民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
在日へのメッセージ

国を背負わない日韓
小林一博(東京新聞論説委員)



 日韓関係は変わりつつあることを実感させる本を紹介したい。菅野朋子著「好きになってはいけない国」(文藝春秋)である。

 最近、韓国で「反日」からはみ出したと思われる世代が生まれ、現に存在しているのである。例えばソウルの喫茶店、日本の歌手やグループのファンクラブがビデオなどの上映会を開き、それをパソコン通信などで知った10代から20代前半の男女が集まる。

 なんと言っても人気があるのは安室奈美恵、それからXJAPAN、SMAP、GLAY、ジャニーズ・ジュニアなどなどだ。

 これらのファンは、CDやポスター、ブロマイドなどを持っているのは当然だ。こうしたグッズを手に入れるためにわざわざ日本に来る。さらには、SMAPファンの女の子は、アメリカに留学する予定だったが、「その間に解散したらいやだから」と、日本に留学した。これが一人や二人ではない。

 こうした情報は断片的に伝えられたが、羅列されると、やはり驚かされる。

 日韓関係も変わるのではないか。著者は期待を抱いて、韓国の若者をつかまえて「あなたにとっての日本は何ですか」という質問を繰り返す。

 その回答の典型が、この本の題名である「好きになってはいけない国」であり、「日本のものが好きだと言っても日本を認めることではない」という冷めた回答だった。個人的好みの対象が、たまたま日本発というだけで、「日本」だから好きになったのではないということだろう。

 著者は「日韓関係いまだし」と考えているようだが、この本からは、世代交代による新しい関係がにじみ出てくる。反対に、日本にはH・O・Tなど韓国でできたグループのファンクラブがあって、ライブで騒ぐためのツアーもある。

 感情や体質として反発しあうのでなく、また国を背負わないで、個人として相手の国の人間やもの事に関心を持つ。日韓は普通の関係になりつつある、と希望を持ちたい。

(2000.11.29 民団新聞)



この号のインデックスページへBackNumberインデックスページへ


民団に対するお問い合わせはこちらへ