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介護保険料65歳以上からも徴収

無年金同胞に重い負担



市民集会で窮状を訴える
同胞無年金者
(川崎市ふれあい館で)

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川崎で市民集会、市に減免要請

 【神奈川】介護保険がスタートして半年。10月から保険料を徴収されることになった無年金の在日同胞一世高齢者は介護保険について十分理解する間もなく経済的負担感が現実のものとなり、困惑の表情を隠せないでいる。川崎市職員労働組合など四団体は19日、川崎市ふれあい館で開いた市民集会席上、「このままでは在日同胞高齢者の多くが無保険状態になりかねない」と危機感を強めている。23日には川崎市に改善措置を申し入れた。

 「足が悪いのでヘルパーを使いたいけれど、お金を誰が出してくれるの。年金あるわけでなし」。余乙南さん(74)=川崎市川崎区在住=は「在日一世と介護保険」と題した市民集会(川崎市職労など四団体主催)で苦しい胸の内を明かした。3カ月に1回、市から受け取る6万円の福祉手当と息子からの生活費が頼り。生活保護は受けていない。国民健康保険に加えて介護保険の保険料、さらにヘルパーを頼めば一割の自己負担は、余さんにはずしりと重く感じられる。

 川崎市が65歳以上の1号被保険者に保険料の納入を促す通知を発送し始めたのは8月2日から。この保険料をめぐって、市の相談窓口には8月だけで実に2178件の相談が寄せられた。介護保険制度が4月からスタートして以来、相談件数は毎月数件から数10件にとどまっていただけに異例ともいえる多さだ。川崎市は制度導入時の特別措置として、低所得者に独自の5段階の保険料軽減措置を講じている。基準額は月額1475円。

 だが、生活保護受給者や老齢福祉年金受給者は基準額の半額としている。しかし、1年後にはこの特別措置もなくなり、金額にして倍になってしまう。余さんは「今年はいいけれど来年は国民健康保険と介護保険合わせていくらになるか。保険代が安くなるよう助けてほしい」と訴えた。

 「在日高齢者交流クラブトラヂの会」でお年寄りを世話する社会福祉法人青丘社の職員は「会員からは使いもしない制度なのに、という声が多い。介護保険を在日一世の側からとらえ直し支払いが滞ることで発生する無保険の状態を回避する取り組みを」と話す。

 川崎市民の「在宅サービスの利用限度額に対する利用状況」をみると、使えるサービスでも四割を切っている。これは自己負担額を考えて自己抑制したものと見られる。まして、在日同胞高齢者にすれば、母語の通じるホームヘルパーの世話で民族食を食べ、民族文化の安らぎの中でデイサービスを受ける選択がかなわないままでは、進んで介護保険を利用しようという気にはならないようだ。

 集会では「在日韓国・朝鮮人高齢者が介護保険制度において無保険状態になることを回避するための緊急決議」を採択。市に対して23日、(1)制度的無年金者への市独自の減免措置、または外国人福祉手当受給者のうち制度的な無年金者への保険料分の加算による加入措置(2)在日高齢者が介護サービスを利用できる環境づくり(3)非識字状態にある在日高齢者のための相談機能の拡充―などを申し入れた。

 川崎市によれば市内に住む在日韓国・朝鮮人は9098人(9月末現在)。このうち65歳以上のお年寄りは1000人前後と見られている。

(2000.10.25 民団新聞)



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