさなければなりません。

 さる7月の南北長官級会談で「朝鮮籍」同胞の韓国訪問が可能となったことは幸いですが、「韓国籍」同胞の北韓訪問も速やかに可能となるよう努力することを南北韓政府に要請します。


◆日本名からの解放

 第二には、在日韓国人社会に残る創氏の克服です。

日本社会のひどい民族差別の結果、在日韓国人は現在も日帝時代の残滓である創氏(通称名)から解放されずにいます。また在日韓国人の80〜90%が日常生活上、日本名を使っており、日本に帰化した同胞の場合には、ほとんど100%近くが日本名を使用しているのが実状です。

 それは日本の民族差別のためではありますが、日本人の差別意識と歴史認識を是正すべき役割を持つ在日韓国人は、21世紀を目前にした今こそ、身に付いた創氏の克服に努めるべきです。


◆民族教育の再定立

 第三に、在日韓国人子弟の民族教育の再定立です。

 在日韓国人の民族学校は、南北分断の政治的イデオロギー的対立を反映してきましたが、今後は対立を超えて在日韓国人全体の学校として運営していかなければなりません。在日韓国人は、日本社会と祖国の発展に貢献し国際化を推進すべき役割を持つ存在であり、今後民族学校は民族教育とあわせて人間教育、国際人要請にも力を注がねばならず、日本国籍を取得した在日同胞はもちろん、日本人もその学校で学びたいと思うような学校に変貌していかねばなりません。


◆文化センター設置

 第四は、日本各地に在日韓国人が中心となった日本と韓半島の国際交流・文化センターをつくっていくことを提案します。

 在日韓国人は、日本地域住民として日本社会に貢献していくべき存在です。在日韓国人は、日本各地に民団、朝鮮総連の本部、支部を持っています。そのような在日韓国人の共有財産を生かして、地域の日本人にも解放された韓・日、朝・日間交流と文化活動のマダン(ひろば)にしていく努力が必要です。

 その文化センターは、在日韓国人の子孫のアイデンティティー形成にも大きな役割をし、また日本人の韓半島理解促進と韓国人の日本理解の窓口の役割も行うでしょう。


◆国籍の葛藤克服

 第五に、在日同胞の国籍による葛藤の克服を提案致します。解放後55年がすぎた現在、日本には「韓国籍」や「朝鮮籍」を持つ約65万人の同胞と、日本に帰化したり日本人との間に生まれたことにより日本国籍を取得するようになった約60万人の同胞がいます。

 在日同胞社会は現在まで、日本国籍を取得した同胞の民族的アイデンティティーに対して特に関心を傾けませんでしたが、今後はそのような同胞たちの民族意識の覚醒と在日同胞社会への積極参与のための努力もしなければなりません。

 最後に、21世紀にも本国国民(大韓民国、朝鮮民主主義人民共和国公民、統一後は統一国家の国民)として生きていく在日韓国人に対しては国政参政権の付与等在外国民としての権利確立にも、本国政府の配慮が必要です。


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◆意見発表3
申恵淑委員(婦人会中央・総務部長)
テーマ「南北和解時代の女医の役割」

◆◇
オモニの立場で総連と共同作業

 2000年は、わが国の民主政治を土台に歴史的な南北首脳会談が実現し、緊張緩和と相互交流によって協力の道が開かれました。55年ぶりの南北離散家族再会は、涙のドラマであり、韓半島の冷戦と分裂から平和と和解へと変化させていく出来事になりました。

 21世紀を目前にして体制を異にしながらも、同じ民族として相互往来できる日が早くこなければならず、私たち女性も統一にむけて積極的に立ちあがらなければなりません。

 韓民族であることに自負心と矜持を持ち、和解・協力に寄与していくため女性としての役割と具体的な方案を用意しました。

 半面、在日同胞社会における女性の地位は低く、民団の中でも微弱といえるでしょう。


◆女性の地位向上を

 21世紀は情報の時代であり、女性の時代だと考えます。女性の地位向上のために、女性自身が劣等感を捨て、飛躍し、男女差別をなくし、同等に意見を主張できるようにしていかねばなりません。

 家庭であれ社会であれ、男女機会均等の下で、諸分野で女性としての生き甲斐と役割を求めていく時代だと思います。

 21世紀を前に、在日韓国人女性も、韓民族統一のために多方面にわたり多角的な運動を展開していくでしょう。


◆経済基盤の準備

 第一に、経済的支援の基盤準備が必要です。

 国民経済において女性は家庭経済の主体として大きな役割を持っており、統一政策への参与にも先頭に立って統一経済の助けとなるよう、節約と勤倹を率先していきましょう。このことが将来の祖国平和統一への経済的支援の基盤となるものと信じています。

 第二に、朝鮮総連女性たちとの交流を通じ相互理解のための活発な対話を進めていきましょう。

 私たち自身の意識向上と男女平等を図り、親密感を持ちながら、非政治的な交流を拡大していきたいと思います。

 このため、各地方組織内で文化交流、教育活動、社会福祉活動などを協力していくべきだと思います。

 その具体案として(1)同胞らが居住している地域社会の老人ホームを民団と総連の婦人会が共同で訪問し、私たちの文化、民族舞踊、チャング、ノレなどで慰問(2)双方の共同幹部セミナーを開催し国際的女性へと成長する(3)水害や地震などの天災地変時に共同救済活動を展開――などです。

 例として今年の東海豪雨による愛知水害時に民団と朝鮮総連の双方が、互いに区別することなく被災同胞を支援しています。このような共同事業や交流を、信頼を基に持続的に進めていきましょう。このような事業計画に対して、政府が積極的に支援してくれることを要請します。


◆祖国相互訪問へ

 第三に、韓国と北韓の相互訪問を共同で実施することです。

 気軽で柔軟な形式で朝鮮総連幹部女性の韓国訪問を実施したいと思います。

 互いが同民族であることを確認するためには、総連の女性が韓国を訪問する際は、私たち婦人会が同参しなければなりません。また、私たち婦人会も北韓を訪問できるようになれば、双方の交流がいっそう円滑となり、理解と交流が深まるでしょう。

 相互訪問を通じて民族共同体意識を拡大し平和統一の道を広げていきたいと思います。政府の配慮と積極支援をお願い致します。

 第四は、女性統一運動発展のために、統一に備えた新しく多角的で専門的な教育プログラムの作成です。女性問題の正しい認識と新たな平和政策教育の指導と特別な研修教育を実施していきたいと思います。

(2000.10.05 民団新聞)



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