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在日へのメッセージ

「先進諸国の範たれ」
大田明彦(大阪国際大学教授)



 懸案だった永住外国人地方選挙権付与法案の国会審議がようやく始まった。小生としては、戦後処理問題を絡めず、純粋に永住外国人と日本社会との共生及び、近未来の日本社会のあり方という観点から、地方選挙権付与に賛成の立場で私見を述べたい。

 永住外国人への地方選挙権付与問題は、1990年に大阪の在日韓国人が提訴したもので、歴史は浅いが問題の本質は極めて深いものがある。それゆえ、国政、納税、国と地方自治体の権限、将来の国家像のあり方にまで議論が及んでいる訳だ。

 賛否両論のある新聞報道を見ると、反対派はもっぱら安全保障上の見地から国益・国籍、欧米先進国の現状などを論拠に置き、「帰化すべきであり手続きが煩雑なら改正したい」という結論に導いている。

 しかしながら、日本国憲法は国と自治体の選挙を明確に区分している。つまり、憲法は国民としての納税、教育、選挙の三大責務を明文化する一方で、地方自治体にはその住民、コミュニティーの一員に選挙権を容認している。

 さらに、永住外国人の要求は、当初から地方選挙権に限定されており、国家と地方自治体の権限を厳格にすれば、安全保障問題は自ずと解決する。

 かつて、民団中央本部の辛容祥前団長とともに、この問題の促進に取り組んだ小生としては、日本がいちだんと多民族、多文化社会に移行して行く中で、他国籍を含む地域住民の生の声を反映する重要な手段として、地方選挙権は非常に大きな役割を担うと考える。また、現状では容認していない国が多い欧米諸国との比較論は、アジアのリーダーである日本が先頭を切って地方選挙権を認め、他の先進諸国に範を示すことが、真の国際国家の地位を確立する方策ではないだろうか。

 最後に、「地方選挙権を認めると、次は国政レベルにエスカレートする」とか、「一部政治家の党利党略」であるかのような、短絡で飛躍した議論には与しないことを付記しておきたい。

(2000.11.22 民団新聞)



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